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鐘巻新右衛門

越前の国……


「新右衛門、大技ばかり使おうとするな! 本当に強い剣士は基本技を丁寧に組み合わせて使うものだ」


 新右衛門に剣術を教えるのは剣豪として名を馳せた佐々木小次郎や伊藤一刀斎の師である鐘巻自斎かねまきじさいである。


 新右衛門は自斎の実の子ではないが、物心がついた頃には自斎と一緒に暮らしていた。


 子のいない自斎は新右衛門を養子として『鐘巻新右衛門』と名乗らせ実の子のように育てた。


 新右衛門は18歳になり、自斎は鐘巻流剣術の免許皆伝を与えるべく最後の試練を与える。


「新右衛門、奥義を伝える前に最後の修行に入ってもらう、この海岸近くにある洞窟に千日間籠り修行をしてもらう。食事は弟子に届けさせる」


「その千日の修行を終えたら『一刀斎』か『小次郎』と戦わせてくれるのか?」


 新右衛門は自斎から奥義を受け継ぎながら、鐘巻流を名乗らず、『一刀流』を名乗る伊藤一刀斎や『巌流』を名乗る佐々木小次郎が好きではなかった。


 特に年老いた自斎に無理やり試合を申し込み、一本勝ちを奪ったと豪語し、それを触れ回り名を高めた伊藤一刀斎のことは許していない。


「新右衛門、小次郎も一刀斎もお前の兄弟子だ。少し口が過ぎるぞ! それにわしは一刀斎に負けたことなど気にしていない。人生など勝ったり負けたりだ」


「しかし、一刀斎は父上に勝ったことを各所で触れ回り今では一刀流を名乗っております!」


「よいか新右衛門、奥義を修得したければ、己の剣を高めること以外は考えるな! 小次郎のことも一刀斎のこともすべて忘れろ!」


 新右衛門は自斎がなぜ一刀斎や小次郎を許せるのか理解できなかった。


 翌日になり、必要な荷物を持って新右衛門は洞窟に千日間籠ることとなる。


 食事と睡眠以外は全て剣の稽古、こうして新右衛門は修行を続け、千日目が近づいたある朝、目覚めると洞窟内ではなく、知らない土地の森の中にいることに気づいた。


「どういうことだ……。 俺は千日の修行で洞窟にいたはずだが……」


 新右衛門は状況が読み込めず、森の中を進むと赤い髪に赤い瞳をした一人の少女に出会った。


「お前は何者だ? 人間ではないのか?」


「そうよ! あなたは人間?」


 新右衛門は言葉が通じる相手とは思っていなかったので、赤い髪の少女を眺めてしばらく茫然としていた。


「なによ、道にでも迷ったの? こんな所にいると私を狙ってる鬼族に殺されるわよ!」


「鬼族だと?」


 新右衛門にも理由はわからなかったが、別の世界に来てしまったことは理解するのであった……。

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