No67
思っていた以上に疲れていたのか、ベッド?みたいなのものが高級品だからだろうかぐっすりと眠っていたみたいだ。今は微睡みに浸っている。このままずっといたいな~なんて寝ぼけた頭で思っているとなにか視線を感じる。結衣か楓が様子を見に来たのだろうか?それなら声を掛けるはずだし、この座席は個室仕様になっているので他人が勝手に入ってくることは無い。駄目だ、寝起きのぼやけた頭ではろくすっぽ考えられない。しょうがないから目を開けて確認しようか。重い瞼をなんとか持ち上げるとそこには驚きの光景が!なんと客室乗務員さんが俺の顔をジッと見ていたのだ!これにはマジでビビってしまい「ヒッ」って変な声が出てしまった。いやさ、これはしょうがなくない?誰でもビビるよね?ビビりながらも取り合えずなにか声を掛けなければと思い定番の言葉を言ってみた。
「おはようございます」
「おはようございます。よくお眠りでしたね」
「あ~、はい。ぐっすり眠れました。あの……、俺の事を見ていたみたいですけどなにかありましたか?」
「特に何かあった訳ではございませんが、あまりに可愛い寝顔だった為つい見入ってしまいました」
「さいですか」
おい~!仕事しないで俺の寝顔を見ているとか職務怠慢だろ。いいのかそれで?なんて思うが口には出さまい。これでも男性対応が出来る客室乗務員さんだしもしかしたら寝顔を見守る事も仕事なのかも……しれないし。それはさておき今何時だ?結構寝てたと思うけどそろそろ着陸するんじゃないかな?そんな思いが顔に出ていたのか客室乗務員さんが答えてくれた。
「あと二十分程で目的地に到着いたします。着陸態勢に入る前に起きなければお客様を起こそうかと思っていましたが杞憂でしたね」
「そうですか。じゃあ丁度良いタイミングで起きたわけか」
「はい。それでは私はこれで失礼致します」
そう言って去って行く姿を見送った後グッと伸びをして固まった身体をほぐしていたら頭も働いてきた。眠気も無くなったし問題ないだろう。到着まではこのままぐでっとして待っていますか。
目的地に無事到着して空港のロビーを出てそのまま駐車場まで歩いていき、バスに乗りまた移動。移動、移動の連続で全く修学旅行という感じがしないがこればっかりは仕方ないだろう。バスに揺られる事一時間程で最初の見学場所に着いた。その名もロボット産業研究施設だ。平たく言うと人間の仕事をロボットに任せる為の研究開発をしている施設となっている。前世でも遠隔操作で機械を操作したり、自動仕分けロボットなどがあるがこの施設で研究しているのは根本的に違う。人間が出来る仕事の六割をロボットに任せるという壮大な目標を掲げているのだ。まさに映画で見るような近未来を実現しようと日夜奮起している場所である。こんな事が出来るのもこの国が経済大国であり、先端技術分野で他の追随を許さない程優れているから可能なのであって他国では不可能と断言できる。そんな凄い場所を見れるという事で俺のテンションは爆上がり!男の子ならそういった未来技術とか大好きだし、格好良いって思うよね。ウッキウキの俺とは対照的に女子はあまり興味なさげにしている。繁華街とかお洒落な場所に行きたかったんだと思うけどまあこれも社会勉強の一つと思って我慢して欲しい。少し説明が長くなってしまったね。話を戻そうか。施設の職員に案内されながら内部を見学していくなかで一番興味を持ったのがアンドロイド技術に関してだ。前世でアンドロイドというと機械丸出しだったり、一見人間っぽく見えるがなんとなく気味が悪かったりした。(不気味の谷現象)だが、ここで開発しているアンドロイドはまさに人間と見分けがつかない。表情や仕草、喋り方等々言われなければ機械とは誰も思わないだろう。イメージとしてはプ〇スティック・メモリーズのア〇ラとかレミ〇センスのアク〇ラとかかな。ア〇セラが可愛すぎてプレイ中何度悶えた事か。あの辛辣だけど、優しさが滲み出ている感じが堪らんのよ。FDも面白かったし最後の終わり方も良かった。あんな可愛いメイドアンドロイドが欲しいと何度思った事か。おっと話が逸れてしまったので戻そう。前述した理由で非常に興味がそそられた俺は色々と質問してみたのでその時の会話をお伝えしよう。
「これは……、本当に人間にしか見えませんね」
「えぇ。不気味の谷現象は完全に超えました。あとはもっと細かい部分で改善や修正が必要ですが、大まかな部分は完成と言っていいでしょう」
「完成までにどれくらいかかるんですか?」
「う~ん…………。十年くらいでしょうか」
「早いんですね。もっとかかると思っていました」
「アンドロイド分野はかなり研究開発が進んでいますし、用途別の仕様に関しても決まっているのでそれぐらいの年数となります。ここまで辿り着くのが長かったんです」
「なるほど。質問なんですがここまで人間と変わりがないと機械か人間かの判断が見た目では出来ないと思うんですが、その点で問題が起きたりはしないのでしょうか?」
「その可能性はもちろん考えています。パッと見で判断できるようにしなければいけないので最初は顔にIDをプリントすればいい、首輪型の機械を装着させる等の案が出ましたが見た目が悪い為全て却下となりました。その後も様々な案が出ましたが、最終的にはホログラム式腕輪の装着を義務付ける事で決定しました。これであれば容易に人間か機械かの判別が可能になります」
「へぇ。確かに腕輪なら見ただけで分かりますし、外見を損なう事も無いですね。男性・女性両方に着用出来ますしね」
「いえ、男性アンドロイドは存在しません」
「えっ?作っていないんですか?」
「技術的には作れます。ですが男性権利や政治、もし製作した場合の問題等が色々とありまして禁止となっています」
「でも、一般普及した際に裏で違法改造して製作したりする業者も現れるんじゃないですか?」
「その可能性は勿論あります。なので早急に法整備を進めてもらうよう政府に要請している所です。ここだけの話ですが、どれだけ法律で雁字搦めにしてもあまりにも需要が高い為男性型アンドロイドは確実に法の隙間をすり抜けて製造されるでしょうね」
「完全にいたちごっこになりますね。あの、仮に男性型アンドロイドが作られたとして生身の男性への興味や関心は薄れるのでしょうか?」
「それは無いと思います。あくまで生身の男性の代替品としての需要となるはずですから。一種の自慰道具としての役割として利用するのではないでしょうか」
「ふ~む……。結衣と楓はどう思う?」
「私は興味ないかな。いくら人間に似せているとはいえ機械だし」
「私は……どうだろう。人間を模した機械で心の隙間や欲望を満たすこと自体は悪い事じゃないと思うけど、それって本当に幸せなのかなって思うかな」
「そっか。変な質問に答えてくれてありがとね」
なるほどね。結衣は完全に興味なし。楓はなにか思う事があるのだろうか?含みがある言い方をしていたな。どちらにしろ生身の男性の需要には変化なしと受け取っていいのかな。あと気になるのはお値段かな。
「ちなみにですが一般販売されるとなったらお幾らくらいになるのでしょうか?」
「う~ん……。あくまで現時点での予想になりますが、数百万が最低ラインですかね。オプションを付けた場合は金額が跳ね上がりますし、メンテナンスやパーツ交換でもお金がかかりますから上流家庭や富裕層がメインターゲットになるのではと思います」
まあ、そうだろうな。広く普及したとしても車を買うくらいの値段はするだろうし、おいそれと買う事は出来ないだろう。だが、一家に一台メイドロイド!という時代が来て欲しいな。そしたら美少女型メイドロイドにお世話してもらうんだ。フゥヘヘヘヘヘ。邪な考えが顔に出てしまったのか職員さんと結衣、楓、周りにいたクラスメイトに白い目で見られてしまった。これは失礼しました。反省するので許してちょ。まあ、こんな感じで施設見学をしていた訳です。時間にして二時間ほどだろうか。一通り見て回ったのでこれで終了となる。今回の収穫はなんといっても白衣を纏った研究者を見れた事だろう!超絶美人が白衣をたなびかせながら歩く姿は格好良いの一言。白衣繋がりで女医さんもいるがあっちはエロスの塊。研究者は格好良い。キチンと棲み分けが出来ているのだ。しかも研究者=気難しい人と思いがちだが、気さくで楽しい人達ばかりだったし、説明も難しい言葉や専門用語を極力使わないようにして分かりやすく伝えてくれたので理解しやすかった。またこの街に来た時は食事でも一緒にどう?なんてお誘いも受けたりして。答えは勿論YES!その際一瞬背中に物凄い圧を感じたのは気のせいだったのだろうか?ゾワワワっとしたんだけど……。いや、これは気にしたら駄目なやつだな。えっと、次に行くのはっと……おぉ!繁華街で自由行動か。これは楽しみだぜ。こうしてロボット産業研究施設を後にした。
修学旅行のお話ですが、想定よりもボリュームが出てしまい前編・後編に分けてお届けします。
今週更新分は前編となります。2021/11/21更新分が後編となります。
後編をまだ執筆中とは言えない……




