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それから日付が変わる少し前、千歳はようやく仕事を終えて我が家へと帰宅した。静かな夜風に誘われるように、玄関の戸を開けると、家の中はしんと静まり返っている。


だが、廊下の奥を見れば居間から灯りが漏れていることに気づき、足音を立てないように部屋へと向かった。


居間の扉をそっと開けると、食卓に伏せる椿の姿。


肩にかかる柔らかな黒髪が揺れ、机の上には開かれたままの本が置かれている。どうやら読書の途中で眠ってしまったらしい。その寝顔はとても穏やかで、千歳は思わず息を潜めた。


「……先に寝ていていいと言ったのに」


わざわざ起きて待とうとしてくれていた健気な妻に、千歳はふと頬を緩めながら、ひとまず自分の上着を背にかけてやる。


と、そのとき、縁側に置かれた花瓶に活けられた竹笹が目に入った。笹の葉には、色とりどりの折り紙で作られた飾りがついている。


近くに寄り、短冊を眺めてみれば、こう書いてあった。


『ずっと千歳さんと一緒にいられますように』


細く、柔らかい線で書かれた綺麗な文字に、胸がきゅっと疼く。かわいらしい願いごとを書く妻に、愛おしさがなお募った。


千歳は竹笹の近くに置かれた短冊を手に取り、それに何かを書き記すと、椿の短冊の隣に自分の短冊を並べて飾る。それから寝支度をするために、一旦居間を出ることにした。

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