平々凡々奇々怪々
そりゃぁもう全力疾走で逃げてます!!!
私の名前は楠木 霖。
年齢は16歳。今年から無事に高校に入学。
今日の入学式を終え、早々家に帰宅する。
学校から伸びる道の両脇には満開の桜の木が植えられ、桜の積もったじゅうたんの上を走って行くと、少し遅れて桜の花びらがフワリと地面から舞い上がる。
春の陽光。まだちょっと寒いけれど空を見上げるとニコニコと笑っている太陽。
太陽の光で照らしだされた空が物凄く綺麗だ。
だが、人がこういういい気分になっている時に限って問題は勃発する。
私は全速力で町を疾走していた。その理由は今さっき猫が魚を盗んだ事にあった。
まず魚をくわええたニャンコロが、近くにあったグレープフルーツてんこ盛りの段ボール箱を倒し、運の悪い事に急な坂道をそのグレープフルーツがゴロゴロと転がり落ち、下に停めてあった自転車の行列をを将棋倒しの様に薙ぎ倒し、これまた運の悪い事に黙って見ていた私が見回り中のお巡りさんに目撃され・・・・・・・
逃げるが勝ち、と言う諺がありますね。
追い掛けられています。
私がやったんじゃないのに!!
後ろから「止まりなさーい!!」とお巡りさんの声が聞こえる。
なんとか逃げ切ろうと、近道である神社の参道を渡り、古くなっても存在感のある鳥居を潜り階段をかけ降りようと足を出した。
が。
ガコっ!
「わっ!!・・・ひゃーーーーー!!!」
足を滑らせて、長い階段を転げ落ちてしまった。
後ろからもう小さな声で叫ぶお巡りさんの声がする。
だけど一番最後に聞いたのは、神社に生い茂る木々達のザァザァという音とぶわりと沸き起こる風の音だった。
まるで迷っている誰かの背中を押すように、木々達は優しい音とぶわりと優しい風を送ってくれた。