No36
はい、本日は二十五日です。クリパは夕方からなので準備は昼少し前から開始しています。店内を飾り付けてテーブルや椅子を移動したりと結構忙しい。まあ、一番忙しいのはアリスさんだろう。ケーキ作りに料理の準備と数日前から仕込みをしたり、試作品を作っては悩んでいたりと本当に大変そうだった。本当にありがとうございます。ちなみに飾り付けや、備品の移動などはクリパ終了後に元に戻す為そこら辺も考えて作業している。明日から通常営業なんだから当たり前だが。さて、準備に関しては特に面白いことも無かったので夕方まで時計の針を進めましょう。チクタクチクタク……ポーン。はい!夕方になりました。続々と参加者が集まり全員揃った所でいよいよ開始です!!
「え~、本日はお忙しい中お越し下さりありがとうございます。僭越ながら挨拶は私甲野悠が務めさせていただきます。美味しい料理とアリスさん渾身のケーキ、そして店長秘蔵のお酒もありますのでどうぞお楽しみください。では、レッツクリスマスパーティー!!」
挨拶を終えてふぅと一息。参加者はさっそく料理を取りに行ったり、コスプレに関しての話をしたりしている。言うのが遅れたが、コスプレしているのは学校関係者と葵、店長とアリスさん、真白さんに俺だ。商店街の人は私服で参加している。ゲストに変な恰好をさせる程俺は鬼畜じゃない。えっ?他の面々はいいのかって?だいじょぶ、だいじょぶ。なんせ、俺が見たかったから。普通に考えて、見たくない?見たいよね!よし!ここでサラッと感想を述べよう。
ミニスカサンタ、トナカイ、小人の妖精、和風サンタ、雪ん子以上。
……痛い、痛い。殴らないで!そんなに怒る事ないじゃない……。分かったよ、真面目に説明するよ。まず、サンタからいきます。着ているのは結衣と楓。胸元が開いていて、谷間がバッチリ!そして、スカート丈は制服と同じくらいで短い。楓って何気におっぱいでかいんだよね。服の上からだとあんまり分かんないんだけど、所謂隠れ巨乳に近いのかな。推定Dカップなのでギリギリ巨乳にはならないと思う。結衣はどう見ても巨乳だけど。こう……、ボーン!って感じ。オノマトペで悪いがそれ以外に良い表現が見つからなかったんだ。次いで有馬先輩と先生はトナカイ。エロさは無いが、兎に角可愛い。そしてアリスさんは小人の妖精だ。スウェーデンではサンタクロースのお手伝いをする小人の妖精をトムテと言うらしくて、トムテがクリスマスの主役らしい。格好は赤い帽子にとんがった耳で灰色の顎髭は付けていない。本来は顎鬚があるんだが、そこは女性ということで見逃して欲しい。そんなアリスさんだが、まあ似合うし可愛い。最初見た時は本物の妖精かと思ったくらい可愛くて綺麗で、美しかった。店長はクリスマスっぽい格好をしていた。赤と白の配色でふわふわした素材の服を着ているんだが、これをコスプレといっていいのかは疑問である。次いで真白さんは和風サンタだ。文字通りでサンタ帽に紅白の和服+プレゼントを入れる袋まで持っているという気合の入れよう。言葉だけだとどうかと思うが、実際見てみると和洋折衷が見事でこれはアリだなと思わさられる。普段の大和撫子な感じと違って、カワイイが溢れている。GOOD!トリは葵だ。彼女はなぜか雪ん子のコスプレをしている。恐らくだが、クリスマス=雪となり雪=雪ん子となったのではないだろうか?クリスマスと関係ないじゃんって?ハハハハハ!目ん玉ほじくってよ~く見やがれ!可愛いは正義なんだよ!クリスマス?そんなの関係ねぇー、そんなの関係ねぇー、はい、おっ〇っぴー!
さて、感想を述べ終わったので、俺もご飯を食べようと思う。皿をもって最初に取った料理はローストチキン。次はローストビーフにミートローフ。皿が肉だらけになってしまったが気にしない、いや気にしては駄目だ。早速頂きます!…………うっま~~い!!なにこれ!?学食より美味いんだけど。あの超絶ハイレベル、ハイクオリティの学食を越えるとはアリスさん恐るべし……。うまし、うましとひたすら肉ばかり食べていたら、スッと横合いから野菜サラダが差し出された。そちらの方に向くと葵の姿が。
「兄さん。お肉ばかりじゃなく、野菜も食べないと駄目ですよ」
「だって、肉美味いんだもん」
「気持ちは分かりますが、後で胃もたれしますよ。なので野菜も食べましょうね」
「うぅ、分かったよ。てか前にもこんなやり取りあったような……」
「そうなんですか?その方に今度お礼を言わないといけませんね」
「やめてくれ~。そんな事されたら子供みたいで恥ずかしい」
「ふふっ。兄さん可愛い」
ぐぐぅ~、どうせ俺は子供ですよ。少し不貞腐れながらも肉、野菜と交互に食べていき、ちょこちょこ他の料理も頂いていたら腹八分目。残すはケーキのみとなった……が、ここで食休みも兼ねて少し参加者とお話をしよう。
「みなさん楽しんでいますか?」
「あら、ハルちゃん。お料理も美味しいし、店長さんや伊藤さん、先生とも楽しくお話して盛り上がっていた所よ」
「それはよかったです。まだ、時間はたっぷりあるので楽しんでください」
「ありがとうね。いつもは仕事でクリスマスなんて関係なかったから、こうした機会を作ってくれて凄く嬉しいわ」
「いえいえ。こちらこそ、普段お世話になっているので、少しでもお返しできたなら嬉しいです。それでは引き続き楽しんでいってください」
よし。次はいつものメンバーの所に行ってみよう。
「どう?楽しんでる?」
「あっ、ハル君。うん、楽しんでるよ~」
「料理も美味しいし、色んな人とお話しできて楽しいよ」
「楽しんでるよ。それに料理が美味しくて食べ過ぎちゃって少し苦しいくらい」
「私は食後のお酒が楽しみで、今から待ち遠しいよ~」
「私もみなさんと楽しくおしゃべり出来て嬉しいです。改めて誘ってくれてありがとうございます」
結衣・楓・有馬先輩・先生・真白さんの順で答えてくれた。みんな楽しんでくれているようでなにより。あれ?葵はどこ行ったんだ?
「葵の姿が見えませんが、どっか行ったんですか?」
「葵さんなら、厨房にアリスさんと一緒にケーキを取りに行ったわよ」
「そうですか。言ってくれれば俺が行ったのに」
「葵さんなりに気を使ったんじゃない?」
「そうなんですか?」
「えぇ。甲野君が主催者として挨拶したり、動き回っていたから少しでもパーティーを楽しめる様にってね」
「ありがたいです。あとでお礼言っておきます」
「そうね」
うーん、本当に良くできた妹だ。教えてくれた先生にも感謝です。さてさて、そんな会話をしている内に本日のメインのケーキが登場した。人数が多い為サイズも特大のが二個もある。アリスさんがナイフでサッと切り分けて、皿に置いていく。しばらくして全員の手にいきわたると、それぞれ頂きますと声を上げながら食べ始めた。…………美味い。只々美味い。それ以外の言葉は必要ない。この至高の一品を作り上げる為に試行錯誤して、悩みながら作っていたのを知っているだけに食べた時の感動は一入だ。周りの面々も黙々と食べている。恍惚の表情を浮かべながら。ハッキリ言ってこのケーキを食べれば美味し〇ぼの海原〇山も膝を叩くに違いない。うっ、美味い。これはまさに至高の一品だ!と声を大にして言うだろう。そんな中おかわりもありますよとの声に一斉に動き出しのは言うまでもないだろう。かくいう俺もおかわりを貰うためすぐに動いたしな。…………こうして、美味しい料理とケーキを楽しんだ後は談笑タイム。大人の人は店長秘蔵のお酒を飲みながら、未成年はジュースを飲みながら話に花を咲かせた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、終わりを迎える。
「みなさま、お楽しみ中の所申し訳ありませんが、時間になりましたのでそろそろお開きにしたいと思います。今日は本当に楽しかったです。来年もこうしてみなさんと集まってパーティーが出来たらなと思います。本日は本当にありがとうございました」
こうしてクリスマスパーティーは終わった。参加者が各々挨拶をしながら帰っていく。そして店に残されたのは商店街の人たち以外の面子。これから片付けや、明日の営業に向けての準備などがあるんだが、どうして残っているんだろう?と疑問に思っていると
「私達もお手伝いするよ」
「でも、悪いよ。お店の事だし」
「ううん。気にしないで。今日はすっごい楽しかったしそのお礼って事で。ねっ」
「う~ん……」
唸りながらチラッと店長を見ると頷いていた。
「じゃあ、お言葉に甘えて手伝ってもらおうかな」
「まっかせて~」
結衣が元気いっぱいに返事をしたあと、腕まくりをしてやる気満々みたいだ。さて、始めるとしますかね。
みんなでやるとあっという間に終わってしまった。予定よりも一時間程早く終わったのでアリスさんは大喜び。さっさと更衣室に着替えに行った。それにつられる様に他の女性陣も私服へとチェンジする為更衣室へ。俺は周りに誰もいない為隅っこでささっと着替えてしまった。多少行儀が悪いが見逃してくれ。
全員着替え終わったので、戸締りの確認をして外に出る。ドアの鍵を閉めてワイワイと話しながら駅へと向かって歩いていると、頬になにか冷たい物が当たった。そっと指で触れると溶けて冷たい水滴に変わり流れ落ちていく。空を見上げると、ハラハラと白い雪が舞い下りてきていた。誰ともなく口を開き
「ホワイトクリスマスだね」
踊るようにフワフワ、ハラハラと純白の結晶が止め処なく舞い降りる。そっと吐いた息は白い軌跡となって空へと消えていった。




