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 空耳だろうかと辺りを見渡してみるも、声の主は見当たらない。街の人々は騒ぎの中心に向かおうとそちらに夢中で、焦ったように周囲を見渡す椿のことを気に留める人は誰もいなかった。


「……けてっ!」


 けれど、再び聞こえてきた子どもの声に、気のせいではないと確信する。慌てて椿が周りを見渡せば、路地の奥のほうに大男に担がれた子どもの足が見えた。


「長い髪をひとまとめに結った男性が戻ってきたら、すぐに戻るとお伝えいただけますか!」


 椿はとっさに近くにいた団子屋の店員に伝言を頼むと、男が消えていった方へと駆け出した。


 大通りから一本それた路地は陽が届かないせいで薄暗く、ひと気が感じられない。恐怖に怖気づきそうになりながらも、椿は通りの奥へと走っていった。


「んんっ!」


 すると、先ほど見かけた思われる少女の姿を確認した。歳は6つか、7つくらいだろうか。口は男に塞がれており、足をじたばたさせながら抵抗している。怯える少女と目が合った瞬間、椿は気づけば男の元へと駆け出していた。


「人攫いがいますっ!誰か助けてくださいっ!!」」


 椿の大声に気づいた男が振り返ると、口を塞ぐ手が緩まったのか「助けて、お姉ちゃん!」と子どもが大声で叫ぶ。やはり男は無理やり少女を連れているようで、騒ぐ子どもを「静かにしろ!」と怒鳴りつけ、平手打ちしようとした。

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