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『もうすぐ椿様のお誕生日ですよ』
通いの女中である八重子から、そんな話を聞いたのはつい最近のことだった。
先日、椿と植物園に行き、過労で倒れた彼女を千歳が看病していたことを知り、八重子はいたく喜んでいた。
最初は椿に冷たい態度を取っていた千歳が、椿と徐々に仲良くなっていることが純粋に嬉しいのだろう。立場に縛られることなく、誰に対しても分け隔てなく接する椿を孫のように可愛がっていたから尚更だろう。
千歳自身の誕生日といえば、毎年隊士たちが大勢集まり、宴会が開かれるのがここ数年の恒例行事と化している。
もちろん帝邸の警備や街の見回りなどは年中行われているため、全員が全員参加できるわけではないのだが、部下たちが代わる代わる酒を注ぎに来て、「おめでとうございます」と言われるのは、千歳にとっても嬉しいものである。
『椿さん』
そう名前を呼ぶたびに頬を赤らめる椿が、千歳には日ごとに愛おしく映る。初心な彼女が反応を見せるたび、その想いはさらに深まっていった。
とはいえ、見合いの場では「夫らしい振る舞いは期待しないでほしい」と、初夜には「寝室は、これからもずっと別でお願いします」と言った手前、なかなかその先に進めずにいた。
(自分の発言がこんな形で返ってくるとは……)
そんな大きな後悔もあるからこそ、結婚して初めての誕生日をきちんと祝ってやりたいという気持ちになっていた。
「で、誕生日にはどんなプレゼントを用意しているんですか」
興味津々の朝比奈がわくわくと楽しげに、そう尋ねてきた。頬杖をつきながら面白そうだと言わんばかりの表情を見せるので、千歳は「お前には教えない」と涼しい顔をして返す。
「え~、教えてくださいよ~!」
「お前は周りに言いふらしかねないだろう」
「絶対秘密にしますから!」
朝比奈とそんなやり取りをしながら、誕生日当日に思いを馳せる。
(準備に時間はかかったが、大変なのは当日だ)
仕事の合間を縫って進めていたおかげで、段取りは十分。あと、一日乗り切ればいい。それを励みに、千歳は午後からの仕事に向かったのだった。




