レオの意志と朝の血祭り
夕食は、今日入学式が行われた講堂で取る。
私は楽器庫の事が気になって、豪華な食事も喉を通らなかった。
明日から授業も始まる事もあって、私は食事もそこそこに自分の部屋に戻った。
寮の部屋は一人部屋で、必要最低限の家具が置いてあり、壁には制服と自分のクラスのエンブレムが飾ってある。
「はぁ。私、しっかりしなきゃ。」
ボフッとベッドに横たわり、窓の外を見上げる。
写真でしか見たことの無い母。 私を生んだ後、死んでしまったと聞かされていた。
その名前がどうして、…どうしてこの学院に残っているのだろう。
「やぁ、今日はお疲れ。」
「ひぃぃっ!!」
いきなり空中から姿を表したレオに、私は普通にビックリしてしまう。
「な、何でレオがこんなとこうむぐ!」
「静かにしろ!」
つい大声を出してしまった私にレオは、ぐいっと手を私の口に押し当てる。
「女子寮に入った事がバレたら、鬼の生徒指導員に十字架の刑を処される。」
「あらおっかない。でも何で私の部屋に来るのよ!しかもいきなり空中から現れて…」
「まぁまぁ。」
レオは私の目の前で掌を前後させた後、図々しくも私のベッドに寝転んだ。おい。
「ちょっと人のベッ…」
「今日楽器庫で何を見た。」
「うっ」
ぎろりと睨まれて押し黙ってしまう。
だが、レオに言ってどうする?
心配をかけるだけだし、しかもあまり関係ない。
「霖、よく聞け。」
レオはそういうとベッドに転がったルーシィを片手で掴み立ち上がる。
そしておもむろにゴールドバーグのエンブレムに近寄り私の正面に立った。
「いいか、悩んだ時や思い詰めた時が来たら、迷わず俺の所に飛んでこい。」
レオのエメラルドグリーンの瞳が私を真っ直ぐに射ぬく。
「俺が、全部受けとめてやる。」「・・・・・・・レオ。」
いつもは冗談を言っている口からこんな言葉を聞かされて、私の胸は自然と熱くなる。
そして目も。
「いきなりこんな世界に来て、不安なのは解る。けど、決して苦しい事ばかりじゃないんだ。」
レオとその後ろのエンブレムがぼやけて見える。
「こういう時は俺を頼れ。」
力強く言われたその言葉が、あまりにも優しかったから、涙がぽろぽろ出た。
その夜は、普段から蓄まっていたものが出てしまったのかもしれない。ずっと泣いていた。
***
「ん、…」
朝、私は自然と目が覚めた。
昨日さんざん泣いたせいか目が腫れている感じがする。
まだ眠たい体を反転させる。
……おかしいな、何故レオの顔がどアップであるのだろう。
「やぁ、おはよう。」
「いや、おはよう、じゃねぇよ。」
私のベッドで、しかも隣で、まるで当たり前かの様に寝そべっているレオ。
「ったく、寝顔はあんなに可愛いかったのに、どうしてこうなる?」
「いいから、さっさと出ていってよ!支度するから!!」
「へぇ、そりゃぁいいね。ここに居るよ。」
私は枕をレオの顔に押し当てる。
「何訳の解らない事言ってんのよ!いいからさっさと出ていきなさいよ!」
だが簡単に枕を退かされる。
「つれないなぁ。霖、昨日の夜の事憶えてないのかい?あんなに可愛い顔で泣いて。」
ハイ、血祭り執行。
「誤解招く様な事言ってんじゃねーよ、はげぇぇぇえ!!!」
ちゃぶ台返しならぬベッド返し、自分の腕力に感心致しました。
こんにちは!
ここまで読んで下さりありがとうございます!
次回は主人公達が通うキャンベリー学院の説明文を更新したいと思っています。
その内キャラクター設定、魔法都市設定文も更新するつもりなので、よろしくお願いします♪