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だから、顔が近いって……

「あっ、すみません」


 学園の廊下を歩いていると、知らない青年が私にぶつかってきた。


――私を誰だと思っているのかしら?

――私は公爵令嬢のマーガレット・ウィリアムズよ!


 貴族たるもの序列を明確にさせないといけない。

 だって、私がこの学園で一番偉いのだから。


 私はぶつかってきた青年に言った。


「ちょっと、あなた失礼よ! 私を誰だとっ?」


「すみません。眼鏡をなくしてしまって、前が良く見えないのです」


 その男は食い気味に謝ってきた。


――顔が近い……


 栗毛の青年は、その青い目で私を見つめている。


 私は完全に名乗るタイミングを逸してしまった。

 まあ、悪気はなさそうだし、事情もありそうだ。

 それに、よく見るとイケメン……

 出鼻を挫かれた私は、しかたないからこの青年を許すことにした。


「あら、そう。次からは気を付けて。それでは、ごきげんよう!」


 私が立ち去ろうとすると、その青年は私に向かって言った。


「一緒に探してもらえませんか?」


「は? 何を?」


「眼鏡がないと何も見えないんです。お願いします!」


「私を誰だとっ?」


「ありがとうございます! 眼鏡を探そうにも、何も見えなくて困っていたんです」

 また食い気味に言われた。


――だから、顔が近いって……


 多分だが……この青年は私の話を全く聞いていない。


 眼鏡を落としてテンパっているのか?

 それとも、こういう性格なのだろうか?


 いつの間にか、私はこの青年の眼鏡を一緒に探すことになっている。


 どうして私が庶民の眼鏡を探さないといけないのか……


 そう思いつつも、困っている庶民を助けるのは公爵令嬢の仕事だと自分に言い聞かせた。

 だから私はその青年に「よくってよ」と答えた。


 その後、私とその青年は学園中を探し回ったのだが、眼鏡は見つからなかった。


「一緒に探していただき、ありがとうございました!」とその青年は笑顔で私に礼を言った。


 見つからなかったものはしかたない。

 それに爽やかな笑顔で言われたから、私は「よくってよ」とその青年に言った。


 すると、その青年は少し考えてから言った。


「あのー、眼鏡がないと何も見えないのです。家まで送ってもらえませんか?」


「は?」


「家はすぐ近くです。家に戻ればスペアがありますので」


――だから、顔が近いって……


 それにしてもなんて厚かましい人なの?

 イケメンだから何でも許されるわけじゃないのよ。


 今度こそ名乗ってやるわ


「私を誰だとっ」


「ありがとうございます。本当に助かります!」その青年は爽やかな笑顔で言った。


「よ、よくってよ」


 私は名乗れないまま、その青年を家に送って行くことが決定した。


――男を家まで送るって何? ふつう逆でしょ?


 私はそう思って歩いていたのだが、口に出すと小さい人間だと思われるから止めた。


 だって、公爵令嬢は全国民から尊敬される存在なのだから!


***


 ちょっと話が進んでしまったけど、念のために私の自己紹介をしておくわ。


 私の名前はマーガレット・マックスウェル・ウィリアムズ。ヘイズ王国では国王に続く2位の地位にあるウィリアムズ公爵家の長女。私には男兄弟がいない。だからウィリアムズ公爵家は私が夫を迎えて継ぐ予定。一応、私には両親が決めた婚約者がいるのだけど、その婚約者が私の夫として相応しいかどうかは、これから見極めていかないといけない。


 私の容姿はヘイズ王国一と言われている。私の金髪は程よくカールしていて、目は切れ長で、鼻筋が通った鼻は小さく、誰が見ても美人。ウィリアムズ公爵家を継ぐ必要がなければ、王子と結婚しても良かったんだけど。


 私はヘイズ王国の貴族子女のために設立されたヘイズ王立魔法学園の2年生だ。学園での順位は1位か2位。私は超優秀な魔術師と言っていいだろう。

 成績はほぼトップだけど、ロバートという生徒に勝ったり負けたり。だから、ロバートに完勝することがヘイズ王立魔法学園での目標になっている。

 ロバートには会ったことないのだけれど、同級生からは貧乏男爵家の出身だと聞いている。


 公爵令嬢の私が貧乏貴族に負ける訳にはいかないわね。


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