2-1 王城のルシフェル
ルシフェル、別名「明けの明星」。かつて天界で最も輝かしい存在だった彼は、神への反逆によって天界から追放され、この世界に異世界人として堕ちてきた。
その美貌は、今もなお、人を魅了する。しかし、彼の瞳には深い闇が宿っていた。彼はこの世界で徐々に勢力を拡大していく。一見慈善事業だが、その裏では恐るべきことが行われていた。
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「この王国は、貧富の差が激しすぎる。民衆は苦しんでいる。私は、あなたを救うために来たのだ」
ルシフェルは人々を前に優しく語りかける。その言葉は人々の心に響き、多くの支持者を得た。彼は貧しい者たちに食糧を配り、病人を治療し、困窮する者たちを助けた。彼の慈善活動は王国中に広がり、人々から「救世主」として崇められるようになった。
しかし、それはルシフェルの巧妙な策略だった。慈善活動を通じて人々の信頼を得て、貧しい者たちに忠誠を誓わせることで私兵を組織した。そして、その私兵を使って王宮に影響力を及ぼし、王と貴族を操り始めた。さらに、彼は異世界人の奴隷販売の黒幕であることを巧妙に隠蔽していた。
ルシフェルは王国の貧富の差を巧みに利用した。「私は国民ファーストで、あなたを助け出す・・」と、心配そうに語りかける。
その言葉は人々の心に響き、多くの支持者を得た。しかし、それは表向きの顔に過ぎなかった。
裏では、彼は異世界からの召喚事故を巧みに利用していた。「異世界からの転移は、時に危険を伴います。元世界の事故で転移者は、この世界で生きる術を持たない。奴隷にもできない彼らの身体能力は、この世界の医療技術に貢献できる。それは、不幸な事故から生まれた、新たな可能性なのです」
この理屈で、ルシフェルは異世界からの低いスキルの者を奴隷として扱い、さらに損傷がある者は富裕層への臓器移植へと展開した。その莫大な利益の一部を慈善事業に回し、人々の支持を維持するという、巧妙な策略だった。
彼はこのビジネスを「恵みの輪」と名付け、人々の同情心を巧みに利用した。「転移失敗者」という、同情を誘う言葉で、人々の倫理観を巧みにすり抜けていったのだ。平均的な異世界人を「劣等種」と呼ぶことはなかったが、彼らの存在価値を奴隷市場と医療資源に限定することで、彼らを道具として扱っていた。
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ルシフェルの側近には、スモデウスとベリアルがいた。スモデウスは参謀として、作戦立案や情報収集を担当し、知略に長け、あらゆる状況に対応できる柔軟性を持っていた。ルシフェルの冷酷さを和らげる唯一の存在であり、時に彼を諫めることもあった。しかし、本質は冷酷非情で、手段を選ばず目的を達成しようとする人物だった。
スモデウスは、ルシフェルの移植ビジネス計画に懸念を示した。「ルシフェル様、このビジネスは倫理的に問題があり、失敗のリスクも高いです。発覚すれば民衆の反発は避けられません。王室からの圧力も無視できません」と、冷静に丁寧に忠告する。ルシフェルは一瞬考え込んだが、すぐに冷酷な笑みを浮かべた。
「スモデウス、君の忠告は理解している。しかし、この世界は弱肉強食の世界だ。慈悲など、無意味な幻想だ。民衆は恐怖によって支配されるべき存在であり、貴族は欲望によって操られるべき存在だ。私は、その欲望と恐怖を巧みに利用するのだ」
ルシフェルの瞳は冷たく鋭く輝いていた。その言葉には、揺るぎない自信と冷酷な意志が込められていた。
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ベリアルは、ルシフェルの暗殺部隊を率いる冷酷非情な暗殺者だった。その部隊は卓越した戦闘能力と隠密行動のスキルを持ち、逃亡奴隷や移植手術から逃れた者たちを確実に仕留めることで知られていた。
彼らの存在は、奴隷たちを恐怖で支配し、ルシフェルの体制に重要な役割を果たしていた。ベリアル自身も、冷酷に任務を遂行する冷血な暗殺者で、感情を一切見せず、常に冷静沈着に効率的に任務をこなす。彼の行動には迷いがなく、まるで機械のようだった。
ルシフェルはベリアルを呼び出した。「ベリアル、『鎖のギルド』から、移植手術を受けた女の逃亡の連絡が入った。奴隷が 1000 人を超える大規模なギルドだ。この事件は他の奴隷たちに悪影響を与える可能性がある。前例を作ることだけは避けなければならない。この女を確実に始末しろ」
ベリアルは、ルシフェルの指示を一言も反論することなく受け入れた。
「かしこまりました。既に、その女性の情報を収集しています。彼女は臓器の一部を摘出されており、移動能力は限定的です。おそらく近郊に潜伏しているでしょう。暗殺チームを編成し、速やかに処理します」
ベリアルの表情は依然として感情のない冷酷なものであった。彼はルシフェルの命令に従い、瑠華の暗殺計画を実行に移す。それは彼の使命であり、彼の存在理由だった。