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熱で倒れて千歳に看病をしてもらってから、早一週間が過ぎた。丸二日ゆっくりと休んだおかげで、椿の体調もすっかり回復し、またいつもの日常に戻り家事に勤しむ日々を送っている。


けれど、あの日以来、椿にはひとつ困ったことがあり……。


「椿さん」

「……っ」


名前を呼ばれただけで、椿の手がぴくりと震える。声をする方を見ようと思うのに、まっすぐに千歳を直視できず、椿の動きはいつもぎこちなくなる。


「おはようございます」と、にこやかに笑みを浮かべるも三秒と千歳の顔を見ることができなかった。


『私たちは夫婦なんですから』


そう言って椿の手を握り、優しく頭を撫でてくれた千歳。熱にうかされ、意識は朦朧としていたが、すぐ手が届く距離でいた千歳の寝顔を思い出すたびに、胸が熱くなる。こんな気持ちは初めてで、どうすればいいのか分からない。


(私ったら、またこんな態度を……!)


心の中で、もう何度後悔しただろうか。けれど、千歳の顔を見るたびにどきどきと高鳴る胸に、戸惑いは大きくなる一方だった。


「また、体調でも悪いのですか」


親切にそう尋ねてくれた千歳に、「い、いえ!大丈夫です!」と答えると、乾いた笑いを浮かべながら「いってらっしゃいませ」と何でもない風を装って誤魔化した。


せっかく千歳との距離が縮まったのだから、この距離感にも慣れなくては。


そう頭では理解しているものの、あの麗しい顔を間近で見るたびに緊張してしまう自分の不甲斐なさに、椿は頭を悩ませていた。

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