第8話気に入らない僕と強引な先輩
男の方には見覚えがある。
男子テニス部部長の確か長門先輩だったか?
イケメンで女子からの人気も高い先輩だ。
そうして歩いていると、紅羽の前に部員達が立ちはだかる。
流石にこれだけ囲むのはやりすぎだ。
僕は瑠奈の前に行き、部員と彼女の間に割って入る。
「何か用ですか?」
「あんた誰よ」
覚えられてなかったのかよ!!
結構瑠奈の近くにいたのに眼中にないですかそうですか。
彼女の間に割って入っているというのに覚えられていないのはショックだが、それは今はどうでもいい。
「僕は彼女の幼馴染です、そこをどいてください」
「私は椎名さんに用があるの、部外者は引っ込んでおいて!!」
「部外者というのなら、男子部員がいるのはおかしな話だと思いますけど?」
揚げ足を取る。
それはそうだ。
普通なら僕も割って入る事はなかっただろう。
だけど今回は男子部員がいる。
僕が割って入ってもいつも通りに言われる筋合いなどない。
「彼はテニス部の部長だから部外者じゃないわ」
「そうよ、テニスに携わらない貴方と一緒にしないで!!」
……ん?
1人の部員の言葉を皮切りに女子部員が罵詈雑言を浴びせて引き下がらせようとしてくる。
あ~、こいつら駄目だ。
瑠奈に考えろと言ったが、前言撤回、こいつらに瑠奈は任せられない。
「行こう瑠奈」
僕は瑠奈の手を掴み、校門へ向かう。
しかし、男が立ちはだかった。
「君、テニスはしたことあるかい?」
「ありますよ、中二までですけど」
「なら、こうしないか?」
そう言って提案してきたのは何ともまぁ汚い話だ。
瑠奈と僕、長門先輩と女子部員の一人で戦うというものだ。
それも瑠奈達は2セット先取の3セットマッチで僕と長門先輩は3セット先取の5セットマッチだ。
条件としては彼らが勝てば瑠奈は入部することが決定し、負ければ大人しく引き下がるらしい。
どうするべきか?
僕は別に構わないのだが、瑠奈の意見が重要だ。
「私一人で相手しましょうか?」
瑠奈はそんなことを言い出した。
いくら彼女でも2セットと3セットの立て続けの練習は厳しいだろう。
「別に構わないよ、それでいいなら」
良くねぇだろ、卑怯者。
流石にそんな卑怯な事をしてまでも彼女が欲しい事に対して呆れを通り越して怒りが湧いてきた。
……受けるか。
「瑠奈、いいよ久しぶりにやる」
そっちがその気ならやってやろうじゃないか。
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