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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
55/163

No54

男には一人になりたい時がある。女性にはあまり理解できないかもしれないが、そういう時があるのだ。かくいう俺もそうで、家でも、学校でも、バイト先でも常に誰かしらと一緒に居る。一人になる時間と言うのは自室にいる時くらいだろうか。常に誰かが近くにいるというのは存外ストレスになったりするもので、とうとう俺も限界に達してしまった。なので今日は一人でブラブラとお散歩がてら街を散策します。一人で街に行くからって伝えた時は大変だった。母さんも葵も駄目!って頑なに認めてくれようとしなかった。やっぱり男性が一人で居るのは危険だからって事なんだけど、俺もたまには一人になりたいんだよ~!と説得に次ぐ説得でなんとか了承を得られた。まあ、かなり渋々とだったけど。ち〇散歩ならぬハル散歩開始です。


まずは電車に乗り繫華街の方へ向かいます。今日は休日という事もあって、そこまで人は多くない。普段は男性専用車両に乗っているけど、たまには一般車両に乗ってみようかなと思いそちらに乗り込んでみた。まあ~、見られる見られる。座席に向かっていき座ったらすかさず両隣に座ろうと動き出す女性たち。目には見えないがバチバチと火花が散る程の熾烈な戦いを繰り広げていた。そして勝ち抜いた勝者が隣に座った瞬間スーハーと深呼吸の音が。んっ?と思い横をチラ見するとなんと幸せそうな顔をしているではないですか!いや、まて。まさか俺の臭いを嗅いでそんな顔をしている……なんてことはないよな?もしかして俺臭い?臭うの?まてまて。幸せそうな顔をしているということは、不快な臭いではないはず……多分、きっと、恐らく。帰ったら家族に聞いてみようかな。と少し自分の体臭について考えている間に目的の駅に到着。電車から降りてホームを進み改札を出たら、目の前には雑多な街並み。この街の繁華街はなんて言うのかな?前世で言う所の歌舞伎町と渋谷をごちゃ混ぜにした感じ?かなりカオスなイメージを持たれるだろうが、ごちゃごちゃ感はあるけど、不思議と統一されているんだよね。上手い具合に調和しているというかなんというか。時刻はまだ昼なので飲み屋は開いていないから酔客とかはいない。かわりに若者や家族連れが大勢いる。さ~て、適当に歩いてみますか。歩道をポテポテと歩きながら、何も考えずただ目に映る景色を眺める……事が出来たらどれだけよかったか。ここでも視線が刺さる、刺さる。好奇の目や獲物を狙う目、純粋になんで男性が一人でいるの?という疑問の眼差しもあった。だが、いい加減俺も慣れているので大して気にもならない。ただ、逆ナンしようとか言っているそこのあなた。気持ちは嬉しいけど、止めといた方がいい。もしそんな事したら、周りの女性がどう思うか……。最悪路地裏に連れていかれてピーされるよ。そんな事態は避けたいので少し足早に移動して回避。ふっ、この優しさよ。また一つ命を救ってしまったぜ。などと下らない事を考えつつ、歩を進めていると本屋さんを発見。特に追っている漫画や小説があるわけではないが、寄ってみようか。適当に書棚を流し見しつつ、なんか面白い本でもあればなぁ~と歩いていると、大きなPOPが目に入った。『男性にモテる秘訣特集!!』というなんとも……まあ……あれな感じの書籍を集めたコーナーのPOPでした。物は試しとペラペラと中身を流し読みしてみたが、苦笑いしかでない。『男性からの要望は可能な限り答えましょう』、『男性の言う事は否定してはいけません』、『男性は従順で貞淑な女性が好きです』、『男性を生涯養えるだけのお金を用意するのは必須』等々。いやさ……、そういう女性が好きな人もいるだろうけど、極少数よ。男性全般としてみられるのは少し……、いやかなり間違っている。雑誌の言う事を実践したら、ただのイエスマンのATMじゃねえか。そこまでしてモテたいのか?そこに愛はあるのか?恋愛ってそういうものじゃないだろ。少なくとも俺はそんな女性を好きにはならない。前世を振り返っても雑誌に書かれているような女性を好きと言う人はいなかったし。でも……まあ、男性と接点が極端に少ない世界だから、風説に惑わされて書いたんだろうな。はぁ~と思わず溜息が出てしまう。そんな俺に横から可愛らしい声がかけられた。

「あの、大丈夫ですか?」

「えっ?あっ、大丈夫です。はい」

「そうですか。よかったです。少し調子が悪そうに見えたのでお声がけさせて頂きました」

「ありがとうございます。ちょっとこの本の内容にビックリしてしまって」

「なにか問題でもありましたか?」

「あ~、ちょっとだけ。あくまで個人的な意見なんですけど、この雑誌に書いてあることを実践してもモテないんじゃないかなと思います」

「えっ!?そうなんですか?」

「はい。もし実践したらイエスマンのATMになるだけです。まあ、そういう女性が好きな人もいるとは思いますけど」

「えぇ~、ビックリです。あの……、ちなみになんですけど、どういう女性がモテると思いますか?」

「そうですね……。一般的なものだと可愛いとか綺麗な人で、家事、料理ができて浪費癖が無いとかですかね」

「ふむふむ。他にはなにかありますか?」

「単純にモテたいんなら、さっきの条件ですかね。男なんて外見が全てみたいな所がありますから。でも、個人的には礼儀作法や常識がしっかりしていて、言葉遣いや所作が綺麗な人が好きですね。そういった基本的な事が出来ている人って存外少ないんですよ。だからそういう人は目につきやすいし、好感を持てますね」

「成程。という事は外見が整っていて、そう言った基本的な事が出来ていればモテるという訳ですね」

「そうですね。そんな女性を嫌う男性は少ないんじゃないんですかね」

「ありがとうございます。参考になります」

「いえいえ。でも、今言った事はあくまで一般論であって好みは人それぞれですから。一番良いのはありのままの自分を好きになってもらえるよう努力する事ではないでしょうか」

「ありのままの自分を好きになってもらう……。それは素敵ですね」

「俺もそう思います。変に取り繕った自分では無く素の自分を好きになってもらえたら、こんなに嬉しい事はないですよ」

「はい。あっ、長々とお喋りしてしまい申し訳ありません」

「いえいえ。俺も楽しかったのでこちらこそありがとうございました」

そう言った後何気に周りを見回すと大勢のお客さんが聞き耳を立てていた。しかもメモを取ったり、話していた内容について議論していたりと様々。ちょっと待って。なんでこんなに人が集まってるの?ただの世間話をしてただけなのに……。俺の不思議そうな顔をみて店員さんが説明してくれた。

「男性が一人で居るだけでも凄く珍しいですが、恋愛関係の話を男性自身から話してくれるなんてそれこそ宝くじに当たるような確率の出来事ですから、これだけ人が集まるのは当然の事かと」

「まあ……確かに。でもお店側にも迷惑を掛けてしまい申し訳ありません」

「とんでもないです。こうしてお話を聞けただけで十分ですし、後々の事も考えると十分にプラスなので大丈夫です」

「でも、俺の気が済まないので何冊か本を購入しますね」

「お気遣いありがとうございます。では、どの様な本がよろしいですか?」

「そうですね…………」

こうして店員さんのアドバイスを貰いながら、書籍を購入した。余談だが、俺が買った本はその時お店に居たほとんどの人が買って、更に噂を聞いた人も買っていき増刷ラッシュになったとか。これにはお店も出版社もニッコリだったらしい。さて、ハル散歩はまだ続きます。前世ではウィンドウショッピングとか出来たんだけど、この世界では路面店も商業ビルも女性用がほとんどなので俺が見てもどうしようもない。なので、フードスタンドとかカフェなんかで飲み食いして楽しんでます。片手に珈琲の入ったコップを持ちながら歩いていると、懐かしいお店を発見。前世では少なくなったゲーセンだ。ゲーセンで通じるとは思うけど、分からない人の為に少し説明を。ゲーセンとはゲームセンターの略で様々なアーケードゲームの筐体やUFOキャッチャー、コインゲーム等々が所狭しと置かれていて、大体一プレイ百円で遊べる所だ。昔は至る所にあったんだけど、今は大型店を除きとんと見なくなってしまった懐かしのゲーセン。郷愁に駆られてふらりと入ると、うるさいくらいの音が鼓膜を叩く。この感じ懐かしいなぁ。今回プレイしようと思うのは格闘ゲームだ。格ゲーと言えば、鉄〇やストリートファ〇ター、DOAなどが有名だが俺はDOA派だ。お気に入りのキャラは〇リーローズ一択。マ〇ーローズ滅茶苦茶可愛い!もうね、大好きなんですよ。可愛いの要素を全部詰め込んだようなキャラで、ある意味で可愛いの究極系だと思う。異論は認めない!つーことでこの世界にもDOAがあるのか分からんがなかったら適当な格ゲーでもやるか。

…………………………気付けば二時間もプレイしていた。使ったお金?さあ?一々そんなの気にしてられるかってんでぇ。楽しかったから満足よ。あとUFOキャ〇チャーでぬいぐるみもGETしたしこれは葵へのプレゼントにしよう。とまあこんな感じでゲーセンを後にした。引き続き気ままに散策していたら気付けば夕方になっていた。一人の時間を十分に堪能できたしこれで終わるとしますか。なんかこう……心が軽くなった気がする。なんやかんやで誰かといると気を使ったりするから、疲れるけど一人だとそう言った面は楽でいいわ~。今後も定期的にこうして一人で散策しようかな。そう思いながら夕日に照らされる道を帰った。

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