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風呂上りの千歳が居間へとやってきたので、椿は用意しておいた膳を置き、千歳の隣に腰を下ろした。


膳にはなすの煮物や蛸の和え物、天ぷら、炊き込みご飯などが並んでいる。明日は非番だと聞いていたので、椿は冷やしておいた酒も一緒に持ってきた。


「どうぞ、お注ぎしますよ」

「ありがとうございます」


切子細工の涼しげなお猪口に酒を注いだ後、椿はちらと隣を見た。


きっちりとした隊服とは違い、着流し姿の千歳。いつもは結われている長い髪が今は解かれていて、襟元もゆったりと緩められている。これまでも見慣れた姿だったが、久しぶりに見たせいか、胸がどきどきと高鳴った。


「いただきます」

「どうぞ召し上がれ」


それから千歳から留守にしていた間のことを聞かれ、百合子たちとお茶をしに行ったことや、隣家の住人から野菜をたくさんお裾分けしてもらったことなど、椿は他愛もない話をした。


一方の千歳は、膳の料理に箸を進めながら椿の話に静かに耳を傾け、時折相づちを打つ。何気ないひとときだが、久しぶりに千歳がいる夜に椿の緊張は次第に解れていった。


やがて千歳が食事をひとしきり終え、椿が酒を継ぎ足そうとしたとき。


「明日は非番ですので、朝は少しゆっくりできそうです」


千歳がそう言って椿にお猪口を差し出す。椿は微笑んで酒を注ぎながら、「では朝食は、少し遅めにご用意しましょうか」と尋ねた。


「……ええ。でも、できれば出かけませんか」

「……え?」


注いでいた手を止めて、椿は顔を上げる。千歳は静かに、けれど目を逸らすことなく椿のことを見つめていた。

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