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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
72/163

No71

修学旅行が終わり幾ばくかの月日が流れた訳だが、今回はいつもと違う構成でお届けしようと思う。オムニバス形式でいくつかの出来事をダラダラと書き連ねて見たくなったのでね。まあ、いつもの日常話と思ってもらって構わないよ。では、始めようか。


授業の合間の小休憩時間にある事に気付いてしまった。シャーペンの芯が無くなっていたのだ。購買で買おうかと思ったが行って帰ってきたら授業には間に合わない。クラスメイトから貰うという案もあるが、それをすると全員からどうぞ!と言われるのは目に見えている。その結果手元には大量のシャー芯が……となる。じゃあどうするの?と少し考えた所で葵に分けてもらえばいいという良案が浮かんだためすぐに一年の教室へと向かう事にした。いつもは葵と優ちゃんが二年の教室に来るので、こっちから行くのは何気に初めてだったりする。若干の緊張をしつつ一年の階へと行きAクラスの扉から中を覗いてみようと思っていたんだ。その時は。廊下を歩いていると見られまくりで、コソコソと喋っていたりキャーキャー黄色い悲鳴を上げていたりと気まずい空気の中歩く俺の気持ちが分かるかい?凄い居た堪れないんだよ……。もうさっさと葵に会って退散しようと決意しAクラスに行くとそこでも同じ反応。もういいやと思いつつ葵を探すとこちらに向かって歩いて来ていた。なにも言わなくても通じ合えるって流石兄妹だなと感心しながらまっていると葵が口を開き一言。

「兄さん、どうしたんですか?なにかありましたか?」

「シャーペンの芯が切れてしまってさ。よかったら恵んでくれないかな?」

「分かりました。少し待っていて下さい」

そう言うと自席へと戻って行った。入れ替わりに優ちゃんがやってきて話しかけてきてくれた。

「悠さんが一年の教室に来るなんて珍しいですね」

「だよね。いつもは葵と優ちゃんが俺たちの教室に来るしね」

「はい。なにか用があったんですか?」

「シャーペンの芯が切れたから貰いに来たんだ」

「そうだったんですね。廊下が騒がしかったので何があったんだろうって思っていたんですが、悠さんが原因だったんですね」

「ははは。そのようだね。てかさ、そんなに騒ぐことでもなくないかな?もうすぐ入学して一年近くになるんだし」

「悠さんは有名人ですし、会いたいと思っている子は多いんですよ。でも、見れる機会なんてそうそうないし、二年生の教室まで行く機会も無いですしね」

「そう言う事か。つってもこうして騒がれるのはちょっとな……」

「じゃあ、僕と葵ちゃんの方からみんなに伝えておきますね」

「うん。悪いけどよろしく頼むよ」

「兄さん、お待たせしました。どうぞ」

「ありがと。……てかこれケースに入っているんだけど。二本くらい貰えればそれでいいよ」

「でも途中で落としたり、折れたりする可能性もあるのでケースごと持っていって下さい」

「サンキュな。帰りにコンビニか文房具店に買いに行かなくちゃな」

「私も一緒に行きます」

「僕もいいですか?」

「構わないよ。じゃあ、昇降口で待ち合わせで良い?」

「「はい」」

こうして一年の教室を後にしたんだが、まさかこんな騒ぎになるとは思わなかった。三年生の教室に行った時には普通だったのに。有馬先輩に会いに結構行っているからみんな慣れているのかな?だとしたら、一年の教室にも折を見て行くようにしようかな。とりま、小休憩時間も残り少ないしさっさと戻ろう。



今日もバイトに勤しんでいます。寒くなってきたのでホット系のドリンクがよく売れています。俺もかれこれもうすぐ二年近く働いているので出来る仕事も増えて大変だったりする。そんな中今は店内にお客様が二名ほどしかいない為学校帰りに来店してくれた有馬先輩とお話をしている。

「もうすぐ受験ですけど、どうですか?」

「ボチボチかな。判定ではA判定をもらえているので大丈夫だとは思うけど、何事にも絶対は無いからね」

「確かに。勉強も大事ですけど、最近寒くなって来たし風邪とか引かない様に注意して下さいね」

「ありがとう。寝る時は暖かくしているし、甲野君には申し訳ないけどハイゲージのタイツも履いているし、マスクも常時着用しているから万全だよ」

「完全装備ですね。そこまでしたら万が一にも風邪は引かなそうですね。あと、タイツの件は気にしなくていいですよ。有馬先輩の身体が第一ですから」

「うん。そう言って貰えてホッとしたよ。その代わりといってはなんだけど甲野君と会う時は眼鏡を掛ける様にしているんだ。どうかな?」

眼鏡のツルを触りながら小首を傾げて聞く様は、超可愛いの一言。改めて思うけど有馬先輩の眼鏡は反則だよ。雰囲気が柔らかくなって綺麗と可愛いが同居している風になるんだから無敵ではないだろうか。

「可愛いです。滅茶苦茶似合っていますし、ずっと見ていたいくらいです」

「そ、そう。甲野君さえよかったらずっと見てくれていいんだよ。今だけじゃなく年を取っておばあちゃんになっても私を見ていて欲しいな」

「それって……プロポー「ごめん!今のは無し~!」

神速でインターセプトしてきた。俺でなくても見逃してしまう速度でだ。でも、完全にプロポーズの言葉だったよな。あれか?逆プロポーズってやつか?勿論言われて悪い気はしない、どころか嬉しい。美人で優しくて、セクシーで頭も良くて完璧超人の有馬先輩にそんな事を言われて嬉しくないはずない。だけど、今はその気持ちには答える事は出来ない。俺自身が抱える問題をどうにかしなければ前には進めないんです。だから今はごめんなさい。心の中で謝っていると有馬先輩が気を使ってくれたのか上手い具合に話題を変えてきたのでそれに乗っかる事にした。それからは混みあう時間になるまでお喋りを続けて楽しい時間を過ごしていった。



十一月と言えば何を思うだろうか?年末も近づいてきたなぁとか、冬がもうすぐ訪れるなとかだろうか?俺はクリスマスパーティーの開催に向けて色々と動いている。去年は商店街の皆さんと学校関係者、俺の家族、バイト先の店長とアリスさん、真白さんの面子だったが今年は少し変えようかなと思っている。まずは参加者希望者を募るのが先決という事で各方面に確認を取った所このような形となった。

母さん・葵・結衣・楓・先生・真白さん・有馬先輩・店長・アリスさん・刑事さん・女医さん・真理さん・優ちゃん・商店街の皆さんとなっている。前回に比べて大人数になっている事に気付いただろうか?年末という事もありかなり忙しい中こうしてパーティーに参加してくれるのは本当にありがたいし、嬉しい。参加確認を取った際に無理はしなくていいですよと言ったんだけど、口を揃えて俺が主催するパーティーに参加しないなんて余程のことが無ければ有り得ないと言ってくれたのは記憶に新しい。本当に感謝です。さて、今回は人数もかなり増えたのでMeteorに全員入れるのかと言う問題が出てくる。店舗自体は然程大きくはないので最悪どこか別の場所を借りなければいけないかな?と思っていたんだけど店長曰く椅子や机を倉庫の方に移せばなんとかなるとの事。前回は隅の方に纏めて置いていたのでそれが無くなれば確かにスペースは広くなる。という事で去年に引き続きMeteorでの開催と相成った。次は料理やお酒、会費等についてだ。前回は会費は取らなかったが、それは商店街の皆さんへの感謝とお礼を兼ねて開催した為である。今回はそう言った趣旨は無い為会費を取る形となっている。大体一人千円くらいに抑えておきたい。正直料理もお酒もバイト先から原価で提供してもらえるし、参加者が手伝ってくれたり持ち込んでくれたりするのでもうちょっと安くても良いのだが、その事を店長に相談すると『あまりに安いと逆に失礼に当たる』と言われたので、諸々を検討した結果一人千円という値段に落ち着いたわけよ。まあ、状況によっては少し値上げするかもしれないけど。あとコスプレは無し。刑事さん・女医さん・真理さんのコスプレを見たい気持ちもあるが、みなさん社会的地位が非常に高い立場なので流石に駄目だろうと思い無しとした。希望者はお好きにどうぞと伝えてはいるが、今回はコスプレ組はいるのかな?まあ、そんな感じで色々と準備をしつつ毎日を過ごしている。しっかしつい最近高二になって後輩が出来たぜ~って思っていたのにもう年末とか時間の流れおかしくないか?光陰矢の如しと言うが……、こう気付けば中年になっていそうな恐怖を感じる。子供の頃は一日が長くて早く大人になりたい!なんて言っていたが、大人になったらあっという間に時が過ぎていく恐怖に囚われてしまう。時間の流れは子供も大人も同一なのに感じ方次第でこうも変わってします。ようは認識次第でどうとでもなるという事なんだけど、言うは(やす)く行うは(かた)し。なんか変な方向に思考が行ってしまったので方向修正をしよう。残り約一月(ひとつき)ちょっとなのでクリスマス以外にイベントも無いし、何がしかの事件や出来事も起きないだろう。そう、この時の俺はこんな呑気な事を考えていたんだ。この世界に来て最大の事件、そして自分自身と深く向き合わなければいけない事態に陥るとは露程にも思わずに……。

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