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襲撃

 村に戻ると、椿が笑顔で出迎えてくれた。


「新右衛門、お帰りなさい! 修行の成果はどうだった?」

「ああ、卜伝先生の弟子になれてよかった。それよりも話がある!」


 新右衛門は椿の手をひっぱり、二人きりで話せる人気のない場所まで連れていく。


「どうしたの新右衛門?」

「お前、このまま人を喰わないとどうなる?」

「……。そうか、スミレちゃんが話したんだね。このままだと死ぬわ」


 椿は笑顔で答えるが、新右衛門には受け入れ難いことであった。


「なぜだ? 俺はお前を守るためにお前の側にいる。そのお前が自ら命を失うようなことはして欲しくない!」

「ありがとう新右衛門、でも、私は決めたの。それに私が最後まで生き延びちゃったらスミレちゃんと殺し合わなきゃいけないでしょ。私はあの子を殺せない……。だから、これが一番良い選択なのよ……」


 話口調は穏やかで笑顔であるが、椿の中の決意の固さを感じ取った新右衛門はこれ以上、椿を説得することはできなかった。


「もし、私とスミレちゃんの二人が生き残っちゃったら、新右衛門が私を殺してくれる?」

「それは……できない」


 新右衛門は言葉に詰まった。

 椿の言う通り、このまま椿とスミレの二人が生き残った場合、どちらか一人は命を落とすことになるからである。


「冗談よ! もし、二人だけになったら、私がこの世界から消えるわ! ねぇ、その時は新右衛門の世界に一緒に連れて行ってよ!」

「ああ、それがいい。俺の世界に一緒に来るといい」


 新右衛門はそれも叶わないことだと薄々気づいてはいたが、この場ではこう答えるしかなかった。


「姉様、新右衛門様、敵が近づいています!」


 二人が話しているところにスミレが慌てて駆け寄ってくる。


「近づいている。なぜわかる?」

「私の能力は敵意のある相手の察知能力なのです。相手はあの銀髪の王女。西の方角から配下の鬼を連れてこちらに向かっているのです!」


 新右衛門は椿を連れて鬼道丸の元へ行き、お銀を迎え撃つ作戦を話し合った。


「俺はこの村にお銀が襲撃する前に先手を打って仕留めたい!」


 新右衛門は村に損害が出ないように逆に不意打ちを仕掛けて、村に入る前の山中で銀髪の鬼を仕留めることを提案した。


「確かにお前の言う通り、ここで迎え撃つとなると村人に損害が出る。良い策だと思うが、姫様を残して打って出るわけにはいかない」


 鬼道丸は新右衛門の策は悪くないと思ったが、スミレを残して村から出ることには反対した。


「大丈夫よ! スミレちゃんは私が守るから!」

「おい、椿、お前も狙われているのだぞ!」

「新右衛門、大丈夫。騎士団でも聞いていると思うけど、私はスミレちゃんと違って、炎を操れるから、あの銀髪が攻めてきても戦えるわ!」


 新右衛門は椿の妖力が尽きることの心配をしたが、鬼道丸なしで銀髪の鬼たちを討つには相手が多すぎるため、この場は椿の意見に反論しなかった。


「鬼道丸、どうであろう?」

「仕方あるまい、姫様は椿様にお任せしよう」


 鬼道丸の同意を得た新右衛門は鬼道丸と二人で、銀髪の鬼が攻めてくる村の西側の山に向かうのであった。

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