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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
59/163

No58

はい、という事で翌日です。寝て起きれば当然日付は変わっている訳で当たり前ですよね。ささっと準備を済ませて登校します。今日は教室に向かうんでは無く駐車場に行きます。去年の林間学校と同じでバスが止まっているのでみんなが集まったら乗り込んで移動開始という手筈だ。昇降口付近で葵と別れてしばらく歩くと人だかりが見えてきた。近づいていくと見知った顔の面々が挨拶してくれた。他クラスの人と少しお喋りしたりしつつ我がAクラスの集合場所に向かうと元気のいい声でみんな挨拶をしてくれた。

「おはよう!ハル君」

「おはよう」

「うっす。結衣も楓もおはよう。てか結衣元気一杯だな」

「あははは。まぁねぇ~。だって初めての他校との交流会だよ!これはテンションMAXですよ!」

「もう、少しは落ち着きなさいよ。見てるこっちが恥ずかしくなるじゃない」

「楓ちゃん酷い……。ハル君こんな酷い事を言う人ってどう思う?」

「いや……、俺も少しはしゃぎ過ぎかなって思った」

「ガーン…………。まさかハル君に見捨てられるなんて……」

「ちょ!言い方、言い方。別に見捨てるなんて事はないから。俺も楽しみで髪切りに行ったりしたしさ」

「あっ、やっぱりそうなんだ。少し雰囲気が違うからもしかしと思ってたんだ」

「結構分かっちゃったりするもんなの?」

「うん。ハル君の事はいつも見ているから分かるよ」

「私も、私も。楓ちゃんだけじゃなく私もいつも見てるよ」

「二人ともありがとうな。今回はいつもとは違う髪型にしたから、不評だったらどうしようって少し不安だったんだ。家族からは好評だったけど、他人から見てどうかなと思っててさ」

「格好良いし、似合ってるよ」

「いつもの髪型も良いけど私は今の感じも好きだな」

「ほっ……。よかった」

安堵の溜息を吐きつつ、改めて二人を見るとヘアアレンジをしていたり、いつもとは少し違うメイクをしていたりと何気に気合が入っている。他の人もそうなんだろうかと見回してみると、みんな同じような感じだった。考える事は一緒なんだな。まあ、いつもとは少し違った見た目も悪くない。むしろ可愛さ倍増じゃないか。いや、普段も可愛いけどお洒落をした姿は更に可愛いって事よ。そんな事を考えている間に生徒全員が集合したみたいで、先生から注意事項やなんやかんやを言われた後はバスに乗り込みレッツゴー!



バスに揺られる事数十分。今回お世話になる学校に到着しました。何気に近い事にビックリだよ。お嬢様学校って山間(やまあい)にあって、あまり他者との係わりが無いってイメージだったんだけど、周りにはお店やコンビニ、マンションなんかもあって普通の学校と変わらない。ただ!ただ、校舎の作りとかは歴史を感じさせるものがあって、流石に木造ではないんだけどデザインがレトロというか大正・昭和っぽさがある。個人的には嫌いじゃない。うちの学校みたいに最新の設備や校舎ってのも悪くないんだけど、いかんせん前世の俺の学生時代と比べるとあまりにも凄すぎてなんか違和感?しっくりこない?みたいなのがあるんだ。その点この学校は落ち着くし、悪くない。そんな感想を抱きつつ待機していると、なにやら先生同士で挨拶を交わした後話をしているのが目に入った。その際相手校の教師が俺の方をチラッと見たがやっぱり男子生徒は目立つんだろうか?あんまり絡んで欲しくはないんだけどな……。そのまま暫し待っていると、校舎へと案内された。建物内もなかなかに俺好みで古き良き時代を感じさせる。また、廊下にところどころ置かれている調度品も高級品なんだろうな。誤って倒したりしたら、損害賠償金がヤバい事になりそう。アンティーク品は門外漢なのでどれくらいの金額になるかは分からないが、一般人が払える額ではないだろう。あと、気になったのが高校生ってなにかと騒がしいじゃん。授業中でもノリのいい先生だとわちゃわちゃと話したりさ。でもこの学校はシーンとしているんだよね。The静寂!本当にこういった所でもうちの学校とは違うんだな~。どっちが良いかは人それぞれだと思うけどね。結衣とかはかなり窮屈に感じるんじゃないかな?楓は上手く順応しそうだし、葵は問題ないだろう。マジで完璧超人だからな我が妹は。そうそう、マイシスターは最近お菓子作りに精を出していてアリスさんから手解きを受けているんだよね。将来パティシエにでもなりたいんだろうか?もしそうだとしたら全力で応援するし、アリスさんという最強の師匠もいるから相当いい線を行くんじゃないだろうか。などど他愛も無い事を考えていたらでっかいホールに到着した。いや……、デカすぎだろ。漫画とかアニメに出てくるような円形で天井が滅茶苦茶高いホールと言えば分かりやすいだろうか。扉もデカいしどんな時にこの場所を使うんだよって思うよ。あっ、今回みたいな時に使うのか。はぁ……、なかなかにテンパってんな俺。


ホールの中には相手校の二年生が勢揃いしていた。こちらと合わせると軽く三百人くらいはいるんじゃないだろうか?それだけの人がいても窮屈では無くかなり余裕があるので、マジで全校生徒が入っても問題ないんじゃないか?なんておもってしまう。して、ざっと相手校の生徒を見てみたが、みなさんお嬢様って感じです。可愛い系より美人な人が多い印象。制服もアレンジしたり着崩したりせずに着ているし、髪型もロングのストレートの割合がかなり多い。うちの学校と比べるとかなり真面目なイメージを受ける。でだ、まずお互いの学校から代表生徒が前に出て挨拶をしたりなんだかんだとして、交流タイムとなった。今日の流れとしては一:交流タイム、二:学校案内、三:昼食、四:学校案内の続き、五:お別れの挨拶となっている。いざ、始まってもお互いなかなか一歩を踏み出そうとしない。こういうのって最初に誰かがアクションを起こせばつられて他の人も行動をするんだけど、最初に行動するのってかなり勇気がいるんだよね。今回は誰が勇者になるのか?曲がり間違っても俺ではないのは確かだけど。お互い様子見状態になっていた所でとうとう勇者が現れた。その人は迷わずこちらに進んできて俺の前で止まった。

「悠様、本日はようこそお越しくださいました」

「いえいえ。こちらこそお世話になります」

「なにかと至らない点もあるかと思いますが、なるべく快適に過ごせるように致しますのでどうか楽しんでいって下さい」

「ありがとうございます。でも真白さんがいてくれて本当に良かったです。知り合いが誰もいないと流石に色々と気後れしてしまうので……」

「そうですね。(わたくし)としても悠様がいらっしゃるので気が楽です」

「もう!二人だけで楽しそうにお喋りしててズルい。私と楓ちゃんも混ぜて~」

「おっと。悪い、悪い」

「真白さん久し振り~」

「お久しぶりです」

「お二人ともお久しぶりです。お元気でしたか?」

「うん。元気だったよ」

「はい。真白さんこそお変わりは無かったですか?」

「はい。壮健でした」

真白さんと会うのはなんだかんだで久しぶりだったから、こうして顔を見れてよかったよ。今は結衣と楓と楽しそうに話している…………んだけど、真白さんの後ろにチラチラ見える人影が非常に気になる。混ざりたいけど、どうしたらいいのか分からないって感じがヒシヒシと伝わってくる。見てて可哀想だしちょっと助け舟を出してやるか。

「真白さん。後ろにいる方はお友達ですか?」

「えっ?…………あっ!はい、私の友人です」

「今完全に忘れていましたよね?」

「そ、そんにゃことはありませんよ」

「めっちゃ噛んだし。てか真白さんが噛むの初めて見た」

「うぅ…………。あんまり触れないで下さい」

「あははは。分かりました。あの、よかったら紹介してもらえませんか?」

「はい」

そう言った後に後ろを振り向き件の人に手招きをすると、嬉しそうに破顔一笑したあとこちらに小走りでやってきた。

「こちらは私の友人で金城紫音(きんじょうしおん)さんです」

「オーホッホホホホ!!(わたくし)が金城紫音ですわ~~!!」

高笑いした後、声高らかに自己紹介をしたこの人。これだけでもインパクトは相当強いが、これはまだ始まりに過ぎない。見た目がもうね…………凄いんすよ。なんと金髪ツインテドリルヘアー!!別名コロネや縦ロールとも言われる髪型をしているんですよ。えっ?分からない?そういう方はグーグ〇でドリルヘアーで検索すればわんさか出てくるから調べてみてくれ。話が逸れたがこんなのアニメか漫画でしか存在しないと思っていたよ。しかも金髪。地毛……なのかな?染髪(せんぱつ)はNGだと思うしやっぱし地毛?あと髪型のセットにどれだけの時間がかかっているのかと、どうやって形を作っているのかも気になる。グルングルンに巻かれているから、ヘアスプレー三~四缶は使ってるんじゃないか?まさにテンプレのお嬢様を地でいっている人だよこりゃあ。さらに庶民を見下していたり、カップ麺を食べた事がないとかがあればなお完璧だね!ちなみに彼女の自己紹介と見た目のインパクトが強すぎた為、結衣や楓、近くにいたうちの学校の生徒が呆然としている。気持ちは分かるけど、なんかリアクションしないとまずいな。誰も反応しないから金城さん泣きそうになっているし。

「あ~、初めまして。俺は私立蒼律学園二年の甲野悠と言います」

「あらあら、まあまあ!あなたがいつも真白さんがお話している甲野さんなんですね!」

「多分その甲野だと思います」

「……………………顔はイケメンですわね。話した感じも悪くないですし。合格ですわ!」

合格?えっ?なにかの試験でもさせられていたの俺?と疑問に思ったが、それよりも周りの面々がヤバい事になっている。特に結衣・楓・真白さんが目に見えて怒りのオーラを放出しているのが怖い。

「合格?なに上から目線で言っているの?」

「あなた何様のつもりですか?」

「紫音さん、流石に今の発言は頂けませんよ」

「えっ?えっ…………」

「あなたにハル君の何が分かるんですか?何をもとに合格って言う判断をしたんですか?」

「それは…………、見た目と話した感じで…………」

「はっ。話にならないね」

「気分が悪いです。こんな人にハル君のなにが分かるっているの?」

「紫音さんには失望しました」

「…………………………」

あ~、これはマズイ。冗談抜きでマジでマズイ。他の人も何事か?とこちらに注目しているし、雰囲気も最悪だ。せっかくの交流会が始まって十数分で終わるとかシャレにならないから。金城さん目に涙を溜めてもう泣く寸前じゃないか。

「ストップ、ストップ。そこまで。別に俺は気にしてないし、寧ろ合格だったから嬉しいくらいだよ。それに折角の交流会なんだからつまらない事で怒ったりせずに、楽しく過ごそうぜ」

「ハル君がそう言うなら……分かった」

「そうだね。ついカッとなってしまったわ」

「私も反省しております」

「金城さんもごめんね。みんな悪気があった訳ではないんだ」

「分かっておりますわ。私が全面的に悪かったのです。反省しておりますわ」

「よっし!気を取り直して楽しくいこうか!」

初っ端っから危うい感じになったけどなんとかなってよかった。交流会は始まったばかり。このままトラブルなく進んで終わる事が出来ればいいんだけど。そんな一抹の不安が胸に過った。


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