思案のち出会い
朝、レオをぶっ飛ばしてから見た時計は既に10時を回っていた。
「っ遅刻!!」
「うっ・・・あ、いて・・・・・・。今日は休みだよ。」
レオが私から離れたのを見計らってジェシカがすっ飛んできた。
「霖!大丈夫?!何もされてないわよね?!」
昨晩外に出ていた神楽を置いて、暁さんが学院の見回りに出ている。
今私の部屋に居るのは、サンダーとレオと神楽さん、ジェシカとコニーだっだ。
◆◆◆
暁さんが全員分の朝食を持って見回りから帰って来てから直ぐに、夜の間何が起こったのかレオが話してくれた。
「あの場所で誰かが操っていたとしか考えられない。」
心臓発作でも出たかの様に急に死んだというその人が、誰かに殺されたとレオが言った。
「口を滑らそうとした部下に上の連中の誰かがあの場で殺した。」
レオの声が私の部屋の空気を重くし、朝食をまずくさせた。
私の腕の中でむしゃむしゃとナゲットを噛っていたサンダーも、気まずさからか真ん丸の目を閉じる。
中々解けない重い空気をものともせずに破ったのはコニーだった。
「大丈夫さ!」
今までの話を聞いて一気に暗くなった心に、一筋の光が入ってくるような声音。
「父さんが言ってたんだ。どんなに厳しい現状が来ても、仲間を信用しろって、信頼は闘う術が無くなった時の唯一の武器だってね!」
コニーの顔が窓から入って来る太陽の光に輝く。
まるでひまわりの様に。
「だからさ、大丈夫さ!」
根拠はないけど、と照れくさそうにはにかむ彼に自然とこっちも笑顔を取り戻す。
「そうだな。何も心配する事ない。いざとなれば私と暁とレオがお前達を守る。」
「ですね。」
「あぁ。」
神楽さんの言葉に頷く二人。
こんな世界に来てしまって、こんな事に巻き込まれてしまったけれど。
悪い事ばかりでは無いかもしれない。
仲間が居れば大丈夫。
私はそう心に刻んだ。
◆◆◆
天気のいい放課後、私は授業が終わってから外で遊ぶ訳でもなく、何処に行こうか校内を徘徊していた。
ジェシカもコニーも薬草学のレポートに追われている。
あの騒動から約一ヶ月、怖いくらいに何にも起きなかった。
起きて欲しいなんてミジンコも思ってないが、あまり何も起こらないのも気味が悪い。
行く宛が決まった。図書館に向かう。
まだココの文字は読みづらいけど、それでもある程度までは読める様になった。
図書館の無駄にでかい扉を開くと、いつも図書委員のレオが踏ん反り返っている机に<只今外出中>とプレートが乗っていた。
私はそこを素通りし、占星術の本棚に向かった。
大量の本を眺めながら適当にページをパラパラ捲り、自分でも読めそうな本を探していく。
ふと手に取った本の題が、
『女の子の為の占星術』
表紙にはハートが沢山浮いている。
「なんだこりゃ。」
パラパラめくると挿し絵や文字が大きくて読みやすそうだった。
どうしてこんな本が図書館に有るのか解らなかったが借りてみる事にする。
本棚の間を抜けて、門を曲がろうとしたら誰かとぶつかってしまって。
相手の持っていた紙の束がバサバサと落ちる。
「すみません!よそ見してて・・・・・・」
私は慌てて紙を拾い、立ち上がり際に目が合った。
ふわふわでキラキラ光る金髪に、吸い込まれそうな青い瞳。
思わず息をのむ。
「大丈夫だよ。僕のほうこそぼーっとしちゃって、ごめんね。」
真っ白な肌、高い鼻、整った顔立ちと見ただけで解る育ちのよさと、紳士な対応と口調。
どこかのハゲとは大違いだ。
「僕、ウェル・シュミット。君の名前は?」