No70
その後三連チャンで絶叫系アトラクションに乗りました。俺の疲労がMAXなので休憩を提案する事にした。
「あの~、ここらで少し休憩しない?」
「そうですね。私も流石に疲れましたし休みましょうか」
「私はまだまだ余裕だよ~!」
「結衣。自分の事だけじゃなくて他の人の事も考えないと駄目だよ」
「うっ……そうだよね。ごめんねハル君、真白ちゃん。楓ちゃんも教えてくれてありがとう」
「絶叫系はまた最後の方に行こうか。それまではゆったり系のアトラクションで遊ぼう」
「うん」
休憩しようにもカフェは近くには無いし、食事には少し時間が早い。となるとベンチにでも座るかな。飲み物が欲しい所だが自販機が無い。ちょっとお高くなるがジューススタンドで買うしかないか。
「ジューススタンドで適当に飲み物を買ってくるけど、みんなはどうする?」
「それだったら私が買いに行くよ。ハル君は座って待ってて」
「いいの?」
「うん。なにか飲みたい物のリクエストはある?」
「じゃあ、アップルジュースでお願いします」
「了解。他の人はどうする?」
「結衣一人じゃあ全員分持てないから私も一緒に行くよ」
「楓ちゃんありがとう。でも二人じゃあ十一人分は持てないからあと二人位一緒に来てもらっていいかな?」
こうして四人ほどが抜けて飲み物を買いに歩いて行った。後姿を見送りつつベンチに座りぼーとしながら目の前の景色を眺めていると三人組がなにやらこちらを見ながら喋っている。離れているので何を喋っているのかは分からないが、どうも興奮している様子。少し嫌な予感がするなか目で追っているとこちらに向かって歩いてくるではないですか。隣に座っている真白さんや先生、委員長達が警戒の色を露わにする中とうとう目の前まで来たその集団は制服姿。恐らく俺達と同じ修学旅行に来た他校の生徒だろう。コスプレという線も零ではないが……。
「あの、甲野さんですか?」
「えっと……、そうですけどどこかでお会いした事がありましたか?」
「いえ、初めてです」
じゃあなんで俺の事知っているの?一瞬ストーカー事件が頭を過ったが、流石にこんな人が多い場所で凶行には及ばないだろう。なんの目的で近づいてきたのか分からないが警戒度はMAXに引き上げておこう。
「では何か用があって声を掛けたんですか?」
「実はTVで拝見した時からファンで、こうして実物に会えてあまりにも嬉しくて声をかけてしまいました」
「TVってあれか~……。あ~なるほどね。理解した」
以前地元のTV局が放送した学校紹介の番組か。俺のインタビューもあったし、全国的に話題になったから知っている人もいるのか。てかファンって初めてなんだけど。どこぞの芸能人にでもなったようだよ。
「それでですね、もし良かったら握手してもらってもいいですか?」
「構いませんよ」
相手のちゃっちゃい手をギュと握りながら、ニコッと笑顔を浮かべてみた。
「はぅぅ~。あ、ありがとうございます。もう手を一生洗いません」
「いやいや、洗おうよ」
「どうしよう、どうしよう。もう幸せ過ぎて死んじゃいそう」
駄目だ、この子一切こっちの話を聞いちゃいない。まあ嬉しそうだしいいのかな?
「もう一つお願いがあるんですが、一緒に写真を撮ってもらってもいいですか?」
次はツーショットときたか。遠慮が無いというかグイグイくるな。でも、流石にこれはどうだろう?悪用される恐れもあるし、SNSにアップとかされたら変な憶測が立つ恐れもある。俺一人の判断で決めれる事では無いし先生に聞いてみようか。
「少し待ってもらっても良いですか?」
「はい」
ちょっと離れた場所まで移動した後先生に聞いてみた。
「あの、ツーショット写真とか撮っても問題ないですか?」
「学校としては止めて欲しいです。仮にSNSにアップされたら話題になりますし、あらぬ誤解を生むでしょう。それに嫉妬した女性が相手の子になにがしかの危害を加える可能性もあるので」
「分かりました。止めておきます」
「うん。それが最善だと思うよ」
相談が終わったので元の場所まで行きお断りさせてもらった。
「申し訳ないんですが、写真はNGでお願いします」
「そうですか。残念ですが、仕方ないですね」
シュンとなった姿を見て少し心が痛むがこればっかりは仕方ないだろう。こんなやり取りをしている間にジュースを買いに行っていた面々が戻ってきた。現状を見て??って顔をしていたが丁度いいタイミングだろう。ここらで、相手には引いてもらおう。
「申し訳ないんですが、連れが戻ってきたのでこの辺で終わりでいいですか?」
「あっ、そうですね。あの、今日は本当にありがとうございました。最高の思い出になりました」
にこやかにそう言った後去って行った。
「ハル君、今の女の子だれ?」
「なにやら仲良さそうにしていたけど?」
結衣と楓からジト目で質問されてしまった。はぁ~、なんか変な誤解をしているっぽいし説明するか。事情を話すとすんなり納得してくれた。手渡されたジュースを飲みながら、全然休憩出来てねぇとぼやいてしまったのは無理もないだろう。
その後は室内型アトラクションをメインにして遊んだんだが、この国の技術水準の高さを改めて知る事となるとは思わなかったよ。もうね、前世の最新型アトラクションとか子供のお遊びレベル。AR・VRとか現実以上にリアルで、臭いや感触なんかも再現されるというラノベやアニメも真っ青の謎技術を体験しました。女の子たちは特段驚いたりしていなかったので慣れているんだろうな~とか、この先十年、二十年後には冗談抜きで空飛ぶ車とかポータル技術とか完成しそうで少し怖いかも……とか思ったり。あとはみんなの普段見れない一面を見れたのも良かったな。子供みたいにはしゃいだり、お姫様のお城で目をキラキラさせていたり、頭に取り付けるカチューシャ型飾りを付けてハニカミながら似合う?なんて聞いてきたり等々。本当に楽しかった。俺としては他校の生徒をたくさん見れたのが嬉しかったかな。普段は他の都府県の学校の生徒なんて見る機会なんてなかったからね。なかでもセーラー服の学生が居たのには少しビックリした。前世でもブレザーの学校がほとんどでセーラー服なんてあまり見かけなかったし、この世界でもそれは同様……、いや割合で言えば九割ブレザー・一割セーラー服位なので絶滅危惧種と言っても過言では無いだろう。そんな希少な学生を見れたのだから興奮も一入。可愛いなぁ、やっぱ最高だぜ!と思いながらじぃーと見ていると、周りの女性陣から色々と質問が来てしまった。
「悠様はセーラー服がお好きなのですか?」
「正直に言うと大好き。古臭いイメージがあるかもしれないけど、こう……男心をくすぐる魅力があるんだよね」
「なるほど。私は入学する学校を間違えたみたいですね」
「真白さん、学校に掛け合って制服を変更してもらうのはどうでしょう?」
「良い案ですね。生徒会にも協力を仰ぎましょう。金城さんも力を貸して下さい」
「もちろんですわ!!」
「ちょっと待った!なにもそこまでする事はないのでは?てか流石に無理じゃないかな?」
「そんな事はありませんよ。学校に圧力をかければいいだけですので」
「それってやっている事は八九三と同じじゃ……。いや皆まで言うまい。でもさ、真白さんの学校の制服も可愛いし、デザインも凝ってて俺好きだよ」
「本当ですか?」
「もちろん!」
「金城さん。先程の話は無かった事でお願い致します。悠様が好きと仰っているのに変えるなんて言語道断ですので」
「当然ですわ!男性が可愛い、好きと言った物を変えるなんて万死に値しますわ」
手のひらくるっくるだな。でも冗談抜きで真白さん、金城さんは元より通っている学生の親は権力者ばかりだから圧力をかけるとか余裕なんだよな。ちょっとした話題でも気を付けなければ色んな方面に迷惑を掛ける事になるし言葉には気を付けよう。マジで。とこんなやり取りもあったりしつつ、遊んでいるといつの間にか空は茜色に染まっていた。そろそろ時間なので集合場所に戻る事にしましょうか。
集合場所に辿り着いた時には生徒の大多数が待機していた。みんな真面目だなぁ~と思いつつ真白さん達と別れの言葉を交わすとしようか。
「真白さん、金城さん、みなさん。今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそ楽しい時間を過ごせました。ありがとうございます」
「お~ほほほほ!私こそ男性と遊園地で遊ぶという貴重な体験を出来て嬉しいですわ!一日ありがとうございました」
「じゃあ、残りの日程も楽しんでくださいね」
「ありがとうございます。悠様も怪我などに気を付けてお過ごしください」
「うん、ありがとう」
「真白ちゃんまたね~」
「結衣さん、楓さん、谷口先生、皆さんもお元気で」
そう言った後真白さん達は去って行った。さてさて、この後だがバスに乗りホテルに移動。その後は夕飯を食べて風呂に入って寝るだけとなる。まあ昨日と同じだな。なにが起こるわけでもないのでそこら辺は割愛させてもらう。
さて三日目の朝になった訳だが、今日は博物館や美術館、文化遺産等を見て回る予定だ。ハッキリ言ってつまらない。美術や歴史的価値のある物に詳しいわけでも興味があるわけでも無い為苦痛だ。でだ、ここで○○を見て感動した~とか、この○○は非常に貴重でうんたらかんたら~とか書いても仕方ないので三日目はサラッと流す事にする。ぶっちゃけると書くことが何も無いんだよ……。という訳で時計の針を進めて四日目に移ろう。最終日である今日は移動の連続となる。ホテル→空港→地元の空港→バス移動→学校到着という行程になる。移動に関しても最初の方に書いたし、帰りも待遇は同じなため割愛。端折りすぎだろ!とお怒りになるかもしれないが、逆に同じことを延々と書かれたりジュースを飲んだ、お菓子を食った等をダラダラと書かれるよりはマシだと思わないか?いくら日常を描いているからと言ってなんでも書けば良いわけではないのだよ諸君。という事で場面は移り変わり学校到着した所から始めようか。
「はぁ~、やっと戻ってきた~」
「たった四日居なかっただけなのになんだが久しぶりな感じがするね」
「それな。あとホッとするっていうか、安心する。ようやく帰ってこれたって」
「うん。それ分かる」
「結衣とハル君だけでなく私も同じだよ。なんだかんだ、この街が好きだったんだなって思う」
「だな。あ~、飛行機とバスで寝たけどホッとしたからか疲れた」
「明日は休みだからゆっくり過ごしたらいいよ」
「そうなんだけど、色々とやる事があるんだよね」
「大変なんだね。私に手伝えることがあったら言ってね」
「ありがと。なんかあったら結衣と楓に言うね」
「うん」
「分かったよ」
こんな会話をしつつ時間を潰していると、理事長やら校長のありがたいお話が始まってしまった。こっちは疲れているんだから早く帰してくれと思うがお決まりなので我慢するしかない。しばらくしてようやく終わり、先生から説明を受けたあと解散となった。重い荷物を持ちながらなんとか家まで着き玄関ドアを開けるとパタパタと音が近づいてきた。
「兄さん、お帰りなさい」
「ただいま。変わりはなかった?」
「はい。兄さんは怪我や病気にはならなかったですか?なにか問題が起きたりしなかったですか?」
「大丈夫だよ。見ての通り健康そのものだし、問題も起きなかったよ」
「そうですか。よかったです。兄さんが居ない間心配で、寂しくて本当に辛かったです……」
「寂しい思いをさせてごめんな」
そう言いながら葵の頭を優しく撫でてあげる。数日はいつも以上に葵を甘やかしてあげようかな。それが兄としての務めだろうし、可愛い妹を寂しがらせた贖罪でもある。
「お土産もいっぱい買ってきたから母さんが帰ってきたらお披露目するよ」
「わぁ~、それは楽しみです」
こうして三泊四日の修学旅行は幕を閉じた。訳だが少し蛇足を書かせて頂く。まあちょっとした後日談とでも思ってくれればいい。
帰ってきてからの数日は忙しく過ごす事になった。今回お世話になった関係者にお礼とお土産を渡したり、健康診断やメンタル面での検診、バイト先での溜まっていた仕事の処理等々各方面に行ったり来たりをしながら順次処理していった訳だが、兎に角疲れた。旅行の疲れも残ったまま色々やっていたのでしんどかったよ。前世の大型案件に取り掛かっている時くらい疲れた。して週末の今日と明日はずっと寝る。兎に角寝まくるし、一歩も外に出ないでベッドで過ごす!二日限定の引きこもりになるぜ!この事は母さんにも葵にも伝えているので心配される事もないし、思う存分楽しんでやる!!人間としてそれでいいのか?と思わなくも無いがたまにはいいじゃないか。ビバ!引きこもりライフ!!!




