No69
朝スマホのアラームで目を覚ますと、顔を洗い、歯を磨いた後は制服に袖を通して準備完了。あまりにもいつもと変わらない行動に思わず笑いが漏れてしまった。せっかくの修学旅行なんだからなにかハプニングでもあれば面白いんだが、朝七時にそんな事が起こるはずも無く……。腹も減ったので食堂に向かうかな。
みなさんは朝食は食べるだろうか?朝は食欲が湧かなくて食べないという人もいるだろう。もちろん忙しくてそれどころじゃないよ!という多忙極まる人もいると思う。ちなみに俺は前世では食べない派だったがこの世界に来てからは食べている。母さんや葵が作る食事が絶品という事もあるし、中年ならいざ知らずまだ高校生なのでしっかりとした身体を作る為にも食べているんだ。少し自分語りをしてしまったが、今は食堂で飯を食っている。周りを見回してみると、みんなピシッと決めていてパジャマ姿やボサボサの髪の子がいない。普通はそういうやつが何人かいて笑いのネタにされるのが定番なんだけど……おかしいな?俺の目がおかしくなったのかな?そんなしょうも無いことを考えていると隣に座っている結衣から声を掛けられた。
「男子がいるのにだらしない格好をする子は流石にいないよ~」
「えっ?なんで俺の考えていることが分かったの?まさか……エスパーか?」
「ふふふっ。だってハル君考えていることがすぐに顔に出るんだもん」
「マジ?まって、まって。そんなこと言われたの初めてなんだけど」
「あ~……、まあ気にしたら負けって言う言葉もあるし……ね」
「くぅ~、恥ずかしい。こうなりゃポーカーフェイスの練習をするしかねぇな」
「頑張ってね(^_-)-☆」
「気のない応援ありがと。あとさ、別に男が居ても朝なんだし多少だらしなくても問題ないだろ?」
「それはありえないよ。どんな時でも万全の状態を見てもらいたのが女心だし、仮にだよ、ボサボサの髪でヨレヨレの服を着た姿を見られたら私だったら自殺する」
「そこまでなの?楓はどう思う?」
「私も結衣と同じかな。最悪限界まで妥協しても見ず知らずの知らない男性ならギリギリOK……かな。ハル君にそんな姿を見られたら、自殺する」
「…………なんかごめんね。でもさ、個人的にはそう言ったちょっと抜けた姿って言うのも可愛いと思うよ。その人の知らない一面をしれて嬉しいしさ」
「でも、だらしない格好をしているんだよ?それでも可愛いって思うの?」
「思うよ。まあ、知らない人だったらこいつだらしねぇなとしか思わないけど、友人だったり恋人だったらニヤニヤしながらマジ可愛いなぁって思う」
その言葉に結衣と楓だけではなく周りの人達が一斉に黙り込む。なんとも言えない空気が漂う中誰かが口を開きこんな事を言い出した。
「くっ……、こんなことなら少し抜けた感じを演出すればよかった」
「これは全くもって予想できなかった。恋愛指南書にも書かれていなかった事実がここで発覚するとは」「今から少しだらしない感じにしたらいけるかな?」
「もう遅いと思うよ。もう一回セットし直す時間もないし、これは完敗だよ」
いやいや。待てよお前たち。そこまで反応する事じゃないだろ?人によってはそんな姿を見たら冷めるっていう人もいるだろうし十把一絡げに考えてはいけないよ。
「あくまで俺個人の意見だから男性みんながそうだとは限らないからね」
「それは大丈夫だよ。私たちにとってハル君がどう思うかが一番大事だから」
「その通り。他の人がどう思おうが関係なくてハル君が好きか嫌いかが最も重要」
「あ~、まあ分かっているならいいけど」
そう言ってくれて嬉しい反面、少し気持ちが重い……かもしれない。ここはいっちょ飯を食って気分を変えよう。うん、そうしよう。こうしてある意味いつも通り?な食事の時間は過ぎていった。
バスに揺られながら辿り着いた場所は老若女問わず人気の場所だ。老若女?男の文字はどこいった?と思ったあなた!この世界の男はこんな所には来ないんだよ。『人が多く、どこもかしこも女しかいない場所に男が行くわけないだろ』とは真司談だ。電話で話していた時にここに行くって事を言ったらそんな返答が来たんだよね。でも俺は割と好きだったりするよ、こういった施設は。おっと、ここまで引っ張っておいてどこに来たのか言っていなかったね。俺達が今いる場所は遊園地です!規模はネズミの国やユニバーサルなんちゃらより少し大きいくらいだが、施設の充実度や発展具合は比にならない。技術の粋を集めたアトラクションにこれでもかと金を掛けた建物等々挙げればキリが無いほどで、入園料はさぞお高いのでしょう?と思ったあなたに朗報です!なんと、大人一人五千円で一日遊べるのです。これは破格・価格破壊と言っても過言ではないだろう。てか、採算取れるのかよと心配になってしまう程安い。まあ、オプションのファストパスやらなにやらがお高いのでトントンなのかな?知らんけど。バスから降り下らない事を考えている間に先生からのありがたいお話は終わったみたいだ。さて、思う存分遊んでやるぜ!と意気込んでいるとなにやら聞き覚えがある笑い声が響いてきたのでそちらを見ると見知った人達が集まっていた。まさかこんな所で会うとは思ってもみなかったが、せっかくの機会だし声を掛けてみようか。ということで俺の班員と共にそちらへと向かって歩を進める事にした。
「よっす。お久しぶり」
「あら?あらあら、まあまあ!甲野さんじゃありませんか!お元気でしたか?」
「はい。金城さんはどうですか?」
「私も壮健ですわ!ところで甲野さんはなぜここに?」
「修学旅行で来ているんです。金城さん達もそうですよね?」
「その通りですわ!これからみなさんと遊びに行くところでしたのよ。今は真白さん待ちですわ」
「そうなんですね。真白さんはどこかに行っているんですか?」
「先生とお話をしているんです。ですが、もうそろそろ戻ってくるはず……あっ、来ましたわ」
「お待たせして申し訳あ…………悠様?えっ?なぜここにいるんですか?」
「あははは。金城さんと同じこと言ってる。俺達も修学旅行で来ているんですよ」
「そうですか。悠様に会えるなんてなんて幸せなんでしょうか。これで修学旅行が終わっても悔いはありません」
「待ってくださいまし!まだまだ、これからですのよ!気を確かに」
「申し訳ありません。あまりに嬉しくてつい」
「俺としても真白さんや金城さんと会えるなんて思ってもみなかったので嬉しいです。それで、折角なので一緒に遊びませんか?」
「いいんですの?」
「よろしいのでしょうか?」
「構わないよ。みんなはどう?」
「うん、いいよ~」
「OKです」
「教師の立場としてはあまり賛成は出来ないけど、まあ真白さん達なら問題ないだろうし良いわよ」
「よし。ということでそっちはどうかな?」
「問題ありません。ねっ、みんな」
「もちろんですわ~!」
「はい」
こうして真白さん達と奇跡の遭遇を果たした後一緒に遊園地で遊ぶ事になった。総勢十一名という大所帯になってしまったが大丈夫だよな?誰か迷子になったりしないよね?少し不安もあるが、先生もいるし多分大丈夫……ということにしておこう。みんなで一塊になりながら入園するとそこは夢の国。キラッキラしていて、誰も彼もが笑顔で歩いている。一瞬男の俺が居ていい場所なのかと気後れしたが、心が折れてしまえばずっと居た堪れない気持ちで遊ぶ事になる。気を強く持て!さすれば道は開かれん。ガツンと喝を入れて気持ちを立て直した所で、最初にどこに行くか決めていなかった事に気付いた。
「最初はどこにいく?行きたい所があれば教えて」
「室内型のアトラクションは後回しにして屋外型のアトラクションに行かない?」
「ほう。結衣はどこか行きたい場所があるの?」
「ふふふっ、まずはジェットコースターかス〇ラッシュマウ〇テンに行きたい!」
「アクティブだねぇ~」
「結衣は絶叫系が好きだから」
「マジで?それは初耳だわ。楓は絶叫系は大丈夫?」
「私は結衣に何回も連れられて行っていたから慣れちゃった」
「それはご愁傷様です」
「ねぇねぇ、真白ちゃんや金城さんは問題ない?苦手だったら違う所に行くけど」
「私は問題ないです。特に苦手という事もありませんし」
「お~ほほほほ!私に苦手な物なんてございませんわ!どんなものでもどんとこいですわ!」
「じゃあ、最初はジェットコースターから行こうか」
まさか最初のアトラクションが絶叫系になるとは思わなかったが、無問題。ササッと移動すると長蛇の列が。ホログラム映像で『現在の待ち時間一時間』と表示されていた。人気アトラクションは待つのが当然だが、時間が限られている俺達にとって一時間は痛い……と普通はなるんだが、今回真司の母親の真理さんのご厚意で生徒全員にファストパスが配られているのだ。よってあまり待つことなく利用できるんです。さらに、俺には男性用ファストパスがあるのでどんなに混雑していようが最優先で利用できるし、園内の料金がかかる全ての物が無料になるというイカレた特権も付帯しているパスがあるから問題なし。しかも男性の同伴者は同様の権利を得る事が出来るし、同伴者の人数制限も無いから今回みたいな大人数の場合でもオールオーケー。係員にカードを見せると列に並ぶ事なくスイスイと進んでいき、乗車口まで来ることが出来た。早速乗り込んで少し経つとビーという音と共にガタゴトと車両が動き出した。ゆっくりと進んでいき天辺についた後は一気に落下!「キャーーー!!」「ワーーーー!!」「ヒッーーー!!」等の絶叫が響き渡る。俺も漏れなく悲鳴を上げていたんだが、隣からはなぜか笑い声が響いている。そう絶叫系アトラクション好きの結衣だ。それはもう楽しそうに笑みを浮かべている。いやいや、そのリアクション違くね?と思う間もなくグルングルン回転したり落下したりですぐにそんな考えは頭から消え去った。…………ようやっと終点に着いた時には立っているのがやっと。想像していたのの三倍は恐かった。
「楽しかったね~。次はどれにする?」
「なかなか面白かったですわ!次はもっと刺激がある乗り物にしませんこと?」
なんということでしょう、結衣と金城さんが信じられない事をいっている。こいつらアドレナリンジャンキーかよ。少し休ませておくれ……。




