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短編(マヴロス)

あなたのとなりで雨宿りを

作者: おおらり
掲載日:2025/12/20


(私は、魔物と結婚するのではないかしら)


 その魔物、ルーキスはリーリアのとなりにいて、いかにも生真面目で融通の利かない顔で薬草を摘んでいる。

 淡々と、薬草について説明をする。



 辺境伯姫リーリアは、客人であるルーキスと契約をしている。リーリアは17歳で、ルーキスは見た目には20代の青年だ。


 ルーキスが魔物であることは、リーリアしか知らない。

 

 ルーキスは、病弱なリーリアが死ぬまでそばにいて、生かしてくれる。その代わりリーリアは、死ぬときに家宝である『花の種』をあげる。

 そういう契約だ。


(契約結婚でも、良いのだけど)


 リーリアは、そう思う。

 もともと結婚に憧れがないし、リーリアが持っている花の種は本来、伴侶にあげるものだからだ。しかし結婚に、ルーキスは頷かない。

「私は魔物なので」と、頑なだ。



「薬草を摘みに行くのに同行したい?」


 いつも無表情なルーキスは、わずかに面倒そうな顔をした。リーリアがまた熱を出すと思っているのだろう。


「自分の体に効くものを、ちゃんと知っておきたいの」


 ルーキスは渋々ではあったが、薬草摘みに連れて行ってくれた。


 ルーキスは黒いスーツを着て、黒い髪を、額を出すかたちでまとめ上げている。リーリアははしばみ色の瞳、同じ色のふわふわの髪、黒いドレスだ。



「リーリア」


 薬草摘みの途中、急にルーキスは立ち上がる。


「雨が降る」


 快晴だ。

 けれどリーリアは、ルーキスを信じた。


 洞穴には小さな魔物が居たが、ルーキスを見るなり逃げ出していった。

 入った途端に、どしゃ降りの雨になった。小さな魔物たちは戻ってこない。


「かわいそうだったかしら」


 リーリアの言葉に返答はない。

 ルーキスは魔術でカンテラに火を灯し、床に置いた。リーリアのそばに。


 静かだった。


 会話もなく、少し離れて。

 洞穴の入り口から、ふたりで雨を見つめた。



「リーリア。今日はもう、難しそうだ。

 続きはまた今度にしましょう」


 リーリアの表情を見て、ルーキスは続けた。


「雨が止んでも、寒くなる。

 体に障る。帰りましょう、リーリア」



 リーリアの部屋に戻り、ふたりは話す。


「魔王様ほどの魔力があれば、雨を止ませることもできるのだが」


「雨を止ませる? 御伽話みたいね」



 魔物と結婚するというのも、御伽話のようだ。


 言葉はなくとも。

 ルーキスはいつも、リーリアを気遣う。


(ルーキスさんと結婚できたら、一番良いのにな)


 予感はありつつも、特に進展はなく。

 けれど、ふたりはいつも、一緒にいる。


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