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「うちのような地味な家に、なぜご縁談を……と、ずっと不思議に思っておりましたが、そういうご事情だったのですね」
微笑みを絶やさない椿に、静華をはじめ周囲の令嬢たちも唖然としていた。嫌味に全く椿が動じていないのを見た静華は、頬を引きつらせている。
しかし、すぐに表情を整えると「どんな理由で選ばれたとしても気になさらないとは、さすが院瀬見様の奥様ね」と、優雅に扇子を仰いで体勢を立て直した。
「でも、やっぱり結婚するなら、愛してくれて、うんと甘やかしてくれる殿方が一番ではなくって?結婚したら妻はほったらかしなんて話もありますけど、 女は愛されて綺麗になるって言いますし。特務部隊に所属されている方が夫なら、尚更家を空けがちで寂しい思いをされているでしょうに」
静華が頬に手を当て、わざとらしく大きなため息をつくと、周りの令嬢たちもうんうんと大きく頷いている。
「椿さんはいかがですか。そうは思いませんこと?」
そう問いかけた静華の言葉は、たとえ「院瀬見千歳との結婚」を手に入れたとしても、愛されずにいる結婚生活など惨めなものだと言いたげである。
「確かに……白鳥様のおっしゃる通り、そういう結婚生活は理想的かもしれませんわ」
椿の言葉に、静華はあからさまに喜色を浮かべた。
今度こそ、さぞ惨めな気持ちになっただろうと椿の顔を覗き込もうとした静華だったが、椿は「でも」と微笑みながら、静華の目をまっすぐ見つめる。




