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鬼族の姫

 森の中で不思議な少女と出会った新右衛門。


(鬼族だと……。この女もあやかしたぐいなのか……)


 新右衛門は少女を警戒して、刀のつかに手をかけた。


 しかし、警戒すべきはこの少女ではなかった……。


「まずいわね。囲まれたわ!」


 少女と新右衛門の周りには鬼たちが金棒を持って取り囲んでいた。


「状況はよくわからぬが、一緒に戦おう」

 新右衛門は刀を抜くと、鬼たちの手元を狙って舞でもするように刀を振るうのであった。


 新右衛門に手を斬られた鬼たちは思わず金棒を落としてしまい、新右衛門はすかさず、鬼たちの膝の近くを浅く斬っていく。


 命に別状はないが、手と足に傷を負った鬼たちはその場で動けなくなった。


「おい、鬼どもまだやるか? 手加減できるのはここまでだぞ!」


 鬼たちが悔しそうに新右衛門を睨みつけていると、銀髪の少女が現れ、鬼たちをなたのような武器で殺してしまった。


「おい女、なぜ殺した?」

「コイツらが使えなかったから。あんたその赤髪の家来なの?」


 鬼たちは銀髪の少女の家来だったらしく、新右衛門ではなく赤い髪の少女の命を狙っていた。


 新右衛門は銀髪の少女に向かって剣を構えるが、銀髪の少女は舌打ちをした後、森の中へと消えて行った。


「おい、アイツはなんだ? なぜ襲ってきた? 訳を話せ!」

「私たちは鬼族の王女なの。そして女王になれるのは一人だけだから、私たちは誰か一人になるまで殺し合いをしなくてはいけないの……」


 赤い髪の少女はそう言うと悲しそうな表情をして新右衛門から目を逸らした。


「……。ところでお前、名はなんと申す?」

「名前は人間には教えられないの。適当に呼んでくれたらいいわ……」

「そうか……。では、『椿つばき』でどうだ?」

「ツバキ……? 何それ?」

「俺の世界にある赤い花の名だ。お前の赤い髪と赤い瞳を見て思いついた」


「勝手な名前つけないでよ……。でも……ツバキでいいわ」

 赤い髪の少女は少し顔を赤らめ、照れるのを隠すように少し乱暴に新右衛門に答えた。


「では、椿で決まりだな。椿姫様だ!」

 新右衛門は椿を見つめて、柔らかく微笑む。


「あなたの名前は?」

「俺は鐘巻新右衛門かねまきしんえもんと申す。新右衛門でよい」


「新右衛門は女の子なの? 髪はポニーテールだし、スカートみたいな服着てるし、あと……綺麗な顔……しているし……」

 椿は少し照れた感じで、ちょっと小さな声で口ごもるように聞いてきた。


「俺は男だ! 髪型も袴も俺の世界では普通の格好だ!」

 新右衛門は女性と間違えられて少しムッとしたが、別世界では髪型も袴も珍しいのも仕方がないと思うのであった。


「新右衛門は人間なのに強いのね。もし、もしよかったらでいいのだけど……、もうしばらく私と一緒に居てくれない?」

 椿は新右衛門を真剣に見つめながらお願いしてきた。


「まあ、元の世界への帰り方もわからぬしな。しばらく一緒に旅をするのは構わぬ」

「よかった。じゃあ、私がこの世界を案内してあげる!」


 椿は嬉しそうに新右衛門の前を歩いていく。


(要は用心棒に雇われたということか……)


 新右衛門は腕を買われて椿の用心棒になったのだと理解した。


(それにしても、椿のやつ、仲間になったら急に上機嫌になったな……)


 新右衛門はこうして椿と一緒に旅をすることになるのであった……。

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