俺たち今日から『ひまわり』です!
立ち入り禁止の会議室には、俺たち四人と見知らぬ大人達。社長もいる。
俺たちはデビュー前の研修生。普段は練習スタジオに出入りしているため、本社にはほぼ来ない。この四人で先輩のバックにつくことが多いから、今回の呼び出しは次のツアー説明かと気軽に考えていたが、何やら物々しい雰囲気だ。皆、難しい顔で座っている。
四人で目配せしながら何が始まるのかと構えていると、おもむろに社長が立ち上がり、他言無用と念を押してから、
「今日から君たちはひまわりです!」
宣言した。
そしてホワイトボードに大きくひまわりの文字を書く。
…はい?何の話?
社長は続ける。
「日向・間宮・和木・陸川の頭文字でひまわりだ。夏デビュー、もちろん明るく元気な曲で。今後は立ち位置をひまわりになるように変える」
え?デビュー?俺たちが?
マジで?いつ?夏っ!ってすぐじゃん、いや、7月?8月?
戸惑っている俺のすぐ横で間宮が両手を上げた。
「やったー!ありがとうございます!四人とも仲いいし一緒で嬉しい!」
「確かに嬉しい。これから僕、ひまわりの日向ですって言うのか…慣れるまで照れるな」
ちょっと待て二人共。デビューは有り難いけど平仮名だぞ?
もう決定なんだろうけど、でも。
俺は試しに声に出してみる。
「ひまわりの、わ…和木、です」
恥ずかしさのあまりどもってしまった。
「へぇ、それいい。り担当の陸川って言おう」
担当?何だそれ?つか、採用すんな。
「担当なら色じゃん!社長、僕たちで決めていいんですか?」
間宮がやたらとやる気だ。
色か…なら俺は青がいい。そこで
「ひまわりって黄色だからメンバーカラーには使わないほうが良くね?」
と、提案してみる。黄色は嫌ですの意味を込めて。
「和木ナイス!グループカラーは黄色に決定だな」
陸川に賛成されてしまった。
はぁ?三人は抵抗感ないのか?
このままだと黄色い半ズボンに麦わら帽子で写真撮影とかさせられるぞ?
俺、クール路線のアイドルになりたかったのに。
そんな結成秘話も今じゃ懐かしいよねー。
と、日向が語る。
ツアー最終日のMC。やっとドームに立てるようになって、ファンに感謝しかない。
当初は元気キャラ全開だった俺たちも今はすっかり落ち着いてきた。
俺はこの数年で
「みんなは俺たちの太陽」
「君が眩しくて目で追ってしまうよ、だって俺はひまわりだから」
なんてウインクしながらファンに投げちゅーしてる。
ひまわりのエロ担当?
上等だ、そんな称号も悪くはない。