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5年後

「シャーリー、その、本当の夫婦にならないか?」


「まぁ。旦那様、ご機嫌よう」


 第三子であるルシウスを抱き抱えながら、別邸を訪問なさった旦那様を出迎えます。


「な? その子は?」


「我が子ですわ。先日、我がモトラスト子爵家の養子となりましたの」


「お母様! だぁれ? そのお方は」


「私の契約相手よ? ナーシャ。大切なお話があるから、お部屋に戻っていなさい?」


「はぁい。お母様」


「な!? 二人もいるのか!?」


「いえ、すでに三人おりますわ。もうすぐ、四人目が生まれる予定ですの。旦那様の想い人とはうまくいっていらっしゃいますか?」


「いや、それはだな……」


「まぁ! 喧嘩なさったのかしら? 結婚初夜にあんなにも自信満々に“君のことを愛することはない”とおっしゃったのですもの。まさか想いが届かなかったなんてことは……」


「……あの女は性悪だったんだ。俺に気持ちがあるフリをしていたんだ。それなのに、愛人になることを迫ったら、他に好きな人がいると……」


「まぁ……そのお方は、どんなそぶりをなさっていらしたのですか?」


「好きになった当初は笑顔で挨拶してきたんだ。会話を交わすようになると、満面の笑みで話しかけてきたり……。あと、やけに褒めてきたり……。そうだ、皆に配っていると言っていたが、クッキーを手渡されたこともある!」


「まぁ。そんなお方でいらしたのですね。わたくし、旦那様が次に好きになるお方が、もっともっと素敵なお方であることをお祈りしておりますわ? 旦那様は誓約魔法のことを覚えておいでだと思いますもの」


 笑顔を向けて旦那様にそう話しかけると、力無く頷き、去っていきました。

 教会での誓約魔法。誓約は両人の合意によって、解除することもできる。しかし、合意なく誓約を破ると神罰が下るとされる。我が子と想い人を守る内容も契約に含まれている。

 旦那様は最低限の社交すら不要、我が家に関わらないように、と、おっしゃったから、私もきっと誓約魔法に守られております。








「いい結婚相手だわ。本当に」


 私の実家の資産は、私の運営する商会によって増やされた。その資産を使って、貴族としての実家の面子を潰さずに、私を想ってくれていた想い人と結ばれる方法を探していた。両親は一人娘の私の子を成人後、子爵家の後継にしてくれるのなら、自由にしていいと言っていた。

 私の想い人は、そう、結婚初夜に私の後ろであたふたしていた護衛だ。

 平民の想い人がいると有名な旦那様。幼馴染という噂は、旦那様の一方的なものであると存じていた。そんな旦那様だ。想い人に操を立てるために、今流行りの“君を愛することはない”をしてくれるだろう。そこに、誓約魔法をうまく使えば、私の願いは叶うと思っていた。

 最悪、別れてしまえばいい。そう思って初夜に契約を持ちかける予定だったが、旦那様の方から“お前を愛することはない”と言ってきてくれたことは、僥倖であった。



「旦那様は、平民が貴族にとる態度を好意と受け取っていらしたのね。だから、自信満々に初夜に宣言した、と」


 私がそうやって分析していると、ナーシャの足音と慌てた様子の大人の足音が聞こえてきた。



「シャーリー! 大丈夫だったかい?!」


「まぁ、あなた。あのお方には、すぐにお帰りいただいたわ。大丈夫よ。そんなに焦ってこなくてもよかったのに」


「大切なシャーリーに何かあったら、と思うといてもたってもいられなくて」


「お父様ったら、仕事を放り出してお母様のところにきてしまったのよ? ふふふふ」


 ナーシャが楽しそうに笑い、私の想い人も安心したように私を抱きしめ、笑う。


「ねぇ、あなた。私と一緒になってよかった?」


「叶わないと思っていた君への想いが叶ったんだ。それに、こんな可愛い宝物たちにまで出会えたんだ。すごく幸せだよ。シャーリーも幸せと思ってくれているかい?」


「もちろん、私も幸せよ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 奥様の完璧ひとり勝ちに拍手! [一言] 自己防衛大事!
[一言] 掌コロコロW
[良い点] ナイスよく頑張った! 契約結婚や政略結婚がある中でどうやって想いを叶える為にルールの抜け穴を作ろうと考えたりわざと抜け穴を作ったりしてるんだろうなぁとそして知恵の回る人だけが、その法律や仕…
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