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悪役令嬢? 婚約破棄? ざまぁ? 全てにやさぐれていたら……バグりました! ~婚約者様、ヒロインはあちらです~  作者: Rohdea


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15. 軌道修正するヒロイン



先生に呼び出されたあの日から、殿下の過保護っぷりが加速した気がする。


「……殿下」

「どうかした?」


(どうかした? って、この状態で何でそんなに呑気な返事を……)


「ど、どうして教室移動するだけなのに、私達は手を繋いでいるのでしょう?」


おかしい。前までは隣を一緒に歩いていただけのはずなのに。

最近、ふと気付くと殿下に手を取られている。


(し、しかも指を絡めて……!!)


「うーん、僕としてはもっと密着していたい所だけど、それじゃさすがにキャサリンも歩きにくいからね」

「……え?」


私は自分の耳を疑う。

もっと密着したい……って聞こえたわ。


「キャサリン、何でそんな変な顔をしているの?」

「ひっ!?」


気付くと、眉をひそめた殿下の顔が近くにあったので私の心臓が飛び出しそうになる。


「ひっ! だなんて。酷いなぁ……悲しいよ」

「だ、だ、だって、顔、お顔が近すぎます!」

「ふーん……」


私が真っ赤になって照れながらそう答えると、殿下は何かを考える素振りを見せる。


「顔か。ねぇ、キャサリンはさ、“この顔”どう思う?」

「はい?」

「僕のこの顔だよ。どう? キャサリンの好み?」

「こ……のみ?」


突然、何を言い出されたのか分からずポカンとしてしまった。


「いや、ふと思ってね。僕のこの顔はキャサリンの好みとしてどうなんだろうか、と」

「えっと……殿下の事は皆さん、かっこいいと……」

「皆、じゃなくて重要なのはキャサリンだよ」


そう言った殿下は私と繋いでいる手にギュッと力を込める。

そして、その目は真っ直ぐ私を見ていた。


(ひえぇ!)


「例え100人の令嬢が僕をカッコいいと思ってくれたとしてもそんなのはどうでもいい。僕にとってはたった1人、キャサリンがカッコいいと思ってくれるかどうかが重要なんだ」

「……っ!」


(カッコいいと思っているわ……思っているのに上手く口に出せないのは何故なの)


「それから、やっぱり髪は長い方がいい?」

「は……い?」


急にどうしたというの!? どうして髪の話に……しかも長髪がいいとは?

ちなみにエリック殿下は短髪だ。


「いや……キャサリンは長髪の方が好きなのかもと思ったんだ。ジョ…………だったし」

「ジョ? えっと、そんな事は無いですよ?」

「……」

「で、殿下はそのままで…………ぜ、全部、かっ……こいい、と思いま、す、から」

「…………キャサリン!!」


恥ずかしくなってしまい、後半の言葉がグダグダになってしまう。

それでも殿下には伝わったようで彼は嬉しそうに笑った。

その笑顔を見ているだけで、胸がキュンとしてしまい殿下を直視出来ないくらい恥ずかしい。


「殿下は……」

「エリック」

「は?」


意味が分からなくて顔を上げると、殿下の真っ直ぐな瞳と目が合う。


「キャサリン。そろそろ、僕を“エリック”と呼んでくれないか?」

「えっ!?」

「ずっと思っていたんだ。“殿下”って呼ばれるのは遠く感じるなって」

「で、ですが……」


私が躊躇っていると、殿下のもう片方の手がそっと私の頬に触れて撫でる。


「……キャサリンだけだよ? 家族以外ではキャサリンだけがそう呼べる権利があるんだ」

「私……だけ?」

「そう。キャサリンだけ。君は僕の愛する人で婚約者なのだから」

「!!」


(どうしてこの人は恥ずかし気もなくそういう事を口に出来るの!?)


腰が砕けそう!


「……」

「……」


そして“私だけ”だなんて!

……その言葉はずるい。

どうして殿下はいつも私の欲しい言葉が分かるのかしら?

それに、そんな期待に満ちた顔で待たれたら呼ばない訳にはいかないじゃないの……

私は意を決して口を開く。


「エエエエ、エ、エ、リック……様」

「キャサリン」

「エ、エ…………エリック様!!」

「キャサリン!」


殿下……エリック様は、破顔してそのまま勢いよく私を抱きしめる。

それだけでこの名前で呼ぶ……という行為に彼がどれだけ喜んでくれたのかがよく分かった。


「く、苦し」

「うわぁぁ、ごめん! つい嬉しくて」


エリック様は慌てて腕の力は緩めてくれたけれど、離そうとはしないしない。


「……」


───私、愛されているわ。

疑いようもない真っ直ぐ注がれるその気持ちが嬉しくて、幸せで…………涙が出そうになる。


(お願い。この幸せを私から…………奪わないで)


悪役令嬢という身分も忘れて、ただの“キャサリン”としてそう願ってしまった。


「……」

「……ハッ! キャサリン……授業が!」

「あっ!!」


ようやく今、自分達が移動教室中だった事に気付く。

慌てて辺りを見回すと皆、恥ずかしそうに私達から目を逸らした。


(もしかして、一部始終を見られて、聞かれていたーー?)


そして時間はかなり経っていて私達は慌てて教室に向かう。

……もちろん、しっかり手は繋いだまま。

その後、やっぱり遅刻したので先生にこってり絞られてしまったけれど、私の胸の奥のポカポカはなかなか消えてくれなかった。


(……エリック様……私だけが呼べる名前……)


───そんな幸せな気持ちで頭がいっぱいになっていたから、この時の私はヒロインの企みに全く気付いていなかった。



◇◆◇◆◇◆◇



「キャサリン。最近、様子が変だと思わないか?」

「え?」


次の授業の準備をしていたら、エリック様が私の席までやって来て突然そんな事を口にする。


「どなたの様子が変なのです?」

「……決まってる。あの女だ」

「……」


エリック様は名前すらも呼びたくないのか、ヒロインを呼ぶ時はあれとかあの女という言葉を使う。


(いくら彼女の事が嫌い……にしても、なんと言うかあまり“らしく”ないのよね)


ヒロインの事が絡むと、時々エリック様が別人……別人格のように感じる事がある。


「正確にはあれではなく、あれの周りに集まっている人達だ」

「周りですか?」

「あぁ、ほら……」


丁度そこへ、移動教室なのかヒロインが廊下を歩いていた。

エリック様に促されてヒロインへと視線を向けると、すぐにエリック様の言いたい事に気が付いた。


「……周囲に令嬢がいるわ!」

「そうなんだよ」


エリック様が神妙な顔で頷く。

前々から令息達は彼女を囲んでいたけれど、今は令嬢達もその輪に加わっている。

傍から見れば、男女問わず多くの人に慕われている令嬢にしか見えないヒロインはご機嫌な様子で廊下を歩いていた。


(あんなに令嬢達からの反感を買っていたのに……!)


「ここ数日でこうなっていた。ちょっと不自然な気がしないか?」

「……」


私は考える。

こんな数日という短期間で、敵意むき出しだった令嬢までも味方に引き込むなんて、普通に出来る事じゃない。それこそ特殊な何かがなくては……


(特殊?)


そうして思い当たるものは一つしか無かった。


(……まさか、魅了?)


今まで転生して来た中では、そういったヒロインの持つ謎の力が使われた様子は無かったけれど、なんと言っても今回はバグ──色々おかしな事が起きている。

だから、ヒロインも軌道修正をはかる為になりふり構わなくなってきたのかもしれない。


(きっと、ヒロインが使うものだから強力な効果を発揮するに違いないわ)


そう思った私の考えは間違っていなかったようで、ヒロインはあっという間に周囲の人達を魅了し、逆に悪役令嬢()はどんどん孤立する事になっていった。


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