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「これ、は……」


驚く椿をちらと見た後、千歳は「私から、椿さんへの誕生日の贈り物です」と中庭に視線を向けた。


「……私は家を空けることも多いので、せめて花を見て、この家で過ごす時間が穏やかなものになればと思って」


それから「花を眺めていると心が和むと、以前話していたでしょう?」と続けた千歳。その言葉に社交パーティに来ていく服を買いに行くため、二人で初めてでかけたときのことを思い出す。


千歳はきちんと覚えていてくれたのだ。車内で交わされたあんな些細な、何気ない会話を──。


「ありがとう、ございます……っ」


途端に、ぎゅっと苦しくなる胸。千歳が振り返った先にいたのは、肩を震わせ俯く椿だった。


「椿、さん……?」

「ごめんなさい、あの……っ」


向けられた背に千歳は目を見張った後、庭から上がり、ゆっくりと椿に近づいた。


「……椿さん、こちらを向いて」


両手で顔を覆い、肩を振るわせる小さな背中。そんな椿の背に手を伸ばした千歳は、一瞬触れるのをためらったが、するりと腕を回すと、そのまま後ろから彼女を抱きしめた。その優しい温もりに包まれた瞬間、たまらず椿は涙を零した。


「……お気に、召さなかったでしょうか」


すぐ耳元で聞こえた低い声はどこか不安げに聞こえ、椿はすぐに「違います……っ!」とふるふると首を振る。


こんなにも愛情が詰まった贈り物を、お気に召さないだなんて、そんなはずなかった。


自分のために、花を贈ってくれた千歳の姿に、今はもういない両親の姿が思い浮かぶ。

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