ショート劇場「皮膚科の先生」
僕は子供の頃アトピー性皮膚炎だった。
痒くて痒くて、何度も体を掻きむしった。
あまりにも僕が掻きむしるので、お母さんが僕の手に手作りの手袋を付けてくれた。あの時の優しさを僕は忘れない。
僕のアトピーは改善されたけど、僕の様な人を助けるために僕は皮膚科の先生になった。
35歳で童貞の僕だが、今日も今日とて皮膚の悩みを抱えた人を助けよう。
「失礼します。」
「どうぞ。」
診察室に若い女性方が入ってきた。歳にして21〜22歳ぐらいだろうか?眼鏡を掛けていて知的な印象を受ける。美人は苦手だ、この人胸も大きいし、どこを見て話せばいいか分からない。
しかし、頑張らなければならない。目を見て話すんだ僕。
「今日はどういった要件ですか?」
「・・・。」
彼女は喋ろうとせず、顔を俯き顔にしてダンマリを決め込んだ。病状を聞かないと診断のしようもない。
あっ。これは。
「ちょ、ちょっと何処見てるんですか!?」
彼女は胸元を両手で隠して、キッとこちらを睨んできた。確かに僕は胸元を見ていたから、そう言われても仕方ない。
「やっぱり男の先生なんて信じられない!!この病院が良いと言われてたから来たけど、もう帰らせてもらいます!!」
彼女は立ち上がり、病室を立ち去ろうとした。
そんな彼女の右手を僕は掴んだ。
「きゃ!!な、なんですか!?人を呼びますよ!!」
彼女は今にも叫び声を上げそうだったが、僕はそんなことはどうでも良かった。
「大丈夫ですか?胸のところ痒いですよね。」
彼女はハッとした顔をした後に、椅子に座り直し、下を向いてポロポロと涙をこぼし始めた。
彼女の胸元には赤い湿疹が出来ており、それが痒くて堪らないことが、僕には手に取る様に分かった。
「ここだけじゃなくて谷間の所にビッシリ湿疹が出来てて、何をしてる時も痒くて痒くて・・・勉強も集中出来ないし、イライラして友達にも当たり散らしちゃうし、ここと違う病院にも行ったけど一向に良くならないし、もう私どうしたらいいのか分からなくて・・・。」
涙ながらに語る彼女を見て、胸が締め付けられる想いだった。
彼女の症状は、おそらく汗疹だが、汗疹といえども馬鹿に出来ない。程度は個人差があり、悩んでいる人は多い。
「辛かったですね。でも安心して下さい。僕が全力で症状が改善するように努めますので。必ず良くなります。」
「ほ、本当ですか?」
「はい、何せ専門家ですから、大船に乗ったつもりで居てください。」
僕は彼女が安心出来るように、ドーンと胸を叩いて、大丈夫アピールしたが、あまりに強く叩きすぎてゴホゴホ!!と咳き込んでしまった。これではあまりに頼りない。
「クスッ♪宜しくお願いしますね♪」
・・・何故か彼女は笑ってくれたから良しとするか。
皆さんも皮膚のお悩みがあるなら当院を訪ねて下さい。私が全力で対応させて頂きます。