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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
46/163

No45

二月に入り寒さが若干和らいできた今日この頃。学校関連では生徒会選挙があってかなり盛り上がった。うちの学校は生徒会役員はこの時期に一年から決めて二年に進級したら一年間生徒会に所属することになる。今回は例年より立候補者が多くかったみたいで、熾烈な選挙戦を繰り広げた末の当選発表は凄かった!もう、国の選挙とか目じゃないくらい大盛り上がり。裏で暗躍した人や、不正ギリギリの攻防など色々あったが、今回は割愛させてもらう。話が逸れたが二月と言えば例のイベントがある。バレンタインデーだよ!前世では義理チョコすら貰えなかった悲しい高校時代……。記憶にあるのは小中学校時代にチロ〇チョコを貰ったくらいか……。いやさ、バレンタインデーなんてお菓子会社の陰謀だろ。そんなのに踊らされるなんて馬鹿げていると思わないか?チョコ貰えなくて悲しいなんて……、かなしく……、ないんだからね……。負の記憶が頭を支配してしまったが、切り替えよう。そう、実は明日が十四日なのだ。この世界なら義理チョコくらいは貰える……はず。最悪母さんと葵はくれるはずだから大丈夫。たぶん……たぶん。



another view point(葵視点)


明日はバレンタインだ。男性の少ないこの世界では、女性同士がいつもありがとうの気持ちを込めて贈るイベント。だけど私は兄がいる。そう、貴重な男性が身内にいるのだ。そんな人にあげるチョコが市販品であっていいのだろうか?否、断じて否。出来る事なら材料を厳選して作りたいが、私が求める材料の入手の難しさと金額があまりにも高額になる為貰っているお小遣いでは購入できないという情けない理由で市販のチョコを使う事になった。本当に悔しいし、私の力不足を感じるがそれでもできうる限り美味しいチョコを作るつもり。これでもかと愛情を込めて作って、大好きな兄さんに喜んでもらいたい。そう意気込みながらキッチンに立った。


another view pointEND



another view point(クラスメイト&結衣・楓視点)


授業が終わり今は放課後。普段は僅かに生徒が残っているだけのクラスには一人を除いて全員がいた。今日の話し合いの為に予定や部活をキャンセルして参加しているのだ。そんな大事な事なのか?と思うかもしれないが、今から話し合う事は一つ間違えれば戦争になり、血で血を洗う結末をもたらすかもしれない事なのだ。みんな緊張しながら開始を待っているとクラス委員長が教壇の上に立ち口を開いた。

「では、これよりバレンタインデーに関する緊急会議を行います」

その言葉に一同一斉に固唾を飲んだ。

「我がクラスには甲野君がいます。当然ですが、クラスのみんなが彼にチョコをあげたいと思っています。ですが、三十人から一斉に貰ったらどうなるでしょうか?困りますよね。第一食べきれないし、お返しも大変です。なのでAクラスみんなで一つのチョコを贈りましょう」

「委員長の言う通りだけど、それでも個人的にハル君にチョコあげたいです」

「わたしも」

「私も」

「それはみんな同じ気持ちです。ですが、明日は他のクラス、二年生、三年生からも貰うはずです。ざっと計算すると百は超える数を貰う事になるでしょう。これだけの数を食べる、お返しするのはほぼ無理です。逆に迷惑になるでしょう。最悪嫌がらせと取られる可能性もあります。それでも個人的に贈りたいですか?」

「それは……。ごめんなさい。止めます」

「他のクラスや先輩たちはどう動くんですか?」

「各クラスの担任から通達が出されているはずなので、クラス単位で贈るはずです。もちろん彼にあげたいという人のみですが」

「それってほぼ全員じゃないですか?」

「間違ってはいませんね。学校で一番他クラスや先輩達と交流していますからね。そんな中抜け駆けでもしようものなら…………。考えるだけで恐ろしいです」

「うぅ…………。委員長、さっきは止めてくれてありがとう」

「どういたしまして。クラスから死人を出す訳にはいきませんからね。話が逸れましたが、ではAクラスみんなで一つのチョコを贈るという事で良いですか?」

「はい」

こうして本人があずかり知らぬ所で決まっていった。


another view pointEND



another view point(Cafe & Bar Meteor視点)


「明日のバレンタインだけど伊藤はどうするの?」

「どうって?」

「甲野君にチョコはあげるの?」

「いや~、面倒だからあげないかな。佐伯は?」

「私はあげるよ。いつもお仕事を頑張っているし労いも兼ねてね」

「そっか。じゃあ私の分も一緒って事でお願い」

「はぁ~。甲野君悲しむぞ」

「そんな事無いでしょ。他の人からも貰えるだろうし」

「お前なぁ……。考えてもみろ。他の人からは貰ったのにお前からは貰えない。なんて薄情な人だ、アリスさんがこんな酷い人だとは思わなかったってなるぞ」

「…………それはイヤ。想像したら泣きたくなった」

「だろ。ということでお前も渡してあげなさい」

「そうする。市販品より作った方がいいかな?手作りだと勘違いされないかな?」

「勘違いも何もお前は……。いや、なんでもない。パティシエなんだし手作りでも問題にはならないと思うよ。あまりにも凝った作りだとんんっ?ってなるけど」

「そっか。じゃあシンプルな感じで作ろうかな。アドバイスありがとね」

「どういたしまして。ちなみに今日作るの?」

「休憩時間に下準備をして店の営業が終わったら作ろうかなって思ってる」

「分かった。じゃあ帰る時は戸締りよろしく」

「了解」


another view pointEND



another view point(真白視点)


明日はバレンタインデーです。普段は学校のクラスメイトに渡すだけでしたが、今年は違います。そう、悠様にお渡しするのです。悠様は人気者なので色々な方から貰う思いますが、(わたくし)も負けられません。普段はお菓子作りなどしませんが、今回は手作りチョコに挑戦です。レシピ本を見ながら、試行錯誤していますが未だに納得できる物は出来ていません。例え徹夜になっても絶対に満足いくチョコを作って見せます。悠様の喜ぶ顔を思い描くだけで、疲れなんかどこかにいってしまいます。風の噂ではバレンタインデーに告白するという伝統があったらしいですが、羨ましいです。もし……、悠様に告白されたら私は天に召されるでしょう。あまりの嬉しさに。今も想像しただけで頬が熱くなり、胸の動悸が止まりません。………夢想から戻り時計を見ると一時間程経っていて驚きました。このまま夢の世界に浸っていたい気持ちをグッと抑え込みお菓子作りを再開しましょう。たっぷりと愛を込めたチョコをお渡しするために。


another view pointEND



another view point(有馬柚子視点)


今クラスでは甲野君にあげるチョコをどうするかで、話し合いが持たれている。私としては合同で渡すのではなく個人的に渡したかったが、先生からの通達によりそれは駄目になった。これは私達だけではなく、高等部全体の取り決めらしくもし抜け駆けしようものならそれは恐ろしい目にあうだろう。まあ、彼は学年関係なく交友があるし、本人は知らないと思うけどファンクラブも存在する。かく言う私もファンクラブに入会しているんだけど。ちなみに入会には厳しい審査があり、それを潜り抜けた猛者のみが在籍している。ルールも厳格に定められていて、破ろうものなら死よりも重い罰が課せられる。マフィアの掟よりも重いのだ。これ以上はルールに抵触するので話せないけど、どんなものかは察して欲しい。さて、チョコに関してだけど市販品か手作りかで揉めている。

「手作りは難しいんじゃない?これだけ人数がいるとまともに作業も出来ないと思うし」

「でも、市販品だと味気ないし気持ちが込ってなくない?」

「う~ん……。そう言われればそうなんだけど……」

「じゃあ、有名店の高級品を渡せば少しはマシじゃない?」

「まあ、確かに。安物を渡すよりも気持ちは伝わるかな」

「ほんとは手作りが良かったけどね」

「それは仕方ないよ~。じゃあ、みんなでお金を出し合って買おう」

「んっ。了解。でもそれだけだと物足りないかな」

「じゃあさ、メッセージカードを付けたらどうかな?みんな一言ずつ書いてチョコと一緒に渡すの」

「ナイスアイデア!それ採用。じゃあこんな感じでいいかな?」

「オッケー」

ふう、なんとか纏まってよかった。今からお店を探して買いに行かないと。みんなも同じ思いなのかそれぞれスマホを手に良い感じのお店を探し始めた。


another view pointEND



another view point(谷口莉子視点 担任)


私達教師は明日のバレンタインデーに向けて奔走していた。本校には多数の男子生徒が在籍しているが、一人を除いたすべての生徒は月一登校のみ。そしてその一人の生徒は毎日登校している。これは開校以来初の事で私達教師もどのように対応すべきか等手探り状態で日々を過ごしている。そんな中(くだん)のバレンタインデーだ。彼に学校中の女子生徒がチョコを渡したがることは火を見るよりも明らか。なので対策として各クラスで一つ渡すというルールを制定して、今日の帰りのHRで各クラスの委員長に担任が伝えている。だが、抜け駆けする人やルールを無視する生徒がいないとも限らない。なので今日の放課後から明日の放課後までは生徒たちの動向をしっかり見て、ズルしている人がいないか確認しなければいけない。教師と言う職業は想像よりずっと大変なのだ。だけど大変な事ばかりではない。実は担任の権限というか特権でこっそり男子生徒にチョコをあげるつもり。本当は駄目だし、バレたらちょっと……いや、かなり面倒な事になるけどそこは役得という事で、ね。もちろん市販品を渡すなんてことはしない。手作り一択。彼とは年は離れているけど、魅力的だし時折見せる大人な面や年相応な可愛らしい所も好きだ。教師としてどうなの?と思わなくもないが、手を出さなければセーフ……よね?さーて、さっさと仕事を切り上げてチョコ作りをするぞーー!!


another view pointEND


とうとうやってきた二月十四日。結果から言うと、母さんと葵以外の人からもチョコを貰えました。今は自宅の部屋で一人感動に打ち震えています。俺が美人・美少女からチョコを、しかも手作りと思わしきものや有名店の高級品を貰えるなんて夢じゃないだろうか?そう思って何度自分の頬を抓った事か。何回もし過ぎてちょっと赤くなってしまったよ……。でも、本当に嬉しい!なんならこのまま死んでも悔いはないくらい嬉しい。貰ったチョコの総数は紙袋一つ分。流石に一人で食べきるには厳しい量だが、母さんに聞いた所チョコレートは日持ちするらしいので、無理がない範囲で少しずづ食べようと思っている。全部食うの?と思われるかもしれないが、相手の好意を無下にする行為はしたくない。全身で感謝しながら頂くつもりだ。虫歯?糖尿病?あぁ、確かに恐ろしい。出来る事なら避けたい所だ。だが、考えてみて欲しい。()()()()()()からもらった物をぞんざいに扱う事が出来るのか?出来るという勇者はいないだろう。俺も無理だ。なので全て美味しく頂く所存であります。こうして色々あったバレンタインデーイベントは終わりを迎えた。裏では色々あった事をこの時の俺は知る由も無かった。

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