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1ー9 闇の医師に売られる

 とうとう、つなぎの作業服を着た移植業者が仕事を始めた。ギルバートは、瑠華の布を外し臓器提供者として見ている。彼女の太ももを超音波センサーでトレース。太腿を中心に売れる筋肉組織を探している。

 

冷たい金属が彼女の肌に触れ、奇妙な感覚が瑠華の全身を駆け巡った。意識は朦朧としていたが、何かが、彼女の体から、失われていくのを感じた。 それは、まるで、彼女の命の一部が、静かに、そして、不可逆的に、奪われていくかのようだった。


 センサーの先端部と、彼の冷たい指が、瑠華の太ももに触れるたび、刺されるような嫌悪感が瑠華の全身を駆け巡る。(体の一部を奪われているのか?)


 すぐ横のディスプレィには瑠華の体内がカラフルに色分けされている。彼女の体は、全く動かない。 ただ、大腿部の痛みはない。

(魔力の強い麻酔薬だろうか?)


 ギルバートは、瑠華の傍らに立ち、彼女の状態を確かめていた。 彼の顔には、複雑な表情が浮かんでいた。 それは、悲しみ? それとも、罪悪感? あるいは、両方? 彼の心の中にあるものは、誰にも分からなかった。

 

 瑠華の太腿の20cmの長さの筋肉は、丁寧に3つ切り取られ、1つづつ保冷庫に並べられていく。精肉工場で、豚肉を処理しているかのようだ。瑠華は、この状況に、強い戸惑いを感じている。なぜ、こんなことをされているのだろうか?瑠華は、ただただ、恐怖と、絶望に囚われていた。


 ギルバートは、瑠華の傍らに立っている。彼の顔には、複雑な表情が浮かんでいる。それは、悲しみ?それとも、罪悪感?あるいは、両方?彼の心の中にあるものはわからない。しかし、彼の目には、何か、複雑な感情が渦巻いているのが感じられる。


「すまない……本当にすまない……」

 ギルバートは、震える声で言った。

 「君の筋肉は…… 国家公認の闇の医師が使い、歩けない人を歩かせるために使うんだ。高性能ですぐに歩ける義肢を作るんだ。酷い言い訳なのは分かっている。だが、これが現実だ……」

 彼の言葉は、虚しく、そして、痛々しい。


 彼は、瑠華を、単なる臓器の塊として見ているわけではない。彼の心の中には、彼女への同情や、罪悪感がある。そして、彼は付け加えた。

 「君は臓器提供者だが、本当は誰かの大切な人だったのかもしれない。でも、そう思わないようにしよう」


 瑠華は、この状況を、ただただ、受け入れるしかない。何もできない。手足は動かず、体は麻痺している。瑠華は、ただ、この恐ろしい状況に、身を任せるしかない。


 わずかに開いた瑠華の濃い青緑の目。 それは、ギルバートには、美しく見えた。 しかし、彼女の心は、まだ、自分に否定的だ。 絶望の淵に沈み、あと少しという希望の星を見いだせない。

現在、「小説家になろう」へ続けてアップロード中です。


別サイト「note」では少し進んでいます。先読みもできます。

https://note.com/jud/n/n6bb165f74490

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