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見れば「椿」と呼ばれた女性は、陶器の食器や置物を扱う雑貨店の店頭で、店主の男と壺を見ながら説明を受けているようだった。男は三十代半ばほどで、興味津々の様子で彼女の顔を覗き込み、どこか距離の近い話しぶりだった。
「……朝比奈、少しここで待機していろ」
千歳はそれだけ言うと、朝比奈を置いて雑貨店の方へと足早に歩いていく。
「え、ふ、副隊長?!」
「待機」と言われたが、朝比奈は慌てて追いかけた。
「どうです?これほどまでの歴史を持つ素晴らしい陶器は、めったに手に入らない貴重な品ですよ、お嬢さん」
過剰なまでに白い歯を見せ、キラキラとした笑顔を振りまきながら、ぐっと客の女との距離を縮めようとした男。だが、その男と、女性の間に割り込むように入ったのは、ほかの誰でもない上司の千歳だった。
「この店の接客は、客との距離が随分と近いのですね」
千歳が一介の店の接客に口出すことにも驚いたが、それ以上に驚いたのは、そこにいた女性が「旦那様っ……?!」と言ったことだった。視線を千歳へ戻すと、彼がごく自然に彼女の隣へと立っている。
(……まさか。この人が、副隊長の──)
朝比奈の中で、ようやくすべてが繋がった。
「こ、これは、これは副隊長の奥様でしたか……っ」
「ええ。ですので、あまりみだりに近づかないでもらいたい」
そう言った千歳の目が氷のように冷たい眼差しだったので、店主の男はびくっと体を震わせた。




