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四話・検査結果

「あ、どうも、お待たせして申し訳有りません。今回の説明をさせて頂きます適性検査課の【松村(マツムラ)】と申します。短い間かと思いますが、よろしくお願いします」



にこやかに挨拶をしてくれたのは、検査をしたゼミ会議室でモニター前に居たスタッフの方であった。


40を過ぎた辺りか、柔らかい印象を作っているが、役所の人間ならば屍山血河の戦場(比喩表現)を潜り抜けてきたのであろう。其は立派な鎧と言える。さしずめリアクティブ・スマイル・アーマー。なんちって。



私と兄は、丁寧な挨拶に頭を下げて答えると、松村氏の言葉の続きに意識を傾けた。


「では、結果から申しますと、えー、ご家族の、お兄様で宜しいですか?」


「え、あ、はい」


「はい、それでですね、えー、弟さんの検査の結果なんですが、身体的にも、適性としても、問題はありませんでした。数値としてはむしろ優秀な方ですね」


「はぁ、成る程。問題がなかったって、問題があることもあるんですか?」


話の流れで気になった部分があったのだが、兄も同様に気になったのか聞いてくれた。


「えぇ、まぁ、検査の結果初期の適性疾患が見つかることはたまに、あります。健康を損なうとか、そう言ったことはありませんのでご心配なさらないで下さい」


「え、適性がないのって病気だったんですか?」


「病気、と言っても良いのかは分かりませんが、検査を重ねています私たちとしても、『適性が無い』と言う事例は実は少ないのです。検査を受けられた方は、大なり小なり適性は有るのが大多数ですから…」


「病気かは分からなくても、先天性の何かがあって適性が無いとしている、と?」


「えぇ、まぁ」



【領域】が世界に生まれるようになって半世紀も過ぎている。

だがまだ半世紀と言っても良いかもしれない。


人かこれまで培ってきた科学技術では説明しきれない超常の存在、【領域】。そしてそこから人類にもたらされた、未知なる力【魔法】。

この仕組みを解き明かすには、まだまだ時間が必要なのだろう。



「ですが、弟さんの適性検査の結果はかなり良いものです。特に干渉適性という特異能力への適性が群を抜いています。残念ながら外部干渉に関しては基準値を下回る結果になっておりますが…」


「干渉適性って、適性が高いとどうなるんです?」


説明を始めた松村氏の言葉に、ある程度把握はしているものの確認のため私が問いかけた。

兄は『はぁ』という感じて予備知識が無いので何から聞いて良いのか分からない風であるようだし…

おい、兄よ、少し前に自分の面談もしただろう?

これは父に全てを任せて何も聞いてなかったな…


「あぁ、ごめんね。干渉適性と言うのは、特異能力を使うために必要な才能なんだ。簡単に言えば、体を強くしたり、頭の回転が早くなったり、ね。亮平君はこの適性が頭部に集中してるから、情報処理型って言われているタイプの能力者だね」


「能力者、ですか」


また新しい単語が出てきおったな。


能力者。

恐らくは話に聞いた通りに、適性に特化したタイプを表しているのだろうが…


「そう、これは一般的にはあまり出してない言葉なんだけどね。例えば、外部干渉適性が高ければ、サイキックとかパイロキネシスとか、もしくはホントに魔法と呼べるような現象を起こせたり、ね。残念だけど亮平君はこの適性が低いんだけど、亮平君の希望進路は研究者、だね。これは天職になると思うよ」


魔法使いにはなれなかったが、身体強化を使ったりINT強化で開発スピードアップなんかは使えるキャラと言うことか。

玄人好みで悪くないな…


「それに…」


松村氏が追加で情報を上げようと口ごもる。

言い辛い、というよりは説明の仕方を考えているような素振りだ。

私と兄は、視線で続きを催促した。

松村氏も苦笑いしつつ、言葉を続ける。


「亮平君は接触干渉適性もかなりの数値を示しているからね、ハンドラーの適性も高いと思うんだけど…まぁ、研究者志望なら使いどころは限られる適性かもしれないと思ってね。でも、フィールドワークをする研究者もいるから、副業で修めてみるのも良いかもしれないね」


「ハンドラー、ってなんです?」


これまた新しい単語か。

これも言葉から見れば支援者、か?


「ハンドラーはね、ゲーム的に言えば、【テイマー】の事だよ。所謂モンスター使いと言われる業種かな」



ほう。


ほうほう。


ほうほうほうほう。


テイマーね、良いじゃない。

自分に足りない能力を、絆を深めた相棒仲間同士達と協力して補って困難に立ち向かっていく。実にストーリー映えする素晴らしいスキルじゃないか!


いや、別に私は主人公然とした状況を望んだわけではないさ?

しかし言うじゃないか、人は誰しも自分というストーリーの主人公さ、ってね。

望んだ方向とはいえ戦闘スキルに乏しいと診断されて落ち込んでなんかいませんよ?

出来れば魔法のひとつでも扱えれば、なんて期待もしてませんとも。

ただね、ただ、そういうスキルが有るなら嬉しいのは私も人の股から生まれた人なのだから当たり前に持ち合わせているわけで…


いやぁしかしテイマー、か。それなら将来的には聖獣とか幻獣とか、はたまた龍種なんかと契約しちゃったりしていやぁ、じぶんそんなちからないですよ、全てはこの相棒達のお陰です、なんて色んな仲間が集まってきちゃったりしちゃったりなんかして…





「テイマー?ハンドラー?って、珍しいんです?」


「え、あぁ、そっちの方面に特化した人は珍しいですけど、現場に出ている探索士(シーカー)の方々は大体所持されてますよ」


「モンスターを使うって、危なくないんですか?」


「一般的に所持できるモンスターは普通のペットより少し大きい位ですからね。それに、テレパスの様なもので意志疎通が出来ますから、野生の動物より余程安全だと思いますよ」


「……だってよ」



兄よ、その視線はいたい。

もっとやさしくして。





面談はその後、恙無く終了しましたとさ。

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