No90
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学校の授業と言うのは結構退屈だったりするもので、どうしても集中できなくて窓から外を見るとグラウンドで運動をしている生徒が目に入った。体操服の色から言って三年生だろう。……そういえば兄さんのクラスは今日体育の授業があるはず。何時間目にあるのかは分からないが、なんとなく兄さんが居そうな気がする。妹の勘とでもいうべきかこう……分かるんだ。予感に従い観察していると見つける事が出来た。真剣な表情で走高跳びしている姿は格好良いの一言。流れる汗を拭う姿、全力で走り高く飛び上がる姿等どれを取っても格好良い。授業そっちのけでじーっと見ているとなんと兄さんがこっちを向いて手を振ってくれたのだ。結構距離があるので普通では気付かないはず。なのにこうして手を振っているのは愛のなせる業!胸元で小さく手を振って答えていると、隣の席の子がとんでもない事をのたまいだした。
「悠先輩から手を振ってもらっちゃった~。もう最高」
この子は何を言っているのだろう?兄さんは私に手を振ったんですよ。
「はぁ~、ホントにイケメンで優しいし女子とも気さくに接してくれるし、悠先輩と兄妹の葵が羨ましいよ」
「兄さんが格好良いのは当然ですし、私も兄さんと兄妹なのは誇りですよ」
「だよねー。あっ、こっちを見ながらピースしてる」
「試技が成功したみたいですね。ふふっ、可愛い」
「こら。あなた達今は授業中ですよ。気になるのも分かりますが、授業に集中して下さい」
小声で喋っていたがどうやら先生に気付かれたみたいで近寄ってきて注意されてしまいました。
「「すみませんでした」」
「はい。次からは気を付けるように」
そう言いながらもチラチラと兄さんが居る方を見ている先生になんとも言えない気持ちになる。兄さんは学校のアイドルであり、誰からも慕われて人気がある人。それは先生達も例外ではなく何かにつけて話をしようとしたり、構ったりするのだ。妹として誇りに思う一方で一緒に居れる時間が減るので寂しくもある。お昼まではまだ時間がある。兄さんに早く会いたいという気持ちが膨らむが今は授業に集中しよう。
another view pointEND
お昼になり結衣、楓と共に二年生の教室へ行くとあちらこちらから声を掛けられる。挨拶だったり、ちょっとした話だったりと様々。でもお昼時間も限られているので軽く言葉を交わすだけになってしまうが、嬉しそうにしてるから問題は無い……と思う。一段落した所で近くにいた生徒に声を掛け葵と優ちゃんを呼んでもらうとすぐに二人がこちらに来てくれた。
「兄さん、お待たせしました」
「悠先輩、こんにちは」
「こんにちは。じゃあ食堂に行こうか」
「「はい」」
五人でゾロゾロと廊下を歩いていると、羨ましそうな視線が至る所から飛んでくる。二年生とは割と仲が良いが一緒に昼飯を食ったり、こうして並んで歩くことは無い。だからと言って一緒にどう?なんて誘えば私も、私もとなり収拾がつかなくなるので口が裂けても言えない。まあ、同級生やクラスメイトは別だけどね。二年以上一緒に居れば色々と線引きも出来ているし、ルールみたいなものも出来上がっているので問題になる事は無いからね。
そうこうして食堂に着いたわけだが、今日のお昼は麻婆豆腐定食にしよう。飲み物は烏龍茶一択。食券をカウンターで渡した後待つ事暫し。出来上がった料理を持って席へと移動してみんな揃った所でいただきますという所で邪魔が入ってしまう。
「あの、ご一緒させて頂いても良いですか?」
「えっと、他にも席は空いているんだけど……」
「先輩と一緒に食べたいと思いまして。ご一緒してもいいですか?」
この子めっちゃ押しが強いんだけど。どうしよう?と他の面々を見ると葵が口を開いた。
「申し訳ないんですが、一緒にお昼を食べるのはご遠慮して頂けませんか」
「なんでですか?」
「一応暗黙の了解でお昼は大体決まったメンバーで食べているんです。なので申し訳ありませんがご遠慮願います」
「じゃあ、今回は特例ということでOKにしましょうよ」
「一つ特例を作ればなし崩し的に私も、私もとなるので認められません」
「むぅー。どうしても駄目なんですか?」
「はい」
「先輩も同じですか?」
俺の方を見ながら聞いてくる一年生。こればっかりは俺も同じ意見だしハッキリと言うか。
「同じだよ。悪いと思うけど受け入れてくれないかな」
「……先輩がそう言うんなら分かりました」
はぁ、最近はこういった事が減ったと思ったのになぁ。いい加減気が滅入るよ。
「ハル君大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だよ。よし、冷めない内にご飯を食べよう」
「うん」
そして飯を食い始めたんだが、なんとも言えない空気が漂っている。いつもは楽しく会話しているが、二言三言話すだけ。なんとかしたいけど、盛り上がる話題も無いしどうしたもんか。…………頭を捻った末思いついたのが学校健診についてだ。他に話題が無かったのか?と言われるかもしれないが、無かったんだよ。俺のボキャブラリーではこれが限界なんだ……。
「あのさ、この前の学校健診どうだった?」
「ふっふっふー。よくぞ聞いてくれました。なんと身長が一センチ伸びました!」
「おぉ~、マジか。そりゃめでたいな。おめでとう結衣」
「ありがとう!成長期も終わっているし諦めていたんだけど、望みを捨てなくてよかった~」
「私は去年と変わらずかな。身長も体重も胸囲も変化なし……。胸囲も……」
「その……、なんていうか元気出して?」
「うぅ、励ましが辛い」
「楓は今のままが一番可愛いから問題ないよ。胸だって十分だと思うよ」
「あと一カップ上げたかったの。毎日お風呂でマッサージしたり、牛乳を飲んだりしていたのに」
「ちなみに今のカップは如何ほどで?」
「Cです」
「結衣はどのくらいあるの?」
「Fだよ」
「おぉ、ご立派な物をお持ちで」
「自慢のおっぱいだよ!」
「三カップ差……だと……。私と結衣の何が違うんだろう?どうしてここまで胸囲の格差がついてしまったのか」
「楓、楓。胸の大小は人それぞれだしあまり気にしない方がいいよ。それこそ持って生まれたものだしさ」
「うん。ありがとう」
「葵はどうだった?」
「身長が二センチ伸びで、胸囲は半カップ大きくなりました。でも、少しだけ体重が増えてしまって」
「うむうむ。しっかり成長しているようで兄として嬉しい限りだよ。あと太った様には見えないけどな」
「五百グラム程増加しました。なのでギリギリ分からない範囲かもしれませんね」
「五百グラムって誤差じゃん。んなの気にする事無いよ」
「兄さん、女子にとって少しでも体重が増えるのは大問題なんですよ」
葵の言葉に一斉に頷く一同。優ちゃんもコクコクと頷いているのでもしかして俺の感覚がおかしいのか?でもたった数百グラムでどうこうなるわけでも無し、気にする事無いと思うんだけど。
「男性にはあまり分からないかもしれないけど、女性同士だと色々あるんだよ~。ほんの僅かな変化でも目ざとく見つけてチクチク言ってくるからね」
「うんうん。特に体型に関してはかなり敏感だよね。ミニスカートだし、制服もタイトだから目立つし」
「そうなんだ。でもクラスメイトとか知り合いが太ったなぁ~って思った事は一度も無いけどな」
「それはみんな気を付けているからだよ。増えたとしても少しだけだし、すぐに元に戻すからね。それに太い足でミニスカートを履いて、制服がパンパンになった子とか見ると何とも言えない気持ちにならない?」
「それは……、うん」
「でしょ。あくまで例え話だけどその子を男性が選ぶかといえばまず間違いなく選ばないよね。土俵にも上がっていない状態なんだから。それに自己管理も出来ていないというレッテルを貼られて、肩身の狭い思いもするし」
「確かにな。病気とか、遺伝的な問題でどうしようもない等を除けば結衣の言った通りだわ。しっかし女性も色々大変なんだな」
「ほんとだよ~。同性だからキツイ事も言ってくるし、ネチネチ攻撃したり陰湿だし、相当上手く立ち回らないと厄介な事になるし面倒だよ」
「うわ~、それは……、聞かなきゃよかった」
「でもそういった面もあるって事だよ」
「なるほどなぁ。まてよ……、じゃあ男の娘だったらどうなるの?そこら辺の事情が変わったりするのかな?」
「う~ん、僕としてはそういったものは感じた事は無いですが」
「ふむぅ。男であり女でもあるわけだから、対応も変わるって事か?男性の良さ、女性の良さを併せ持っているから嫉妬や、妬み嫉みといった感情も抱きずらいとかかな」
「それもあると思いますが優さんが問答無用で可愛いっていうのもあるかと。色白の肌、スラリとした手足、色素の薄い髪の毛でまるでお人形さんみたいだし」
「うむ。その点に関しては葵と同意見だ。現実離れした可愛さだからなぁ。俺と同じ性別とは思えないし……、まあ可愛いは正義だからそんな女同士のいざこざに巻き込まれてないのかもね」
「悠先輩……、超理論で纏めましたね」
「いや、これは俺の本心だよ。可愛いは正義!異論は一切認めない!」
声を大にして言った俺に対して呆れたような、可哀想な人を見るような目を向けられたが間違った事は言っていないので挫けないぞ。例え心で泣いていたとしても……。




