自分の持つ力
夕食が終わり、私はシャワーを浴びたが、就寝時間まで大分時間があったので、明日の授業の予習でもしようと図書館に向かった。
図書館は静か、と思っていた私だがそれは大きな間違いだった様である。
奴が居やがった。
「やぁ、どうしたんだい?マヌケ面さげて。」
しかも大量の本に囲まれて。
フード付きの黒マント羽織ったキショい奴、レオが難しそうな本を片手ににんまり笑ってる。
ついさっきまで一緒にいたとは思えない。
「どうしてこんなところに居るのよ。」
「ふん、俺はここの図書委員なんだ。君こそ何故こんな所に来たんだい?君の解る様な本は無いよ。」
相変わらずムカつくやつだ。
「暇だったの。明日も授業あるし、何か勉強しようと思って。」
「へぇ、勉強か。教科によっては教えてやるよ。」
何だこいつ偉そうに。
「予言術」
「あぁダメダメ、俺その類いのもの無理だから!」
レオは本に視線を戻した。
早読みが出来るのか凄まじいスピードでページを捲っていく。
「じゃぁ何が得意なの?」
「ん?得意な魔法かー…。これとか?」
ボッとレオの手から火の玉が出た。
「わっ♪」
「これ超能力だけどね。………お前、随分楽しそうに見るな。」
「だって凄い!」
それから次々とレオは魔法や超能力の力を見せてくれた。
魔方陣出したり、直接手を付けずに本を棚に戻したり、髪の色や体型を変化させたりもした。
「何か、本当に魔法学校に来たって感じ。」
「明日予言術なんだろう?きっと言われるぞ。<貴方は何々の力が有りますよ!>ってな。」
「ぷっ!何それ!?」
「一年の一番最初の予言術では、自分にあってる魔法や超能力の力を先生が予言してくれるんだ。」
ちなみに俺は発火能力、と言って炎を自分の周りに出した。
「へぇ、私は何だろう?」
「怪力じゃないか?」
「何か言った?」
「いいえなんでも。」
***
予言術の先生は変な訛りのある女の人で、ベラ・アシモフと名乗った。
「ジェシカ・オークウッド、可愛らしいお嬢さんじゃの。貴方、カード占いが好きですね?」
「ええ!大好きだわ!」
「うむ。カードは貴方をきっと守ってくれるじゃろよ。貴方は『風』の力がありまする。」
「おや、コニー・レオンハート、はてー何処かで聞いたことの有るような無いような……。」
「僕、レオンハート財閥の一人っ子ですよ。」
「そうじゃ!そうじゃそうじゃそうじゃ!!サリンジャークラスの、そりゃ悪戯好きな奴等じゃった。その目、両親にそっくりじゃ。」
「えへへっ!」
「うむ、君は両親と同じ『音』の力じゃな。」
「む。楠木霖?」
「よ、よろしくお願いします。」
ベラ先生は灰色の目を私に向ける。
「貴方、母親の名前は何と言う?」
「え………。えっと、楠木霞です。」
ベラ先生は一瞬目を開く。だが直ぐにもとに戻り、私の手を握ってくる。
そして、小さな声でこう呟いた。
「貴方の母親は本当によくできた人だった。」
「………それって」
ベラ先生の手を握る手が強くなる。
「貴方のその濁りの無い真っ直ぐな瞳、母親譲りですな。……貴方の力は母親と同じ『空』じゃ。」
「空…?」
いまいちピンと来ない。
「昼は大きな光となり皆を照らし、夜は持つべき宿命を司る。」
ベラ先生の手が離れた。
「頑張るのじゃぞ。」