生徒指導員と不穏な影
「オルムステッドクラスの獄門道神楽だ。宜しく。」
「ニーハォ。ハンプシャークラスの暁李です。」
先ほど男子生徒をぶちのめしていた神楽さんと、その横に褐色の眼を持った女顔の中国人の生徒指導員が、レオに連れられ私達に自己紹介をしてくれた。
暁と名乗ったその人は、口の口角が優しそうに上がり、栗色の髪は後ろで1つに三つ編みにしてある。
「こいつらは俺の可愛い後輩。仲良くしてやってよ。」
レオが私達を1人づつ紹介した。
「ほう、新入生か。道理で見たことのない生徒だ。」
ツンと、している神楽さんに、暁さんは私達にクスクス笑いかける。
「本当は子供が好きなのですよ。素直じゃありませんね。」
「な、何余計な事喋ってる!暁!」
クスクス笑いながら暁は軽く私達に挨拶し、足早に講堂を出ていく。その後をいちゃもんを付けながら神楽さんも講堂を出ていった。
まるで嵐が去ったかの様だ。
私達もレオに続いて講堂を出る。
「ははっ!お似合いだろ?神楽ちゃんってシャオ君には弱いんだよねー………って、あ?」
「ん?どうした?」
「やだ、コニーそんなに大きいアイスクリーム食べてお腹壊しても知らないわよ。」
「ジェシカも食べる?」
「いらないわよ!」
レオがいきなり止まるから私はレオの背中にぶつかり、ジェシカとコニーもぶつかった。
「ちょっとレオ?どうしたのよ?」
レオは長い手で私達を道の端の暗い所へ寄せる。しっと人差し指を口元へ持っていく。
私はレオの黒布を掴み、レオの目線を辿る。
その先には長い金髪を高い所でポニーテールにしている女の人と、眼鏡をかけ情けなさそうな顔をした男が歩いて来た。
「あれ?あの人……」
「今日の授業でダジャレ言いまくった……」
「魔法理論のエルモ先生ね。」
「でも隣の女、誰だろう?」
入学したてでも学院内の殆どの教員を知っていたコニーが知らないと言うことは、もしかしたらこの学院の教員ではないかもしれない。
2人が近くに来たので私達は耳を澄ませる。
「この件は内密でお願いします。」
「もっもちろんですとも!」
「学院内での処理もくれぐれも慎重にして下さい。」
「わ、解りました!」
2人の会話はここまでしか聞こえなかった。
私達は再び廊下に出て、2人が歩いて行った方を睨む。
「あの2人、怪しいー。」
ジェシカのくりくりな目が半分しか開いていない。
「あの女、誰だ?」
「魔法都市魔法省の役員だ。俺も名前は知らない。」
「その役員が何でエルモ先生と?」
レオは真剣な顔で1人頷く。
「お前等明日からエルモには気を付けろ。ってか喋るな。」
凄い眼力で睨まれて私達はコクコクと頷くしかなかった。