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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
89/163

No88

「オープンキャンパス?」

「うん。良かったら一緒に行かない?」

「楓は受験する大学って決めてたよね?」

「うん。ハル君と同じ大学だよ」

「なら他の所を見る必要無くない?」

「そうなんだけど、オープンキャンパスって今しか体験できないし記念と言うか後学の為というかそんな感じで行ってみたいなって思って」

「そう言う事か。うん、良いよ。一緒に行こう」

「やった!じゃあ結衣も誘って三人でしょ。他にも誰か誘う?」

「そうだなぁ……。一応声を掛けてみようか」

「分かったよ。私の方から聞いてみる?」

「いや、俺から聞いてみるよ」

「じゃあ、お願いします」

こうしてひょんな事からオープンキャンパスに行く事になりました。誘う人は葵、優ちゃん、真白さん、柚子って所かな。先生やバイト先の人は大学とか関係ないし今回はお誘いは無し。という訳で誘ってみた際の反応は下記の通りだ。


「葵。今度オープンキャンパスに行くんだけど一緒に行かないか?」

「あれ?兄さんは受験する大学ってもう決まってましたよね?滑り止めの選定で行くんですか?」

「うんにゃ。話の流れでお試しで行ってみないってなってさ」

「そうですか。兄さんが行くなら私も行きます」

「じゃあ、葵は参加ね。優ちゃんはどうかな?」

「う~ん……。行ってみたいんですが、大丈夫でしょうか?」

「えっと、大丈夫とは?」

「僕みたいな女装した男が行っても問題ないのかな?って思って」

「問題なし!仮に何か言われても俺が矢面に立つから安心して」

「悠さん。ありがとうございます。それなら僕も参加します」

「OK」


「真白さん、今度オープンキャンパスに行くんですけど一緒に行きませんか?」

「お誘いありがとうございます。実は私もどこかのタイミングで行きたいと思っていたんです。ご一緒させて頂いても宜しいですか?」

「もちろんです。そう言えば真白さんは神学部のある大学を受験するって言ってましたけど、他の大学にも興味あったんですか?」

「興味と言うか、せっかくの機会なので体験したいなと思っていたんです」

「そうだったんですね。よっし、真白さんも参加っと。じゃあ日取りが決まったら連絡しますね」

「お願い致します」


「今度オープンキャンパスに行くんだけど柚子も一緒に行かない?」

「それは付き添いって事?」

「う~ん、そう言われればその通りなんだけど、今度みんなで行こうって話になってさ現役大学生がいるとなにかと参考になる意見が聞けそうかなと思って」

「そっか。構わないわよ。でも、高校生じゃないから保護者みたいな立ち位置になると思うけどいい?」

「無問題。柚子も参加っと。詳しい予定が決まったら連絡するね」

「お願い」


こうして全員参加と相成りました。予定としては土曜日に一校、日曜日に一校訪れる事にしました。参加の際は制服着用とか聞きたい事は事前に用意するとか色々あるけど、兎に角楽しみだ。


全員のスケジュール調整や、担任への報告等々予想外にやる事が多くて大変だったが無事全てが終わり今日と言う日を迎える事が出来ました。して今から葵と共に家を出て待ち合わせ場所へ行きます。俺達が着いた時には他の面々は揃っていたので早速今回お世話になる大学へGO。


最寄り駅まで電車で行き、そこから徒歩二十分程で件の大学に辿り着きました。事前に受け取っていたパンフレットに記載されていた場所へ行くと沢山の人、人、人。前世も含めてオープンキャンパスに行った事は無いので普通がどれくらいなのか分からないがこんなものなのかな?やけに多い気もするけど。

「これは……人が多いね」

「だよね。なんでこんなに人いるんだろ?」

「う~ん……。人気校という訳でも無いし、珍しいイベントや体験学習も無し。となると……」

そう言いながら俺の方を向く柚子。んん?俺に関係あるのか?

「俺の顔に何かついてる?」

「ううん。そうじゃなくて、消去法的に考えて悠君がいるからだろうね」

「俺がいるから?」

「そっ。どこかから今日悠君がここに来るという情報が漏れて、これだけの人が来たんだと思う」

「マジで?みんな暇なのかな?」

「ふふっ。暇と言うより悠君を見たい、一緒の空間に居たいって感じじゃないかな。それにこの大学を受験する可能性もあるから下見も兼ねてとかね」

「俺他の大学を受験するんですけど……」

「その情報は機密扱いだからそこまでは漏れていないんじゃない。とは言っても人の口に戸は立てられぬという諺もあるし遅かれ早かれバレると思うけどね」

「俺の個人情報駄々洩れかよ……。個人情報保護法はどこいった」

「こればっかりは諦めるしかないよ。特に悠君みたいな特異な人だと尚更ね」

「はぁ~」

柚子から(もたら)された驚愕の事実。以前から感じていたが俺にプライバシーというものは無いのか。芸能人とか有名人なら納得も出来るけど、一般男子学生だぞ俺。心で泣いていると今回案内を担当する人が来て、簡単な説明を受けた後案内開始です。


まずは校内案内。と言っても大学なんてどこも似たり寄ったりで特にこれといった物があるわけでも無い。教室棟、研究棟、交流施設、運動施設と極々一般的な構成で思わずこれ必要?なんて思ってしまう。言葉は悪いがつまらない時間が流れていくなか不意に一つの建物が目に留まった。年季を感じさせる外観、風に揺れる竹林、綺麗に整備された庭。それはまさに古き日本の姿。思わず足を止めてしまった俺に葵から声がかかる。

「兄さん、どうかしましたか?」

「あぁ、あの建物を見ていたんだ」

「随分と古いですね。ですが、確りと手入れされていますし、歴史を感じますね」

「だろ。俺ああいった建物が大好きなんだよ。昼は縁側でお茶を飲みながら庭を眺めて、夜は竹林を通り抜ける風に揺れる葉擦れの音を聞きつつ夜空を眺めたりね。あぁ~もうマジで最高!」

「良いですね。そんな穏やかな日常は私も憧れます」

「だよな」

そんな俺達兄妹の声が聞こえたのか、案内の人が足を止め説明をしてくれた。建物は江戸時代の物らしく幾度も修繕をしながら保存しているらしい。非常に歴史的価値がある建物だが、学生であれば申請をすれば使用できるみたい。が、場所が場所なのと来た所でやる事が無いので利用者はほぼ皆無との事。最近では利用者もいないしどこかの博物館にでも寄贈して、空いた土地に建物を建ててはどうかという話も出てきているらしい。話を聞いて全く最近の若者は侘び寂びも知らんのか!と一喝したくなったよ。なぜこんなにも素晴らしい場所があるのに誰も使わないのか?お前ら本当に日本人か?床に座って目を瞑り悠久の歴史を肌で感じるとか、静寂の中竹林を歩き心の調和を取るとか色々あるだろう。全くもって嘆かわしい!お前はどこぞの老害ジジイか!って突っ込みたい人もいるだろうが、こればっかりは譲れない。あ~、出来れば俺が受験する大学にもこういった施設があればなぁ……。そんな思いを抱くが無い物ねだりは良くないな。若干の寂しさを抱きつつ校内案内は続く。


一通り案内が終わった後は在校生との交流会だ。といっても学校生活や、授業内容、高校とは違う点等を話すといった感じだが。して、開始早々俺達……もとい俺の前には沢山の在校生の列が。待て待て。他の人が手持ち無沙汰気味に佇んでいるじゃないか。話なんて二、三人から聞ければ良いんだし一先ずこの状況をどうにかしなければ。

「どうしよう?俺から何か言うのも変だし」

「そうですね。先生に私の方から伝えますか?」

「それだと真白さんに迷惑が掛からない?あの女余計な事をって」

「大丈夫ですよ。悠様の為ですから」

「それじゃあ、私達も一緒に行くよ。みんなで行けば誰か一人がヘイトを買う事もないでしょ」

「結衣!ナイスアイデア。よし、それでいこう」

結衣の案を採用してみんなで伝えた所事なきを得ました。が、話をする数名以外の選ばれなかった女子の悔しそうな顔と言ったらもう……ね。半面選ばれた女子の嬉しそうな、かつドヤ顔は凄かったです。世の中弱肉強食。敗者は大人しく去るのみという無情な世界を垣間見てしまったぜ。で、色々話したんだけど、意外と有意義な情報を聞くことが出来た。一応自分で情報を集めたり、前世の記憶だったり、柚子から話を聞いたりしていたんだけど知らない事や新たな発見、成程と手を打つ話もあって今回のオープンキャンパスで一番の成果と言えるだろう。その後は学食でご飯を食べた後教室で簡単な質疑応答して終了。なんだかんだで色々とあったが、来てよかった。こうして行動してみないと分からない事が多かったし、なにより多角的に情報を得られるのが良い。実際に俺が大学生活を送る上でも大いに役立つ事だろう。最初楓に誘われた時は冷やかし程度に考えていたが、俺にとっても一緒に来た面子にとってもいい刺激になった事だろう。全てが終わり今日の出来事についてワイワイと話し合いながら帰路についた。


これは余談だがどこかからか情報を仕入れた受験予定の大学が純和風の建物と竹林の整備計画を早急に進めていたらしい。噂によると急ピッチで様々な建物の改修や整備をしているみたい。元々男性対応しているのに更に金を掛けるとか恐ろしや。俺としては有難いんだけど、ちょっと申し訳ない気もする。だって俺が卒業したら無用の長物になる可能性が大なんだぜ。う~む……、もし合格出来たら何がしかの形で大学に貢献しなくてはいけないな。報恩謝徳の心を忘れずにいよう。

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