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2-3 AI高校 未来の医療AI開発者

挿絵(By みてみん)


 入学式を終え、眩しい春の陽射しの中、若い瑠華ルカは一人、AI 高校のキャンパスを歩いていた。胸には、未来への期待と、それと同時に、拭いきれない不安が渦巻いていた。


 中学時代は、発達障害と診断され、学習に苦労し、成績も振るわなかった苦い経験があった瑠華。言葉をやりとりすることが難しい自閉スペクトラム症という病名も付けられた。


 彼女は多くの授業についていけず、落胆の日々を送っていた。 そんな彼女を救ったのは障害を受け入れてくれた、AI 中学モデル校だった。


 AI 中学校の個別最適化学習システムを基盤に、さらに高度化した AI 高校モデル校。 AI高校では「教養・実学」を重視しているという。かっこいい言葉ではリベラルアーツ。国際人を育てるということらいしい。そのため、実学としての企業との連携が一年生からある。


 AI中学での経験が、彼女に自信を与え、ビジョンを与え、「医療 AI 開発者」という新たな夢を抱かせることになった。


(AI ってすごい!病気の発見や治療法の提案に役立つなんて…!)

「本当に、私が作り出す魔法のAI が、人々の健康を守り、命を救うことに貢献できるのだろうか? そして、以前の私と違って、今度はきちんとついていけるのだろうか?」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 瑠華はビジョン決めを振り返る。AI 技術の進歩、特に機械学習や深層学習といった専門分野を知り、革新的な変化を遂げていることを知った。


 例えば、レントゲンや CT スキャンなどの画像診断では、AI が画像認識技術を使って、医師が見落としがちな小さな病変を検出する精度が向上。

(じいちゃんも胃カメラで撮られた、赤いポチポチがあった写真を持っていたなあ)


 また、学校で使うChat GPTのような自然言語処理を用いた AI は、膨大な医療論文や、病院のカルテを分析して、まるで魔法みたいな診断の支援や治療法の提案を行うことができるという。

(でも、本当に大丈夫なのだろうか?)


 さらに、予測分析技術を用いれば、病気の発症リスクを予測。

(病気にならないように、事前に対策できるなんて素晴らしい!)


(でも…AI だけを頼っていいのかな? 個人データの漏洩、犯罪への不正利用はよく聞くなあ・・)

 心配するのが得意な瑠華は、AI の恩恵だけでなく、影の部分にも目を向けていました。


(スフィアのAIは安心できるが・・・)

 AI は、万能ではない。悪魔に魅入られたAIもあるだろう。AI の個性にも特性があることを瑠華は知ってた。


(AI 技術は、人間の能力を拡張する強力なツールですが、最終的な意思決定を行うのは自分である)これを彼女は心に留めていた。


そんな彼女の複雑な思いを察知したかのように、パーソナル AI のソフィアが、優しく語りかける。


「瑠華さん、何かお困りですか?入学して最初の週ですが、何か課題でも?」


「ソフィア… 私は、医療 AI 開発者になりたいと思っているけれど何を選択で学べばいいのか、まだよく分かっていないの。AI 技術だけじゃダメよね? 人々の健康を守るためには、もっと多くの知識が必要だと思うの。それに… 中学時代のはじめは苦労したから… 今度はきちんとついていけるか、不安なの。」


「瑠華さんのご心配はもっともです。医療 AI 開発者を目指すには、AI 技術の知識だけでなく、リベラルアーツとして、医学、生物学、そして倫理学といった幅広い分野の知識が不可欠です。 AI 高校のカリキュラムは、一人一人の学生のビジョンの実現を目指して設計していきます。早々にインターンシップもあるので、実学と基礎勉強との関係が感じられますよ」


「まずは、医療 AI 開発の基礎となる英語、数学、物理学、生物学、そして医学、倫理学といった科目を学びます。この基礎の上に、 AI 技術、データ分析、医療情報学といった専門科目が積み重ねられていきます」


 ソフィアは、AI 高校のカリキュラム提示する。そこには、英語(英会話、論理・表現)、数学(線形代数、確率統計)、物理学(生物物理学)、生物学(遺伝子工学、細胞生物学、生理学)、医学(解剖学、生理学、病理学)、倫理学(医療倫理)。

 そして AI 技術(機械学習、深層学習、自然言語処理)、データ分析、医療情報学といった科目が、綿密に連携して構成されていることが示されていた。


(う〜〜。難しそう・・・)


「数学や物理学は、医療 AI のアルゴリズム開発に不可欠です。生物学や医学は、AI による診断や治療の精度向上に役立ちます。一見難しそうな倫理学は、AI 開発における倫理的な問題点を解決するための指針を策定する上で重要です」


 その日の午後、特別にインターン前の予習として医療 AI 開発に関する講義が始まった。担当は、AI 医療の第一人者である、人間の先生、遠藤未来えんどうみらい先生と、医療 AI 開発の専門家である AI、ヒポクラテスだ。


 遠藤先生は、巨大なスクリーンに、自身が開発に関わった医療 AI の事例を映し出す。それは、早期がん診断を支援する AI システムだった。


「皆さん、こんにちは!今日は、医療 AI 開発の最前線について、AI ヒポクラテスの力を借りながら考えてみましょう・・・」

 遠藤先生は、情熱的に語り続ける。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 AI 高校入学から数週間。瑠華は、将来の夢を「医療 AI 開発者」と定めインターンシップに臨んだ。それは、医療 AI 開発の最先端を走る企業、「メディカル・フロンティア株式会社」だった。


「ソフィア、準備は大丈夫かしら? … 緊張するわ。でも、絵本作家さんの教えてくれたノートの使い方が役に立つはず!」


「瑠華さん、大丈夫です。事前にメディカル・フロンティアの企業情報や、インターンシップの内容を調べてきました。 今は相手の言われるままではない瑠華がいます。自信を持って臨んでください」


 ソフィアは、瑠華のパーソナル AI として、インターンシップ期間中もサポートしてくれる。その後ろには医療AIのヒポクラテスもいる。


 研修初日、瑠華は、AI 開発チームの佐藤さんと挨拶を交わし、インターンシップの内容について説明を受けた後、早速、ノートを取り出した。


 瑠華の手帳には、インターンシップの目標、スケジュール、そして日々のタスクが、色とりどりのペンとマーカーを使って、カラフルに書き込まれていく。


 彼女は、まず、インターンシップ全体の目標を、手帳の一番最初のページに大きく書き込んだ。 それは、「AI 画像診断システムの開発に貢献し、医療 AI 開発者としての基礎スキルを習得すること」だった。


「佐藤さん、今日の予定と、優先順位を整理させてください。」


「もちろんです。今日は、まず、医療画像データの選別作業から始めていただき、その後、AI モデルのテスト結果の分析をお願いします。順位としては、データ選別が最優先です」

 佐藤さんの指示を聞きながら、瑠華は、手帳に今日のタスクを書き込む。


 瑠華は、その目標達成への具体的なステップを、週ごとから、さらに日付ごとに細かく計画していった。


 彼女は、各タスクに、完了日と、優先順位を記した。 そして、タスクの横に、チェックボックスを作り、完了したらチェックを入れていくようにした。


 毎日の医療画像データの選別作業は、想像以上に大変な作業だった。 膨大な数の画像データの中から、AI の学習に適したデータを選別するのは、細心の注意が必要だった。


 しかし、瑠華は、ノートに書き込んだ計画に沿って、一つ一つ丁寧に作業を進めていった。彼女は、作業中に発生した問題点や、改善点なども、手帳に書き込み、その都度、対策案を検討していった。


 例えば、データ選別の基準が曖昧だったため、選別作業に時間がかかっていたという問題点を見つけた彼女は、佐藤さんに相談し、より明確な基準を設定してもらった。


 休憩時間には、他の研究員たちと交流する機会もあった。 瑠華は、彼らと積極的に意見交換を行い、医療 AI 開発に関する知識や技術を吸収していった。


 そして、その日の終わりには、ノートに、その日の成果と、反省点を書き込んだ。 評価により、明日以降の計画に反映させていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 瑠華は、ノートを常に持ち歩き、計画を立て、実行し、そして反省することを繰り返した。 彼女は、絵本作家から教わった手帳の使い方が、医療 AI 開発という新しい分野での学習にも、使えることを実感した。


「ソフィア、楽しかったわ!メディカル・フロンティアでの経験は、本当に貴重な時間だった。ノートのおかげで、計画的にインターンシップを進めることができたわ。でも、もっと基礎を勉強しないと、高度な医療 AI 開発はできないって実感したわ」


 瑠華は、ノートに、AI 高校での今後の学習計画を書き込んで、新たに受講科目を選定した。彼女は、英語、数学、生物学といった基礎科目を重点的に学習し、同時に、AI 技術に関する知識も着実に身につけていく計画を立てた。


 リベラルアーツとしてのインターンシップは、彼女に、将来の夢へ、目の前の学習の重要性を改めて認識させる、転機となった。

現在、こちらの「小説家になろう」で続けてアップロード中です。


別サイト「note」では少し進んでいます。先読みもできます。

https://note.com/jud/n/n6bb165f74490

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