No57
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「谷口先生、今よろしいですか?」
「はい。構いませんが、何かありましたか?」
「少しお話したい事がありまして。ここではなんですから、会議室の方に移動しましょう」
「分かりました」
話って何だろう?なにかミスをした覚えも無いし、授業も予定通りに進めているから問題なし。生徒との関係も良好だと思うし、思い当たる節がないんだけどなにかしら?
「どうぞ、お座りになって下さい」
「あの、話ってなんでしょうか?」
「谷口先生も知っていると思いますが、当校には他校から交流会のお誘いが沢山来ています。基本的にはお断りしているのですが、今回は少し話が違っていまして」
「はあ……。まあ、男子生徒が多数在籍していますのでそういったお誘いが多いのは知っています。ですが、それが私とどう関係するのでしょうか?」
「実はAクラスの甲野君なんですが、TV出演したことにより全国的に有名になりましたよね。そのせいで今までとは比にならない程沢山の交流会申し込みが来ているのです。ここで全て断ってしまったら、あまりにも対面が悪いので、信頼できる学校と一度だけ開催しようという話になっているんです」
「それで私に話が来たという事ですか」
「そうです。現在候補として三校ほどピックアップしています。担任のあなたの意見を先に聞いておきたいと思って時間を取ってもらいました。もちろん、後々他のクラスの担任にも意見を聞いたうえで総合的に判断しますので今は忌憚のない意見を言って貰えればと思います」
「分かりました」
渡された資料をペラペラと捲りながら、情報を頭に入れていく。ざっと見た所どこの学校も有名校で信頼と実績があるので、どこに行く事になっても問題は起きないだろう。ただ、今回は有名になった男子生徒が参加するので、万が一にももしもの事があってはならない。警備体制や相手校側の対応などは後々話を詰めていく事になると思うが、現段階での有力候補はここだろうか。伝統と格式があり、在籍している生徒も名家、旧家、大企業の令嬢等々錚々たる面々なので私が危惧している事は起こらないと思うし、なによりこの学校にはあの子が通っているのでそう言った意味でも安心できる。甲野君にとっても知り合いがいた方が気が楽だと思うし。
「どの学校も大変素晴らしいですが、私としてはここが良いと思います」
「…………なるほど。理由をお聞かせしてもらってもいいですか?」
「はい。リストの中で一番由緒ある学校ですし、なによりこの学校には甲野君の知り合いが通っているんです。なので彼にとっても知り合いがいるというのは気持ち的に楽なんではないかと思います。以上の理由によりこの学校を選びました」
「ほう。彼の知り合いが通っているんですか?それは初耳です。そう言う事であればここが最有力候補ですね。では、後日学年の担任を集めての会議を行いますのでその時に正式にどこにするかを決めましょう」
「はい。では失礼します」
会議室を出た後にふぅ……と溜息を吐いてしまった。正式に訪問校が決定したら忙しくなる事は決定している。まともに家に帰れないんだろうなぁ……。今から着替えやインスタント食品を用意しておかなきゃいけないし、あとはエナジードリンクも買っておこう。これからの事を思うとまたしても溜息が出てしまった。
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最近先生の顔色が悪いが大丈夫なのだろうか?目の下のクマも酷いし、心なしか頬もやつれている。週に三・四日はMeteorに飲みに来るのに先週、今週と一回も来ていない。なにがあったのか気になるが、下手に聞いてしまうと最悪やぶ蛇にもなりかねないから躊躇ってしまう。女性特有の生理現象なのかな?とも思ったけど、一年以上の付き合いがある中でこんな状態になったのは見た事がないので違うだろう。多分。なにか知っているかもと思い結衣や楓、有馬先輩にも話を聞いてみたが分からないらしい。単純に仕事が忙しいとかなら良いんだけど、もしなにか問題が起こっているなら言って欲しい。一番怖いのは自分の内に溜め込んで誰にも相談しないことだ。こうなると、自力での解決は非常に難しくなるし、精神的にも追い詰められていく。気付けばにっちもさっちもいかなくなって破滅してしまうなんて事もあるのだ。今はまだ様子見をするけど、これ以上悪くなるようであれば声を掛けよう。大事な先生なのだから。
そう思いながら過ごす事数日。朝のHRで先生から発表があった。内容は他校との交流会を行うとの事。お相手は某有名お嬢様学校。奇しくも真白さんが通っている学校が選ばれるとは。裏で何かしらのやり取りがあったのか、はたまたただの偶然か。どちらにせよ知り合いがいるっていうのは心強いし気が楽でいいね。はっ、まさかそこまで読んで選んだのか?可能性はあるな。先生も真白さんの事は知っているし、どこにするか選ぶ段階でその点には気付いたはず。という事はこれは偶然ではなく必然ということか?…………間違いないだろう。頭脳は大人、体も大人の名探偵甲野悠の推理は今日も冴えわたっているぜ!某少年漫画の名探偵コ〇ンみたいな事を考えてしまったが、概ね正解だろう。先生……、本当にありがとうございます。ここまで生徒の事を考えて行動できる教師がどれだけいるだろうか?俺が知っている教師なんて事なかれ主義で生徒?なにそれみたいな人ばっかだったからな。余計に谷口先生の優しさが染みわたるぜ。さて、HRはまだ続いているので話をしっかり聞かなければな。
「ということで、今回他校との交流会を開催することになりました。当校の二年生と相手校の二年生が対象なのでA~Eクラスの全員が参加となります。当日にも再度話しますが、あなたたちは我が校の看板を背負っているという意識を持って行動や発言をして下さい。万が一にも問題などは起こさない様にして下さいね」
ふむ。まあ、そこら辺は当たり前の事だな。社会人なら当然なんだが、学生にはこうして言って聞かせないとはっちゃけちゃったりするからね。テンション上がっていたずら書きをしたり、可愛い子にナンパしたりね。その点うちの学校は進学校だしみんなしっかり教育されている人達ばかりだから心配は無用だろう。俺?俺は前世で社会人だったからそんな子供みたいなことはしないよ。予想外の事がおきれば別だけどね。例えばアイドルがいた~とか現実ではお目にかかれないような人がいた~とかがなければもう普通も普通。人畜無害の平々凡々な一般男子生徒でいきますよ。とりま、美容室に髪切りに行って、制服もクリーニングに出しておこうか。あくまで身だしなみだからね。清潔感って大事でしょ?今からワクワクしているわけでは決してないからね!
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私は今先生が言った言葉に耳を疑ってしまいました。聞き間違いでなければ私立蒼律学園との交流会が開催されるとの事。私立蒼律学園といえば悠様が在籍している学校。どういった経緯で開催となったのかは分かりませんが、これは一大事です。当然当校も問題が起きないよう様々な対応をするでしょうが、万が一があるかもしれません。それに女子校なので男子生徒見たさになにかしでかす輩がいるかもしれませんし、ここは生徒会の人たちに相談しなければいけませんね。一応二年生が対象との事ですが、まず間違いなく下級生や上級生もなにかしらのアクションを起こすでしょう。そして一番の気がかりが私の友人であり、色々と難しいあの人。失礼な事をしなければいいのですが、もしもの時は力ずくでなんとかするしかありませんね。このお話は当然悠様も知っているはずですから、早いうちにお互いの意見や認識を擦り合わせておいた方がいいでしょう。なにか希望などがあれば私の方から学校に伝えればいいですし、不安に思っている点や気になる点なども聞いておいた方がいいでしょう。それにしても、開催まであと一週間ちょっとしかないのはいただけませんね。もう少し時間があれば各方面に手回しを出来たのですが、なにせ時間がありません。せっかく悠様がお越しになるのですから、もっと早く教えて下さればよかったのに。っと愚痴ばっかり言っていてもしかたありませんね。早速今日から動くことにしましょう。あと美容室の予約と制服もクリーニングに出しておいた方がいいですね。はぁ……、悠様。今からお会いできるのを楽しみにしております。
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まさか、真白さんが俺と同じ考えをしていたとは露知らず。先生たちは忙しそうに日々を過ごし、俺はいつも通りの日常を過ごしながら日々は過ぎていった。あぁ、そうだ。そろそろ夏アニメが始まるんだよ。俺が一番注目しているのは『異世界転生したと思ったら用無しだった』だ。あらすじは異世界転生した主人公がキタ━(゜∀゜)━!これ勇者とかになるパターンじゃね?とか言って大はしゃぎしてたら、王様に「あっ、君用無しだから帰って」って開始三十秒で言われて、絶望のどん底に落とされてそのまま這い上がれないパロディアニメだ。一見地雷に見えるが、なんとこれPVとかの前評判がすこぶる良いんだよね。俺もみたけど、滅茶苦茶面白かった。こうね、他人の不幸は蜜の味ってのを実感できる感じがGOODよ。問題は失速せずに最後まで走り切れるかだ。最後まで突っ走っていけたなら夏クールの覇権は間違いないね。かなり話が逸れてしまったが、いよいよ明日は他校交流会だ。髪を切ったし、制服もクリーニングに出してピカピカだ。今にして思えば気合入れ過ぎかな?とか思うがやってしまったものはしょうがない。さって、明日の為にももう寝るとしますか。good night




