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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
42/163

No41

さて、無事退院したわけだが驚いた事がいくつかある。

一:ローカルニュースで俺が暴行されたことがニュースになっていた。

二:真司の母親から電話が来た。

まず、一から説明しよう。自宅に帰ってきて、着替えて一息つきつつテレビをつけると暴行事件が取り上げられていたんだ。内容はこんな感じ。

「昨夜二十一時過ぎに繁華街近くの路地で男性が暴行を受ける事件が発生しました。幸い男性は軽傷との事ですが、犯人は捕まっておらず、また襲った動機も不明の為更なる被害者が出ないよう行政より男性の外出は極力控えるようにとの通達も出ました。この事件について坂東さんはどう思いますか?」

「許せませんね。ええ、本当に許せません!いかなる動機であれ暴力を振るっていい理由にはなりません。しかも男性に暴行するなど言語道断!今回は軽傷との事ですが、もし大怪我や最悪死亡したらこれは六年前の通称孤児院事件に匹敵する大事件になっていた所です」

「そうですね。孤児院事件の際は男性が加害者として逮捕されて世間を震撼させましたね。今回は被害者という立場ですが、少なからず波紋を呼ぶでしょう。一刻も早い犯人逮捕を願います」

「本当にそうですね。それと犯人は若い女性との情報がありますが、十代だった場合少年法に守られているから問題ないなどと思わない事です。男性特別法に基づき実名・モザイク無しで報道します。個人的には即刻死刑にして欲しい所ですが」

「んっんん!坂東さん貴重な意見有難うございました。また、一部不適切な発言があった事をお詫びします」

こうして、ニュースは終わったんだが、坂東さんかなり過激だな。相当腹に据えかねているんだなとは思うが、即刻死刑は流石にマズいだろ。暴行したら死刑とか……、恐怖政治じゃないんだからさ。でも、これはちょっと……、問題が大きくなり過ぎじゃないか?たかが殴られただけでニュースになるとか……。


次は二の説明に移ろう。これはニュースを見終わってすこし経った位に電話がかかってきたんだ。通知を見ると真理さんからだった。思わず背筋を伸ばして電話に出たのは内緒だ。

『もしもし。真司の母の山本真理です』

『こんにちは。お久しぶりです。お元気でしたか?』

『ええ。壮健でしたよ。ところで甲野君、昨夜暴行をうけたって聞いたんだけど大丈夫なの?』

『病院で検査してもらいましたが、問題なしでした。まだ、殴られた頬は少し痛みますが』

『そう……。まずは無事で本当に良かったわ。一報を受けた時は心臓が止まるかと思ったのよ』

『ご心配をおかけしてすみませんでした』

『いえ、甲野君が謝る事じゃないわ。謝るべきは犯人よ』

『そうですね。一刻も早く犯人には捕まって欲しいです』

『私の方でも色々と動いているから、そう時間はかからずに捕まると思うわよ』

『えっと……。警察関係に知り合いでもいるんですか?』

『ちょっと、表立っては言えない知り合いに捜索を頼んだのよ』

『それって……、八九三ですか?』

『違うわよ~。そう言った方面のアンダーグラウンドな人じゃなくて、う~ん……、別方面で裏稼業をしている人達ね』

え~……、情報屋とかかな?なんでそんな人達と繋がりあるんだろう?でも聞いたらマズいよな。まあ大企業の経営者には色々あるという事で終わるべきだな。

『そ、そうなんですね。なんか本当にありがとうございます』

『気にしなくていいのよ。私がしたくてしていることだし』

『でも色々とお世話になっているので、今度お礼に伺いますね』

『あら!嬉しい。じゃあ、予定空けておかなくちゃ』

『じゃあ、真司とも話して日程が決まったら連絡します』

『お願いね。長話もなんだし、ここら辺で終わりましょうか』

『はい。では失礼します』

まさか、真理さんから電話が来るとは思わなかった。ていうかさ、真司は未だに連絡してこないのはなんで?友達だと思っていたのは俺だけだったのか?俺たちの熱い友情はどこにいった~!!くっそー。

まあ、そんなイラつきも覚えたが、だからといって俺から連絡することはない。あとでこれをネタにしてイジってやろうと画策中。

こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か(ネタが古すぎ)


怪我も大したことはなかったし、いつも通りバイトに行こうとしたんだが、葵が必死で止めてきた。理由を聞いてみるとこんな答えが返ってきた。

「まだ犯人も捕まっていない状況で出歩くのは危険です」

もっともな意見だ。だが、俺も馬鹿じゃない。対策として上がりの時間を夕方に出来ないか店長に相談するつもりだ。明るい時間に帰るなら安心だろう。と言った事を説明したんだが……。

「それでも心配です。なのでいつも通り行き帰りは同行します。あと帰りはタクシーで帰りましょう」

「いや、流石にお金が勿体ないだろ」

「なにを言っているんですか。兄さんの安全が保証されるならはした金ですよ」

「さいですか」

葵に押し切られる形で帰りはタクシーというセレブ待遇になった。

そうした話が合ってバイト先に向かった訳だが、着替えて仕事を始める前に店長に上がりの時間を夕方に変更出来ないか聞いた所二つ返事でOKが貰えた。一応犯人が逮捕されたらいつも通りに戻す予定ではある。そして仕事を始めたんだが、常連さんから心配したんだよと沢山声をかけられた。ニュースでもやっていたので事件の事は知っているとは思っていたが、なんで被害者が俺だって知っているの?どこから情報が漏れたの?と疑問に思い聞いてみると、どうやら独自のネットワークがあるみたいでそこから知ったらしい。なにそれ、こわい。とは口には出さなかったがちょっとやめて欲しいですね。俺のプライバシーはもはや存在しなかったのか……と思わずにはいられない。



例の事件から二週間が経った。その日はいつも通りに家でゴロゴロしてたんだが、スマホが着信を知らせてきた。寝転がっていた体を起こしてスマホを手に取ると画面をタップして電話に出た。

『もしもし』

『もしもし。甲野君?』

『はい。そうです』

『私は○○警察の△△刑事です』

『ああ。いつもお世話になっております』

『いきなり電話してごめんね。今時間大丈夫?』

『はい、大丈夫ですよ。なにかありましたか?』

『暴行事件の犯人が捕まったよ』

『えっ!?本当ですか?』

『ああ。いま署で詳しい動機などを取り調べ中だ』

『そうですか。よかったです』

『詳しくは裁判の結果によるが、恐らく実刑判決だと思う』

『執行猶予無しですか?』

『ああ。普通は執行猶予がつくんだが、男性への暴力という事で懲役五年~六年の実刑だろう』

『かなり重いですね。罪状は恐喝と傷害罪くらいですよね』

『そうだね。普通ならこんな重い刑にはならないよ。これも君が男性だからだよ』

『…………。まあ、とにかく犯人が捕まってよかったです。連絡ありがとうございました』

『うん。じゃあ私も仕事があるからこれで失礼するよ』

通話が終わり、部屋には静寂が訪れた。罪に対して余りにも重い刑罰。その根底には貴重な男性を保護する為という思いがあるのだろう。だが、あまりにも不平等ではないか?仮に被害者が女性だったら執行猶予付きの軽い刑で済んだはずだ。男女不平等、いくらなんでもこれは歪すぎる。よく破綻しないものだと思うが、どこかしらで綻びはあるはずだ。だが、上手い事隠すかしてこのシステムを維持しているのだろう。この世界はあまりにも、そうあまりにも歪んでいる。ここでふと思い浮かんだ。秋頃に調べた入れ替わり現象はこうした性差による不平等が生んだ歪みが原因で起きたのではないのかと……。この件に関しては未だに分からない事だらけだが、一つの仮説としては成り立つだろう。なにはさておきこうして事件は幕を下ろした。暖房も焚かずに冷え切った部屋の中で独り言ちる。

なんで俺はこんなに事件に巻き込まれるのだろう?これじゃあコ〇ン君か金田〇少年みたいじゃないか。凶星の元に生まれたのかと疑いたくもなる。俺にはじっちゃんやア〇サ博士はいないんだぞ。そう呟いた声は誰にも届くことなく静かに消えていった。

Twitter始めてみました。ねこネコ猫で検索すれば出てくると思います。(@neko3_neko_neko)

本作に関するちょっとした裏話?的なのを呟いてみたりしています。

あと、無いと思いますが更新が遅くなる時も呟きます。


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