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なんて失礼な奴。消し炭にしてあげようかしら?

 ロベールの家にすっかり長居してしまったようだ。

 公爵令嬢ともあろう私が……


「マーガレット様、長い時間引き留めてしまいました。もう遅くなってしまったので、お屋敷まで私が送っていきます」


「そうね。従者も帰してしまったから、お願いしようかしら」


 私はエミリにすっかり気に入られたらしい。

 私が帰ろうとすると、エミリは「お姉ちゃん、また来てくれる?」と私のスカートを掴みながら言った。


「ええ、もちろん! また会いましょう、エミリ」


「やったー! マーガレットお姉ちゃん、大好き!」


 私とロベールが私の屋敷に向かう途中、近道をしようとして平民街を通った。

 細い路地に入ったところで、私たちは汚い身なりの2人組に声を掛けられた。

 スラム街に住むチンピラだろうか?


 チンピラの1人は私の方へ歩いてきた。


「綺麗なねえちゃんじゃねえか。こんなヤツほっといて俺たちと遊ぼうぜ」


 チンピラはそう言うと私の肩に手を掛けてきた。


 当然ながら私がこんな奴らに怯むはずがない。

 チンピラの手を払いどけて、私は言った。

「失礼ね! あなた達、私を誰だと思っているの?」


 チンピラは「この、よくもっ!」と言いながら、私に平手打ちをしようと手を振り上げた。


――なんて失礼な奴。消し炭にしてあげようかしら?


 私はチンピラを焼き尽くそうと魔力を籠めた。


(ヘルズ……)


 その瞬間、「マーガレット様!」とロベールは言いながらチンピラの手を捻った。


 バランスを崩して膝をつくチンピラ。それを見たもう一人のチンピラがロベールに殴りかかる。ロベールは殴りかかってきたチンピラを足払いすると、掴んでいたもう一人のチンピラの手を更に締め上げた。


“ゴキッ”


「てめえ、骨を折りやがったな」

 そう言うと、チンピラはポケットに隠していたナイフを出した。


「違うよ。骨は折ってない。関節を外しただけだ」とロベールは優しい声で言った。


――私のために戦う青年……


 私はこの状況に興奮を覚えた。

 さっき出会ったばかりの青年ロベール。

 私のために命を懸けてチンピラと戦っている……


 私がそんなことを考えている間に、ロベールはチンピラを倒していた。

 ロベールはチンピラたちが動かないことを確認した後、私の方へ小走りでやってきた。


「マーガレット様、怪我はありませんか?」

 ロベールは私を心配しているようだ。


「ええ、大丈夫よ。それにしても、あなた強いのね」


「私のような貧乏貴族には武術は必須です。それに、マーガレット様に何かあったら大変ですから」


「私がケガしたら、あなたの家族が捕まるとか?」


「それもありますが、さっきチンピラを上級魔法で焼き殺そうとしましたよね?」


「え? 何のことかしら?」


 私はとぼけてみたが、ロベールは私がチンピラに火属性魔法を使おうとしたことが分かったようだ。それにしても、私が魔法発動するまでの時間は一瞬だ。

 その一瞬で気付いたとすると、ロベールは相当高レベルな魔術師といえる。

 ここでその話をすると長くなるから、誤魔化すことにした。


「平民を貴族が殺すと後で面倒だと母から聞きました」


「だから、何のことかしら?」


「もしマーガレット様がチンピラを焼き殺していたら、『貴族は平民の命を軽んじるのかー!』と言って、平民がウィリアムズ公爵家の前でデモが起きますよ」


 ロベールが言いたいことは分かる。ヘイズ王国では魔法を使える貴族が、魔法を使えない平民に対してその力を行使することを良しとはしない。例え正当防衛だったとしても、平民に対して魔法で攻撃したとしてゴタゴタは起こるだろう。


 ロベールは私のために魔法を使わずに戦ったのだろうから、私は礼を言うことにした。


「とにかく、ありがとう。礼を言うわ」


 私とロベールがしばらく話しながら歩いていると、私の屋敷に到着した。


「今日は楽しかったわ」と私はロベールに言って、屋敷に入った。


 屋敷に戻った私はロベールの事を考えていた。


 私はウィリアムズ公爵令嬢だから、私に逆らう者はヘイズ王国にはいない。

 さらに、私は超優秀な魔術師として名が知られている。

 だから、私は今まで誰かに守られる事がなかった。

 でも、ロベールは私のために命を懸けて悪党と戦ってくれた。


――私のために戦う青年……


 男性に守られる私。そこには言い知れぬ快感があった。


 それに、今日は久しぶりに楽しかった。


 “ロベール”


 聞いたことがある名前のような気がするけど、思い出せない……


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