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伝説の剣豪

 気を失った新右衛門を肩にかけ、村へと向かう椿。


 新右衛門は村へ向かう途中で目を覚ました。


「椿……。どうしてお前が……」

「大丈夫。いま、医者のところに連れて行くから!」


 椿は新右衛門を肩にかけ、必死に村を目指す。


「すまない……。俺は弱かった……」


 新右衛門は鬼道丸に負けたことを思い出し、自らの剣に慢心していたことを反省する。


「負けたっていいじゃない! 負けたからってすべて失うわけではないでしょ?」

「でも、俺ではお前を守れない……」


 新右衛門は体だけでなく心も滅多打ちにされていた……。


「私が新右衛門と一緒にいたいの! 新右衛門が誰かに負けたからって、私は他の人に守ってもらおうとは思わない」


 そして椿は村はずれの一件の家に新右衛門を運び込んだ。


「先生、この人を見てもらえますか?」

「ああ、鬼道丸から連絡はもらっている。それにしても派手に喧嘩したな」


 先生と呼ばれる男は老人であったが、細身で品があり、鬼道丸同様に着物を着て、腰には刀を差している。


 椿が新右衛門を運び込み、布団に寝かせると、老人は新右衛門の診察を始めた。


「先生、新右衛門は大丈夫なの?」


 椿は心配して、老人を覗き込むように新右衛門の容態を尋ねる。


「ああ、大丈夫だ。こんなの稽古ではよくある。1日寝れば、熱も退いて回復する」


 そう言って老人は椿に笑みを浮かべると、椿には鬼道丸のところに戻るように促す。


「先生、よろしくお願いします!」

「ああ、気をつけて帰りなさい」


 老人は椿を帰すと、寝ている新右衛門の看病をする。


 翌朝になり、新右衛門は目を覚ます。


「目を覚ましたか、大したことなくてよかったな」

「ありがとうございます。体は少し痛いが、動ける」


 新右衛門は布団から起き上がり、自分の体を触り、思った以上に軽傷であったことに気づく。


「鬼道丸はしっかり急所を外しているからな……」


 老人は囲炉裏の近くで鍋に火をかけながら新右衛門に微笑む。


「あなたは私の国の侍のようだが、名は何と言われるのですか? 俺は鐘巻新右衛門と言います!」

 

 新右衛門は老人が鬼道丸同様に同郷の人間と同じような格好をしているのを見て、何者なのか気になった。


「私は塚原卜伝つかはらぼくでんという名だ。奇遇にも若い頃はあんたと同じで新右衛門と名乗っていた」


塚原卜伝つかはらぼくでんだと! 剣聖・上泉信綱かみいずみのぶつなも師事したと言われるあの伝説の剣豪か……)


 新右衛門はこの世界で伝説の剣豪に出会ったことに驚きを隠せなかった……。

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