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ねぇここに住んでいい?

偶然、大学の友人の螢と牛丼屋にてご飯を食べていたらシロさんとエンカウントした。それによりプチオフ会状態となり、螢と解散した後にシロさんを俺の家に招くことになった。


「どうぞ」


「お邪魔します」


ここで美月唯にとって初めてのイベント、自分の部屋に女性を招くという状態となった。


「綺麗にしてるのね」


「まあ、自分の縄張りは綺麗にしておきたい感じなんで」


「それは分かる」


「物が少ないから綺麗に見えるだけなんですけどね」


「でも大学生ってこんなもんでしょ」


「そうですかね」


「ねぇ」


「何でしょうか」


「泊まって良い?」


「倫理観どこに捨てて来たんですか?」


「そんなの語彙力と共にダンジョンに捨てて来たよ」


「所持品整理しないからそういう事になるんですよ」


「そうなんだよね」


そう言ってシロさんはソファーに座った。


「そういえばロフト付きって言ってたね」


「そうですよ。夏場はエアコン点けても地獄なので、そのソファーで寝てます」


「じゃあ夏の間はここがみーちゃんの寝床?」


「そうですよ」


「じゃあ私もここで寝る」


「羞恥心もどこに捨ててきた」


「それも所持品がいっぱいだから捨てた」


「装備ばかり溢れるようなことしてるから」


「へへへ」


「照れる要素全くないですからね」


何故かここに居座る気満々のようだ。


「みーちゃんのキャラ見ていい?」


「良いですけど、パソコン立ち上げるので少し待ってください。飲み物は何が良いですか?」


「何があるの?」


「コーヒー、紅茶あとは緑茶ですね」


「じゃあ紅茶貰おうかな」


「了解です。今淹れるので待ってくださいね」


俺は飲み物を準備してると・・・


「ねぇみーちゃんのパソコンの検索履歴見ていい?」


「駄目ですね」


「エッチなの見てたの?」


「見てましたー」


「正直ね」


「隠し事はしないので」


「どんなの見てるの?」


「秘密です」


「もうさっき言った事忘れたの?」


「忘れましたね」


「やっぱりみーちゃんはアホの子だー」


「シロさんに言われたくないです」


「ははは、でもさ私とみーちゃんって根本的な所は似てるよね」


「まあそれは俺も感じてましたけど」


俺は基本的に面倒くさがりなのだが、この人も同じなのだ。


GGには戦闘ジョブ以外のもアイテムを制作するジョブや装備の修理をするジョブ、野菜や果物を栽培できるジョブなど多岐にわたる。だがそういったジョブはやろうと思わない限り戦闘ジョブと比べるとレベルが上げづらいのだ。


「レベル上げも大変よね~」


「いやあれは俺たちがやらな過ぎただけですから」


「やっぱりそうだよね」


「というか資格の勉強の方はどうなんですか?」


「やってるよ。夜はゲームしてるけど、働いていた時間は勉強してるよ」


「頑張っているんですね」


「意外でしょ」


「いや、そこは多分やっているんだろうなとは思ってましたよ」


「あれ?意外。みーちゃんの事だから私の事をアホだと思ってるのかと」


「アホの子だとは思ってますけど、やる時はやると知っていますからね。じゃなかったらエンドコンテンツでヒーラーなんてできませんよ」


「みーちゃんが褒めてくれるなんて珍しい」


「激レアですよ」


「そっか~」


そうしている内にパソコンも立ち上がったのでGGのログインをした。


「こういう環境でゲームしてんだね」


「バイト代で生活費を除いた残りでこういった機器を買い集めてましたから」


「家庭教師って儲かるの?」


「そんなにですね。時給は良いけどまとまったお金は入りづらいですから」


「そうなんだ」


「そうなんですよ~」


「あっ、みーちゃんのみーちゃんだ」


「みーちゃんですよ」


シロさんはパソコンの画面を見て、なぜかみーちゃんを操作し始めた。


「よしっ、じゃあレイド戦に行くか!」


「やめてくださいね」


「タンクやってみたかったんだ~」


「いや自分のでやってくださいね」


「だってみーちゃんの見ると面白そうだとは思うのよね。ルア君もタンクは上手いけど、みーちゃんも上手いと思うし」


「ありがとうございます」


「みーちゃんもヒーラーやってみない?」


「責任がなぁ」


「大人になったら責任っていろんな所で背負うことになるよ」


「せめてゲームの中くらい軽くさせてくれ」


社会の厳しさを知ることになった俺であった。


「ふぁぁぁ~」


バタバタ・・・


「シロさんソファーでバタバタしないでください」


「だって気持ちいいんだもん」


「だもんじゃないですよ」


「というかみーちゃんって女の子を家に入れたのって初めてよね?」


「そうですよ」


「なんかそんなに動揺しないんだと思って」


「顔に出ないだけです」


「なるほどね。でもみーちゃんって本当は彼女とか居そうだよね」


「居ないんだよなぁ。仲の良い女子が居ても友達どまりだし」


「ああ~なんか分かるかも」


「分かるのかい」


「でもみーちゃんと居ると面白いから良いんだよね~」


「勘違い系男子だったら今のでイチコロでしたよ」


そう俺は勘違いは絶対にしない。中学の頃に俺の事が好きという噂の女子が居たが、それ以上でもそれ以下もなかった。


「勘違いじゃないよ」


「ほぇ?」


「だから勘違いじゃないよ」


「何を言ってるのかがわからないのですけど」


「全くこれだからみーちゃんは」


「えぇぇ・・・」


これだからと言われるほど落ちぶれちゃいないと思うけど。


「みーちゃんってゲームの出会いからの恋愛って抵抗ある?」


「いや別にないですけど。むしろ趣味が同じって良い事だと思いますけど」


むしろ確実に一緒の時間を共有できるから良い事だと思うが、人それぞれなんだろうな。


「そっか」


「はい」


「じゃあさ私と付き合わない?」


「良いですよ」


「あれ?すんなり受け入れた」


「長考すべきとこでした?」


「いや受け入れたのは嬉しかったけど」


「そうなんですね」


「なんか意外だった」


「こういう事はノリかなって思って」


「私は割と本気だよ。みーちゃんは本気じゃない?」


「いや俺もシロさんと過ごす日々は居心地良いですよ」


その言葉に嘘はない。KOLで過ごした日々は楽しかった。それはもちろんシロさんもルアさんも含めてだ。だけどここで付き合ったらこの関係性は変わるかもしれないとは考えた。ルアさんに迷惑をかけるかもしれないとな。


「ルア君には話さない方が良いかなぁ」


「かもですね」


「申し訳ないけどそうしようか。でもゲーム内のキャラ同士の結婚はしよう」


「良いですよ」


「うん。じゃあやろっか。式はいつにしようか」


「凄いですよね。その言葉だけ聞くと重みを感じますね」


「確かにそうかも」


式はいつにしようかなんて大学生が聞くような言葉じゃないだろ。


「じゃあ何かの記念日だったら面白いかもね。流石にクリスマスとかは多いと思うから、早めにしたいよね」


「今月はもう終わっちゃうから来月になると思いますけど・・・」


「来月は私が忙しいからね・・・」


「受験日とかですよね」


「うん。それが終わったら仕事とかも始まるし」


「大変ですね」


「うん。でも次のパッチはスタートダッシュ決めるからみーちゃんも油断してられないよ」


「分かりました。覚悟しておきます」


「そうしなさい」


その後はだらだらと俺の家で今までよりももっとプライベートな話をした。


正直、自分よりも年上の人と話すとかなり面白いというか興味深い話が聞けるから刺激的だと俺は思っている。


そうしている内に時間が進みもう21時を過ぎていた。


「あぁもうこんな時間か」


「そうですね」


「帰らないとインできないから帰るね」


「はい。そうした方がいいと思いますよ」


そうしてシロさんが帰ろうとした時


「ねぇみーちゃん。出来ればみーちゃんの口から聞きたいな。なんか自然消滅とかなりそうで嫌だから」


シロさんは本気なのだろう。本気で俺に伝えたのだ。俺よりも数年長く生きていたとしてもやはり告白というのはかなり勇気がいる。例え相手が歳下の大学生だとしてもだ。


だから俺はその気持ちに応えなければならない。


「シロさん、俺はあなたの事が好きです。付き合ってください」


「うん、ありがとう。よろしくね唯」


こうして俺とシロさんの関係が一転した。


今までは顔も本名も知らないゲーム内での友達の関係が、恋人となったのだ。


それにしても急な名前呼びは心臓に良くないな・・・








その後、いつものようにメンバーが集まって冒険に出たが・・・


「何にもすることが無いですね」


「そうだね~」


「ね~」


俺達はKOLのギルドハウスでだらだらしていた。


「あれ?ルアさん縮みました?」


「確かに」


「縮んだね~」


「なんか俺のみーちゃんがスゲェ見下ろしてるもん」


「私の子もめっちゃ見下ろしてる」


「いや大人しく種族を変えたって言おうよ。なんで頑なに避けてくの?」


「いやぁ縮めたのかなって」


「ねー」


「流石理解者だな」








翌日、俺は講義を終えバイトの準備をしていると・・・


ピーンポーン


「誰だ?ウォーターサーバーのセールスだったら居留守かますぞ」


そう言いつつ、インターホンのカメラを見るとそこには知った顔があった。


「シロさん?」


俺の彼女だった。


ガチャ・・・。


「やっほー。みーちゃん今大丈夫?」


「大丈夫ですけど、どうしたんですか?」


「ちょっと話があるの」


「別れ話ですか?だとしたら早いですね」


「ちょっと入れてもらってもいい?」


「どうぞ」


「じゃあお邪魔します」


そうして家に招き入れた。


シロさんはソファーに腰を掛け驚くべきことを言ってのけた。


「ねぇここに住んでいい?」


同居生活の幕開けだった。

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