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ロバート・ル・ヴァクト

 ロベールの家に行った次の日、2学期の中間試験の結果発表があった。

 ヘイズ王立魔法学園の試験は、筆記試験と魔術試験だ。その合計得点が中間試験の結果として順位が発表される。

 私が結果発表の掲載された掲示板の前に行くと、そこには人だかりができていた。


――今回こそは1位をとれるはず!


 私は自信満々で掲載された順位を見た。


“1位 ロバート・ル・ヴァクト 998点”

“2位 マーガレット・マックスウェル・ウィリアムズ 997点”


――えっっ2位?


 筆記試験も魔術試験もほぼ満点だったから、今回こそ1位だと思っていた。

 それなのに、1位はロバート・ル・ヴァクト。

 私は合計得点で1点負けている。


 私はロバートのことを知らない。同級生からは貧乏男爵家の出身だと聞いているのだが、公爵令嬢の私が貧乏貴族に負ける訳にはいかない。


 それにしても、ロバートって、どこかで聞いたことがあるような名前……


 悔しいから順位表を燃やしてやろうかと考えていると、後ろの方から声がした。


「マーガレット様!」


 振り向くと昨日の青年がいた。


「あら、昨日はどうも」


「また、火属性魔法を使おうとしましたよね?」


「えっ? 何のことかしら?」


 また私が火属性魔法を使おうとしたことに気付いたようだ。


「こんな場所で火属性魔法を使うなんて、何かあったのですか?」


「周りの人に被害が無い程度に、あの順位表を燃やしてやろうと思っただけよ……」


 私がそう言ったら、青年は順位表を見た。


「あ、また僕の勝ちですね。2連勝できると思っていませんでした」


「え? あなたがロバート・ル・ヴァクト?」


「そうですよ。昨日自己紹介したはずですが……」


「だって、あなたはロベールよね?」


「ええ。よく間違われますけど、私の名前(Robert)の読み方はロバートではなくロベールです」


 私の前にいるのは、私と学年1位を争う男。

 約1年半の間、ロバートだと思っていたけど、本当はロベールと言うらしい……


 眼鏡を掛けた地味な男。だけど、眼鏡をとるとちょっとイケメン。

 栗色の毛は柔らかく、人懐っこい雰囲気。



「あ、あなたがロバート、いえ、ロベールだったのね。中間試験はちょっと失敗しただけ。期末試験は私が勝つから」


「じゃあ、勝負といきましょう」


「望むところよ!」


 私とロベールが話をしていると騒がしい集団が近づいてきた。

 多分あいつだ。


「マーガレット、また2位だったのか……。まあ、おめでとう!」


 女子に囲まれてやってきたのは私の婚約者、ハーバート・バロン・ハリスだ。


 婚約者といっても親が勝手に決めただけで、私はハーバードの事が好きではない。

 ハーバートのハリス侯爵家は、ウィリアムズ公爵家の派閥に属している一侯爵家に過ぎない。それなのに、この態度は頭がおかしいとしか思えない。


 いつも女の子に囲まれて、私にはいつも嫌味を言う。

 確かに学園一のイケメンだが、中身がないただの遊び人だ。

 私は理由を付けてコイツを切りたいと思っている。

 ただ、婚約を解消するにはそれなりの理由が必要だ。

 私から理由もなく婚約破棄できないから、私は『それなりの理由』を探している。


 ハーバートに寄ってくる女子について、私が何も言わないのも『それなりの理由』を探るためだ。ハーバートが女子と問題を起こせば、それを理由に婚約破棄できる。


 私がハーバートを睨みつけたのに対抗したのか、ハーバートは私に「また貧乏人に負けたのか」と言った。


――あー、イライラする……


 公衆の面前で罵声を浴びせるわけにはいかない。だって私は公爵令嬢。


 私とハーバートは親同士の都合で5年前に婚約した。

 私はハーバートのチャラチャラしたところが嫌いだ。

 ハーバートも私の高飛車で気が強いところが気に食わないのだろう。

 お互いに嫌い合っているから、何度も結婚はできないと両親に訴えた。

 だが、却下され続けている。

 婚約してしまったという世間体が両家にあるからだ。


 私はハーバートを無視してその場を離れようとすると、取り巻きの女子が「あら、ハーバート様に愛されていない婚約者様、ごきげんよう」と私に嫌味を言った。


 私は不快感から女を無視してロベールとその場を去った。


――あー、イライラする……


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