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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
54/163

No53

「明日は調理実習の授業があるので、エプロン等を忘れないようにして下さい」

「はい」

「では、これで帰りのHRを終わりたいと思います」

あ~、明日は調理実習か。別に料理を作るのが嫌な訳では無いけど、なんか面倒なんだよね。学食で食べた方が美味しいしさ。しかもこの世界の女性は殆どの人がある程度は料理が出来るんだから調理実習とかいらなくね?なんて少しやさぐれた思いもあるが、ボイコットする訳にもいかないし真面目に取り組むか。


家に帰り母さんにエプロンを貸してもらったし、あとはなにかいるかな?どうしてもこれが欲しい、使いたいって道具も無いしいいか。料理系のアニメや漫画なんかでは箱に入った包丁とか持ってて格好良いと思うが、ああいうのって滅茶苦茶お高いんだよね。もちろんピンキリだけど高いやつはマジで目ん玉飛び出るほどの値段なんだよ。その分品質も極上なんだけど高い。プロが使うものだから当然かもしれないけどさ……。まっ、俺は調理室に置いてある道具で十分だし、いっか。さぁ~て、特にやる事も無いしさっさと寝るかと布団に潜り込んだら、フワッと甘い香りが鼻孔をくすぐった。たまに、この甘い香りがするんだよね。寝具を洗う時に香り付きの柔軟剤や洗剤は使ってないので、マジで謎だよ。でも、どことなく落ち着くし心が安らぐんだ。今日はこのいい香りに包まれて夢の世界に旅立とう。


開けて翌日。いよいよ調理実習スタートです。

「では、今回皆さんに作ってもらうのはクッキーとプリンです」

えっ?ちょっと待って。普通カレーとか親子丼とかそういった誰でもある程度簡単に作れるものじゃないの?なんでお菓子?お昼も挟んでの授業なのに作るのお菓子?いやいや、いくら女子ばかりとは言えこれは予想できなかったわ……。お菓子なんて作った事数回しかないんだけど、大丈夫かな?事前に教えてもらっていれば葵に指導してもらえたのに無念!

「みんなはお菓子作りはしたことあるの?」

「私はたまに作るくらいかな」

「私は二回くらいしか作った事ない」

「ふむ、結衣は問題なさそうだね。楓は二回しか作った事無いのか……。まあ、今回レシピもあるし大丈夫……だよね?」

「基本的にはお手伝いに徹しようかなって思っているの。メインの作業は上手い人にやってもらった方が効率も良いし」

「確かに。じゃあ、そういった感じてやろうか」

「うん」

「了解」

「分かったよ~」

結衣・楓・今回一緒の班になった女の子が各々答えてくれた。ちなみに、今回の班分けは結構大変だった。俺と一緒にやりたいという人が多かったんですよ。というかクラスのほぼ全員というね。バチバチに火花を散らしながら、私が、私が!って言い合っててどうやって収めようって思っていた所先生が「じゃあ、クジ引きで決めましょう」と鶴の一声で大くじ引き会が開催。結果先程述べたメンバーとなった訳よ。選ばれなかった面々の悔しそうな顔は今でも思い出せる。あまりにも可哀想なんでちょっとしたサプライズをしようと計画してるんだ。それはなにかは後半で明らかになるので、こうご期待。でだ、今回作るものはクッキーとプリンだけど、カフェで働いているんだからなんとかなるんじゃいの?なんて思われるかもしれないが、お菓子作りはアリスさんが全てやっていて俺や店長は一切タッチしていない。てか、なにか手伝いますか?って聞いたら断られた。お菓子作りは分量がほんの数グラム違うだけで、全く違う物になるし、湿度や気温なんかでも味が変わるからそういった要素も加味しながら作らないといけないといわれて、あぁ~、俺には無理だわって思ったよ。これは素人が手伝いなんかしちゃいけないってね。まあ、今回は調理実習なんでそこまで考える必要はないから楽っちゃ楽だけど、作るからには美味しい物を作りたいよね。なので俺が出来る全力で取り組みます!


「じゃあ、まずは調理道具から用意しよう」

「なにが必要なの?」

「ボウル、泡立て器、ヘラ、抜き型、オーブンシート、鍋くらいかな」

「そんなものなんだ。もっと沢山使うかと思ってたんだけど」

「両方とも簡単に作れるお菓子だからね。本格的に作ろうと思ったらもう少し調理器具は必要だけど」

「なるほどね。教えてくれてありがとね結衣」

「ううん。こんな事でいいならいつでも聞いてね」

「うっし!じゃあ、作業開始しますか」

こうして作り始めた訳だけど、ぶっちゃけ簡単でした。本当に難しい作業もなく、漫画なんかである薄力粉の袋を開ける時に、勢いをつけすぎて中身が散乱するなんて事も無く淡々と進み今はクッキー生地の寝かし中。一時間以上寝かせないといけないが、ちょうどお昼になったので暇しなくて済んでホッとしたよ。ちゅーことで、お昼を食べに学食へレッツラゴー!!

俺が頼んだのは、今日から新メニューとして登場した油淋鶏(ユーリンチー)定食だ。見た目は揚げた鶏肉に刻んだ長ネギと醬油ベースのタレをかけた一品。見た目は食欲をそそるが果たしてお味はどうなのか大変気になります。他の人はパスタだったり、親子丼だったり色々。あっと、今日はいつものメンバーだけでなく、調理実習で一緒の班のクラスメイトも混じっています。結構な大人数なんでテーブルを二つくっつけてみんなで食べれる様にしてます。別々のテーブルで食べるのも寂しいし、みんなでお喋りしながら食べたいじゃんっていう俺の我儘でこうなりました。さてさて、何はともあれ実食といきますか。

「うっま~~~!!なにこれ!?マジで美味すぎる!」

「そんなに美味しいの?」

「初めて食べたけどマジで美味い!俺の中で大好きな食べ物TOP5入りしたわ!」

「えぇ~、そんなに美味しいなら私もそれにすればよかった」

「ふははは!残念だったな。まあ、明日にでも食べればいいんじゃない?」

「う~……、ハル君のいじわる」

「まあ、結衣がどうしてもっていうなら一口あげてもいいよ」

「本当?」

「んっ。はい、あ~ん」

「えっ!?」

「ほら、口開けて。あ~ん」

「あ、あ~ん」

「どう?美味くない?」

「うん。美味しい。けどちょっと今はそれどころじゃないかな」

「んっ?どういうこと?」

「兄さんがあ~んってしたからですよ。羨ましい」

「羨ましいって……、葵も食べたかったのか?ならあ~ん」

「あ~ん。…………はふぅ……、兄さんから食べさせてもらえるなんて、今死んでもいいかも」

「いやいや、大袈裟過ぎだろ」

「そんなことないです。あと美味しかったです。今度家でも作りますか?」

「作れるの?」

「レシピが分かれば大丈夫です」

「やったーー!じゃあ、楽しみに待ってるね」

「はい」

よっし!学食だけでなく家でも食べられるって最高かよ!ぐふふ、マジで楽しみだぜ。なんて考えていると、他の人から物欲しそうな視線を感じた。いや、待って。みんなにあげたら俺が食う分がなくなるんですけど……。でも、結衣と葵にだけあ~んして、他の人には指を咥えて見ているだけっていうのも良心が痛む。…………はぁ~、仕方ない。あとで、オカズだけ追加注文するか。余談だが、みんなあ~んした後は非常に幸せそうな顔をしていたので、なんだかんだ良かったのかなと思いました。


午後に入り授業再開。まずは寝かせていた生地をラップの間に挟んで、めん棒で4~5mm厚に伸ばして好きな抜き型を使って型抜きした後は、オーブンシートを敷いた天板に並べて焼くだけ。焼き時間は12~14分なので、少しお喋りしていたらあっという間に焼き上がり。プリンの方も同時進行で進めていたのでほぼ同じタイミングで出来上がった。見た目は良い感じだけど、味はどうだろう?レシピ通りに作ったからマズくは無いと思うけど。周りを見ると続々と作り終えて、片付けをしているのが見えた。おっと俺達も片づけをしないとな。これが終わったら実食だ~!!


結論から言おう。味は可もなく不可もなく至って普通だった。素人が作るんならこんなもんだろうって感じ。他の班の人にもサプライズで俺達が作ったお菓子を配ったんだけど、美味しい美味しいって絶賛されてしまった。いやまて。俺が食った感想はさっき述べたが、普通でそこまで美味いって感じでもなかったから、そんなに美味しい?って聞いた所ハル君が作ったから美味しいんだよ!などどよく分からない回答を貰ってしまった。まあ、喜んでくれたならなによりです。これで調理実習は終わりだけど、俺達が座っているテーブルには大量の簡易ラッピングされたクッキーとプリンが置かれている。これは家族やバイト先の人、真白さんや先生、有馬先輩、優ちゃんあと真司にあげる分だ。いつもお世話になっているので、感謝の気持ちを込めて渡そうと考えている。喜んでくれるといいな。真司とかお前の手作りとかなんか気持ち悪い……とか言いそうだけど。でもさ、こうして自分で作ってみると改めてアリスさんの作るお菓子がいかに凄いかがよく分かる。どれだけ努力したらあんな美味しいお菓子を作れるのだろうか?勿論才能もあるのだろう。でも、才能に胡坐をかかず、血の滲むような努力を絶え間なく続けてきたからこそ今があるのではないだろうか?天才とは努力し続けられる人と言ったのは誰だったか。未来図は未だハッキリとはしないが、少しだけ道筋が見えた気がする。どんな道に進むことになろうと、努力し続けられる人になろう。そう心に決めた。

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