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不信感

「この悲鳴はなんだ?」


 新右衛門は直ぐに刀を持って外に飛び出る。


 宿屋の扉を開けて外に出ると昼間に出会った銀髪の少女が中年女性を襲おうとしていた。


「お前は確か昼間出会った『お銀』だな!」


「私におかしな名前をつけるな! それより、赤髪はどうした? お前はアイツの《《保存食》》なんだろ?」


 新右衛門は銀髪の鬼の言っていることがよくわからなかったが、中年女性を救うために刀をさやから抜いた。


「おいお銀! 退かねば斬る!」


「人間風情が! 死ね!」


 銀髪の鬼が新右衛門に手をかざすと、嵐のように風が吹き荒れ、近くの建物のガラス窓が割れて破片が飛び散った。


「其方は建物に隠れていろ!」

 

 新右衛門は中年女性を宿屋の中に避難させると、小石を拾い、銀髪の鬼に向かって投げつけた。


「馬鹿か、小石一個投げた程度で私が倒せるとでも?」

 銀髪の鬼は小石を掴むと一瞬で粉々にした。


 銀髪の鬼が余裕の笑みを浮かべ新右衛門に攻撃しようとするが、目の前に新右衛門はいない……。


「奴はどこに……」


 銀髪の鬼が周囲を見渡そうとしたその時、背後から恐ろしいほどの殺気を感じた……。



「退かねば斬るといっただろ。お前如きに勝てぬようでは『一刀斎』には到底及ばぬ!」


 新右衛門は銀髪の鬼がなたを握っている右手を斬り飛ばした。


「大技に頼ったお前の負けだ。本当に強い者は基本技を丁寧に繰り返し使う」


 新右衛門が銀髪の鬼の首筋に手刀を入れると、そのまま銀髪の鬼は気絶した。


「お兄ちゃん、うちの女房を鬼から救ってくれてありがとう!」


 新右衛門が振り向くと宿屋の主人が中年女性を連れて、新右衛門に御礼を言いに来た。


「御主人の女房殿であったか。無事でよかった」


 新右衛門は銀髪の鬼を縄で縛りあげると椿の元へ連れて行った。


「おい椿、コイツはなぜ宿屋の女将を襲った? 説明しろ!」

 

 新右衛門はベッドの上で震えている椿の前に銀髪の鬼を放り投げ、この鬼がなぜ女将を襲ったのかを聞いてきた。


「……。彼女は女将さんを食べようとしたの。おそらく昼間の戦闘で妖力を使ったから回復のために人を食べようとしたのだと思う。鬼は人を普段の食事にすることはないけど、妖力を維持するために人を食べるの……」


「お前も人を喰うのか? コイツは俺がお前の《《保存食》》だと言ったぞ!」


 新右衛門は厳しい表情で椿を見つめる。


「違うわ! 私は人を食べない! 新右衛門を誘ったのは一緒に居て欲しいと思っただけ、信じて……」


 椿は声を震わせながら、新右衛門が言った『保存食』という言葉を否定した。


 新右衛門は床に放り投げた銀髪の鬼を担ぎ上げると、宿屋の主人が呼んできた王国の騎士たちに銀髪の鬼を引き渡した。


「今宵はもう遅い。明日また話そう……」


 新右衛門はそう言うと部屋から出ていき、宿屋の1階にある食堂の長椅子に横になり椿とは別の所で寝るのであった。


(私は人を食べないとあの時決めた……。新右衛門だけは信じて欲しい……)


 椿は新右衛門に疑われたショックで涙が止まらず、その晩は一睡もできないのであった……。

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