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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
98/163

No97

さて、物語の時計の針を少し進めて今は二月。そう大学受験の季節です。やる事は全てやったしあとは全力で当たって砕けるのみ。……いや、砕けたら駄目か。あれだ、人事を尽くして天命を待つってやつよ。

という訳で受験当日の今日は朝から電車の運行状況や持ち物のチェックをして、身だしなみを整えた上でいざ出陣です。母さんと葵からは玄関で『頑張ってね』、『兄さん、応援しています』と言われて送り出されたので気合も十分。受験する大学は家から四十分程かかるので少し大変。もっと近場にもあるんだけど、希望の学部がなかったり、男性対応じゃなかったりで断念。まあ、前世では通勤に片道一時間弱費やしていたのでそれと比べれば楽だよね。通学経路としても一:駅まで徒歩 二:電車で四駅 三:大学まで徒歩 といった感じなので移動は非常に楽でバスや電車の乗り換えもないので有難い限りです。緊張しつつも大学まで無事移動して思った事は一つ。人が多い。受験生はもとより警備の人員も相当数いてなにやら物々しい雰囲気を漂わせている。普通は警備員なんていても数人だし、受験生だって満員電車もかくやという程いるわけじゃない。これらの点を踏まえて考えると明らかに異常。どこぞの有名人かお金持ちの子供でも来るんなら警備員の数が多いのは分かるが、受験者数については説明できない。……まあ俺が考えても詮無きことか。さっさと思考を放棄して案内に従い他の受験者とは違うルートを通って受付までいくと受験票を渡し、確認後移動開始。いよいよ始まるぜ!と気合を入れていたんだが通されたのは誰もいない個室。えっ?なぜに個室に通されるの?まさか受験会場がここって訳はないよね?様々な疑問が浮かぶ中ここまで案内してくれた人が説明してくれた。

「面接は二十分後に開始します。それまではここでお待ちください。また、トイレなどに行く際には係りの者に一言かけて下さい」

「分かりました。……あの俺以外に受験者はいないんですか?」

「おりません。男性で受験する方は甲野さん一人です。また、会場に関しても他の受験者と同じ会場にするとパニックが起こる為特別にこの様な形で行う事になりました」

「なるほど。ありがとうございます」

「いえ。ではこれで失礼します」

確かに言われてみれば当たり前の事だよな。俺が居る事で混乱して本来の実力が発揮できずに不合格になったらどう責任を取ればいいのやらってなるし、申し訳ない。とはいえ、シーンと静まり返った空間にポツンと一人でいるのは結構辛いんだよ。だれか話し相手でもいればいいんだけどね。はぁ、こうなりゃ無になって時間を消費しよう。まさに悟りを開くが如く、明鏡止水の境地へと行くのだ。



another view point


「皆さんお集りですね。では会議を始めます」

進行役の一声で場に居た全員が居住まいを正し、耳を傾ける。

「当校の受験が明日に迫りました。当日は多少の混乱が見込まれる為皆さん注意してください。また、例年よりも受験者が多く、特に経済学部に関しては去年比五倍の増加となっています。担当の教員には大きな負担を掛けますがよろしくお願いします」

「分かりました。それで、甲野さんについてなのですが、対応は予定通りで問題ありませんか?」

「問題ありません。ですが、絶対に他の受験者と顔を合わせる事が無いよう徹底して下さい」

「その点に関しては送付した案内にも別ルートで移動するよう記載していますし、警備も万全の体制となっていますので問題ないかと思います」

「分かりました。受験が終わるまでは大丈夫ですが、問題はその後ですね。もし構内を散策などしたら混乱は必至です。もしそのような要望があった場合は教員、警備員が周りを固めて移動する事になると伝えて下さい」

「はい。それと、甲野さんから何かしらの要望があった場合は可能な限り対応するという事で間違いありませんか?」

「はい。もしここで対応を誤ってしまうと最悪他校へ入学する可能性があります。それだけは何としても阻止しなければいけません。よほどの無理難題以外は対応して下さい。それと絶対に雑な対応はしないで下さい。言葉遣いも学生に対するフランクなものではなく敬語を使って下さい。そういった些細な事が致命傷になる事があるので」

「分かりました」

「明日は当校にとって最も大事な一日になります。各々全力で仕事をして下さい」

「はい」


another view pointEND



まさかこんな事があったとは露知らず、俺はひたすらに無の境地へと落ちていた。いやさ、やけに対応が丁寧だなとか校門以外で他の人と顔を合わせないなとか思っていたんだよ。でもさ、それよりも緊張が勝って頭の片隅へ追いやってたんだよね。まあ、今更の話だけど。で、暫く無我の境地ごっこをやっていると扉がノックされて先程案内してくれた人が登場。

「では面接会場へご案内します」

「はい」

いよいよか。頑張るぜ!


今俺の目の前にいるのは四人の女性。

一人目は老齢の眼光鋭い女性 二人目は柔和な笑みを浮かべつつもじっと観察するような目をしている女性 三人目は大人の色香を振りまきつつ品定めをするような目を向けてくる女性 四人目は二十代後半くらいの見た目の女性。

この人たちが面接官か。どの人も一癖も二癖もありそうだ。こりゃかなり厳しいかもな……。

「では面接を始めます」

「宜しくお願い致します」

挨拶を交わし始まった面接は……至って普通だった。ありきたりの質問ばかりで返答も事前に考えていたことを言うだけ。思わずこんなもんか?と拍子抜けするほど普通だった。面子的に相当突っ込んだ質問や、嫌らしい事を言われると思っていたのに。だが、それは俺の考え違いだったという事が最後の質問で明らかになる。

「では最後の質問です。正直男性が大学に入学するメリットはありません。それこそ誰かと結婚して悠々自適に生活した方が良いはずです。なのになぜ当校を受験したのですか?」

老齢の女性からの鋭い質問に同じ面接官の人が目を剝いている。自分の学校に来るメリットは無いとハッキリ言ってしまったのだから当然だろう。確かにこの人が言った通り適当に結婚すれば好き勝手できる生活を送れるだろう。でも俺は……。

「私には夢があります。それは大好きな人と将来結婚して自分のお店を持つ事です。その為に経済学を学ぶ必要があった為受験しました。確かに言われた通り誰かと結婚して悠々自適に生活する事も出来ます。ですが、そこに幸せはありません。誰かの為でなく自分の為に、夢の為に貴学で学びたいと思いました」

「そうですか。嫌らしい質問をしてごめんなさいね」

老齢の女性はそういいながら優しい笑みを浮かべた。なるほど。本当に聞きたかったのはこれだったのか。今までの質問にも勿論意味はあるが、もっとも大事な事は今のやり取りだったという訳ね。

「それではこれで面接を終了致します。合否につきましては学校に通知を送りますので確認して下さい」

「はい。ありがとうございました」

なんとか無事に面接も終わり後は帰るだけ。なんだけど折角来たのだし少し散策してみるとしよう。早速行動開始……と行きたかったが案内の人に声を掛けられてしまった。

「甲野さん。これからお帰りになられるのですか?」

「いえ。少し構内を散策しようと思っています」

「そうですか。他の受験生や生徒もおりますので、案内兼警護として数人付けさせてもらいますがよろしいですか?」

「はい、構いません」

「それでは担当の者を呼んできますので少々お待ち下さい」

まさかの警護対象になるとは。勿論断っても良かったけどなにかトラブルがあった後では遅いからね。それに折角の厚意を無下にするのも申し訳ないしさ。して、待つ事数分で担当者と警備員が目の前に来た。

「それではご案内させて頂きます。どこか行きたい場所などはありますか?」

「そうですね。では最近建てられた茶室に行ってみたいです」

「畏まりました」

こうして散策がスタートしたわけだが、まあ目立つ事目立つ事。周りを警備員と教員が固めていたらそらそうだよな。ヒソヒソと話し声が聞こえたり、ビックリした顔をしていたりと反応は似たり寄ったりだけど悪口やなんでここに男がいるの?みたいなのは無いからホッとしたよ。でも合格したらほぼ毎日通うつもりだし今からある程度慣れてもらわないと困るのも確か。高校とは在籍人数も桁違いだし最初の一年くらいは覚悟しておいた方がいいのかもな。


かれこれ一時間程お散歩したところで終了。そのまま家まで帰ってきました。時間は十四時くらいで母さんも仕事、葵も学校で家には一人きり。ふぅー、家に帰ってきた安心からかドッと疲れが出てきた。短い時間でも精神的にかなり疲れたからな。肉体的には全然余裕なんだけどさ。あ~、そう言えばお昼食ってなかったな。どうしよう?コンビニ……は行くの面倒。出前もなんか違うし、作るか?いや、勝手に冷蔵庫の食材を使ったら怒られそうだし止めとくか。う~ん、ここはアリスさんを見習って面倒だから我慢しよう。食欲なんて無視すればいいし、あと数時間もすれば夕飯なんだ。よっし、それでいこうか。


が、どうやら俺には無理だったらしく居間で『腹減った~』と言いながら床を転げまわっている姿を葵に見られて溜息を吐かれてしまいました。

「もう!そんなに我慢しないでなにか食べればよかったのに」

「うっ……、ごめん」

「はぁ。すぐに食べられる物を作りますから待っていて下さいね」

「葵!ありがとう。神はここにいた」

「大袈裟ですよ。夕飯も近いので量は少なめでいいですか?」

「おう」

こうして葵神がご降臨なされて私めに食事を用意して下さいました。ありがたや~。

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