22話
「兄さん、そこに正座してください」
「えっと、どうしたの?」
璃奈ちゃんはニコッとした笑顔に加え、低い声色で言い放つ。
この感じはヤバい奴だ。
普段の彼女なら頬を膨らまし可愛らしく怒るので怖くないが、この感じは本気で怒っている。
「聞こえなかったですか? せいざしてください」
「はい」
彼女の圧に押され、正座をする。
普段可愛らしく怒る子が本気で怒ったら怖いと僕の本能が感じ取っているのだ。
いうなれば普段温厚な子が怒ったら怖いのと同じ原理だろう。
「なんで正座させられているかわかりますか?」
「えっと……」
どのように答えていいのかわからない。
もしも璃奈ちゃんにわからないと言えば「兄さん、そういう所ですよ」と言われ、答えたら「全然わかってません、兄さんそういう所ですよ」とか当たっていれば「わかっていてやっているんですか? 私を怒らせたいんですか? Mなんですか?」とか言われるのでどちらにしろ地獄である。
かといって黙っていてもずっとこの状態の生き地獄なのでこの状況は完全に詰みである。
どうすると考えていると、笑顔の彼女の眉が少し動く。
「黙っていたらわからないじゃないですか、何か答えたらどうですか?」
「あの、えっと、ごめんなさい」
「何を謝ってるんですか? 私はなんで正座させられているか聞いてるだけなんですが?」
(うん、怖い)
逃げ道をなくすように言うので恐怖を覚える。
璃奈ちゃんは本気で怒ったら怖い所はこういう所だ。
「あの、えっと、わかりません」
「兄さん、そういう所ですよ!!」
怒りが爆発した。
くわっと前かがみで僕に顔を寄せてきた。
その瞬間、彼女の服の隙間から谷間が見える。
「全く、兄さんは女の子の気持ちがわかってません!! ってどこ見てるんですか?」
これがゴミを見るような目というのだろうか?
人によっては美少女の冷たい眼差しはご褒美というが、実際顔が整っている故にとっても怖いのだ。
「怒りますよ!?」
(もう怒ってんじゃん)
「全く、兄さんは変態さんですね」
「すみません」
「人が真剣に怒ってるのに、何を考えてるんですか?」
(ありがとうございます!!)
なんて言えるわけもなく、僕は黙る。
正直に言えば、幸運だ。
男なら誰だって喜ぶはずだ。
可愛い女の子のあんな姿をみれたというのなら誰だって狂喜乱舞するはずだ。
僕はそうしてそのまま璃奈ちゃんに気が済むまで怒られ続けるのだった。




