No55
季節は初夏。ついさっき春になり入学式があったばかりなのに、季節の移り変わりとは早いものである。制服はまだ夏服にはなっていないが、七月に入れば衣替えだ。最近は気温が二十五度を超える日が多くて暑いので、さっさと半袖シャツで登校したいぜ。という事で今回は本格的に暑くなる前にみんなでなにかしたいねっていう話からバーベキュー大会開催に至った経緯について書こうと思う。
なんでそんな事になったかというと、何気ない一言から始まったんだ。
「最近暑いよね。汗もかくしホント嫌になるよ」
「これでまだ初夏なんだよね……。これからまだまだ暑くなるとか最悪」
「だよね。季節的には嫌いじゃないけど、普通に三十度超えるのはツライ」
「結衣も楓も華奢なのに暑さに弱いんだ」
「う~ん……、確かに細い方が多少は涼しく感じるけど、暑いものは暑いよ」
「結衣とか胸が大きいから尚更熱が籠ったりして暑く感じるんじゃない?」
「うん。谷間とか胸の下の方とか汗が溜まっちゃって、こまめに拭かないとかぶれちゃうんだよね」
「私はそこまで大きくないけど、あの感じ嫌だよね」
「うん。気持ち悪い。だからウエットティッシュは必須だよね」
「分かる」
「女の子は大変なんだね」
「こればっかりは女に生まれたから仕方ないって思って割り切ってるよ」
「なるへそ。暑い……、初夏……、こうさ……暑くなる前になんかやりたいね」
「唐突だね~。でも、まだ涼しい今のうちにやるのもありかも」
「私は賛成」
「じゃあ、なにやろうか?案はある?」
「レジャーとか?」
「登山とか?」
「結衣はレジャーね。楓は登山か。どっちも今の季節だといい感じだね。う~ん……、ここら辺に登山とか出来る山あったっけ?」
「スマホで調べてみるね」
結衣と楓がスマホをポチポチしながら検索してくれた。ありがたや。
「ごめんね。提案してなんだけど、この近辺に登山できる山は無いみたい」
「そっか。じゃあ、結衣のレジャー案だけどこれは色々と施設とかあるよね」
「うん。そっちも調べてみたけど何か所かあったよ。バーベキューとかも出来るみたい」
「バーベキュー!!いいね!夏っぽさもあるし、それ採用」
「メンバーはどうしよう?去年海に行った人達で大丈夫?」
「プラスで優ちゃん、アリスさん、店長も誘ってみようと思うけどいいかな?」
「OK」
「問題ないよ」
「じゃあメンバーはそれで決定で。あとは日時や場所、移動手段に関しては追々決めていこう」
よ~し!母さんには帰ってから聞けばいいし、バイト先の面々は仕事に行った時に聞こう。優ちゃんは昼休みにでも聞きに行けばいいか。真白さんにはメールか電話で聞こう。これから色々と準備で忙しくなりそうだな。ま、頑張りますか!
誘ってみた結果全員からOKを貰えました。一番心配だったアリスさんについては聞いた際二つ返事でOKって言われてマジでビックリした。てっきり面倒だからパスなんて言うだろうなと予想していただけにね。もしかして悪い物でも食べた?と心配からちょっと探りを入れてみた。
「あの、本当に良いんですか?レジャーですよ?」
「問題ないよ。あんまり運動は得意じゃないけど、シートにでも座ってゆっくりしていればいいし」
「はぁ……、さいですか」
「なんかハッキリしない感じだね」
「いや~、てっきり面倒だから行かないっていうかと思って」
「他の人から誘われたら行かないよ。面倒だし。でも君が誘ってくれたんだし、せっかくだからね参加しようと思って」
「はぁ……、まったくお前は素直じゃないな。甲野君に誘われて嬉しかったって言えばいいのに」
「なっぁ~~!そんな事無いし!同僚と友好を深めるために参加するのであって、これは社会人なら必須だろう!まったく佐伯はなにを言っているんだか」
「はいはい。そう言う事にしておくよ」
とまあ、こんなやり取りがありました。アリスさんは休日は家でお菓子の研究をしたり、ダラダラと引き籠っているだけだからたまにはこうして外に出るのもいいんじゃないかな?健康の為にもね。いやホントに健康って病気や怪我をして初めて大切さが分かるものだからね。俺も昔は煙草に酒にと色々とやっていたけど、ある時を境にキッパリ止めた。特に煙草に関してはマジで止めた方が良い。会社の健康診断で小さな腫瘍が見つかってその原因が煙草だったんだ。早期発見で簡単な手術をして、その後の再発もなかったけどそれを機に止めた。酒に関してはベロンベロンになるまで飲むのは止めて、あくまで適量の範囲で収める様にしたんだ。酒の方は問題なかったけど、煙草は禁断症状がヤバかった。仕事が手に付かないくらいで、大変だったんだよ。今ではニコチンパッチとか病院で処方されるから大分楽になったとは思うけど、俺の時はそんなの無かったから気合よ、気合。完全に根性論でなんとかするしかなかったっていうね。おっとと、話が脱線してしまったな。まあそんな訳で今回の参加メンバーは俺・母さん・葵・結衣・楓・有馬先輩・真白さん・先生・優ちゃん・店長・アリスさんとなっている。車は母さんと先生、店長が出してくれるので分乗してレジャー施設まで行く予定だ。バーベキューの材料も全て用意しているし、明日が楽しみだ。早く肉食いてぇ~!!
開けて翌日。集合場所にみんなが来たのを確認してから、車に分乗して目的地へGO!!車で大体一時間半位でつくのでそれまでは車内で他愛もない話をして時間を潰してました。そんなこんなでやってきましたレジャー施設に。早速手続きをして、バーベキューに必要な道具を借りたりパンフレットでどこに何があるかを確認したりした後にまた移動です。お昼までには少し時間があるので各々好きなように過ごす事になりました。俺は近くの遊歩道を散策しようかな。自然の中で何も考えずに歩くのって凄くリラックスできるし癒されるんだよね。心身ともにクタクタになった時は一番は寝る事だけど、メンタルケアの為にも自然の中に身を置いた方が良いって何かの本で読んで実践してたな~。前世では本当に仕事に忙殺されてまともな状態じゃなかったから、なおさらだよね。ちなみに今は一人です。他の人も一緒に行こうとしていたんだけど思う所があって遠慮させてもらったんだ。深呼吸すると木々の香りが鼻孔をくすぐる。雨の匂いとかお日様の匂いとか好きなんだよね。もちろん嫌いな人もいるだろうけどさ。はぁ~、このまま歩いていればお昼には良い感じにお腹が空くだろう。間違いなく美味しい肉を更に美味しく頂くためにもっとお腹を空かせなければ。そう考えた後の歩くスピードが少し早くなったのは言うまでもない。
丁度時刻は十二時ジャスト。では早速お昼ご飯といきますか。
「え~と、まずは火を熾さないといけないわね」
「じゃあ、それは俺がやるよ。母さんは他の事をお願い」
「分かったわ。でも一人だと大変だと思うし他の人にも手伝ってもらいましょ」
「じゃあ、私が手伝います」
「私もお手伝いいたします」
「じゃあ、有馬さんと望月さんお願いしますね」
「「はい」」
「まずは着火剤を置きます」
「あれ?先に炭を置くんじゃないの?」
「ん~と、それだと燃焼効率が悪いんですよね。最悪いつまでたっても弱火で一向に強くならないって事態になってしまいます」
「そうなんだ。知らなかった」
「私も知りませんでした」
「まあ、ちょっとした豆知識だからね。で、次は炭を置きます。真ん中の空間を空けた状態で積んでいってください」
「はい」
「分かりました。そう言えばお祭りの時に屋台の人が作業をしているのは見た事はあるのですが、こうして自分でやるのは初めてです」
「あ~、まあ巫女さんが火熾し作業をしているのって想像出来ませんしね」
「一度お手伝いを願い出たのですが、断られてしまいまして。やはり私が巫女だから断ったのでしょうか?」
「それもあると思いますが、地味に火熾しって力仕事なんですよね。炭を運んだり、しっかりと火力が出るまで団扇で扇いだりと大変なんですよ。なのでそう言った事もあるのでお断りしたんじゃないですか?」
「なるほど。でも、今回こうしてやってみる事が出来て嬉しいです」
「それはなによりです。有馬先輩はどうなんですか?」
「私は小学校の林間学校でやって以来かな」
「じゃあ、一応経験者なんですね」
「まあ、一回しかやってないけどそうなるのかな。おっと炭も置き終わったし次はどうするの?」
「次は着火剤に火を付けます。炭に火が付くまで十五分ほどかかるのでそれまでは待機ですね」
「えっと、すぐに団扇で扇がなくてもいいんでしょうか?」
「それをしてしまうと、逆に炭に火が付くのが遅くなってしまうんです。なのでしっかりと炭に火が付いてから団扇で扇ぎます」
「そうなんですね。知らなかったです」
「私も知らなかったな」
「まあ、これもちょっとした豆知識ですから」
こうして三人で会話をしつつ作業をしていき、無事火熾しが完了した。他の人たちの準備も丁度完了したみたいだし、いよいよバーベキュー開始だぜ!!




