No34
「ここで臨時ニュースをお伝えします。十二月に入り寒さも厳しくなってきた今日この頃ですが、学生の服装も衣替えして冬服になっています。それに伴い黒ストッキングからタイツに変更する生徒が増加しているという調査結果が出ました。これについては坂東さんどう思われますか?」
「そうですね。単純に考えれば防寒の為でしょう。ですが、今年の春から学生間で大流行した黒スト現象が冬になった途端に終焉するとは考えずらいです。学校側から何かしらの圧力があったんではないでしょうか?」
「圧力ですか。となると話はかなり複雑になりますね。その背景にはどの様な事が考えられますか?」
「う~ん。情報があまりに少ない為確定的な事は言えませんが、脚の冷えは女性にとって大敵です。なのに薄いストッキングを履いているとなると、P〇A等の組織が黙っていません。関係各所にとやかく言われる前に手を打ったという所ではないでしょうか?」
「なるほど。では、黒スト現象は今冬で終わるとみてよろしいでしょうか?」
「いえ。あくまでタイツへの変更は一時的なものであり、来春からまた流行ると思います。なにせ、男子学生が大好きと明言したのですから、これは一過性のブームでは終わらずにスタンダードになるでしょう」
「坂東さん有難うございました。今後詳しい情報が入り次第速報でお伝えします」
リビングでソファに座りながらテレビを見ていたら、冒頭のニュースが流れだした。臨時ニュースという事で身構えていたが、内容は上記の通り。思わずため息が零れてしまった。てかさ、男子学生って俺の事じゃね?
今年の春に結衣や楓に黒ストッキングとニーソが好きって言ったし。……まさか、全国的に流行しているなんて思ってもみなかった。いや、嬉しいんだよ。嬉しいんだけど……、ちょっと複雑。こんな下らない事を臨時ニュースで流すテレビ局に対しても複雑な思いを抱く。
そして、黒スト協会会員No3の俺から言わせてもらえれば、色は黒だけではなく、白・グレー・ブラウンも好きだ。だだベージュは認めない。これは協会規則にも載っている事だ。さて、諸兄はストッキングとタイツの違いを知っているだろうか?そんな初歩的な事は知っているという方も改めて聞いて欲しい。
タイツとストッキングは、デニールと使用目的の違いによって区別されている。
デニールとは、タイツやストッキングなどのレッグウェアに使用される糸の太さ(重さ)の単位のことをいい、糸が太くなるほど生地が厚くなり、数字が大きくなっていく。生地が厚くなる(デニール数が高くなる)ほど、防寒性が高くなり暖かいものになるというわけだ。一般的に25デニール以上ものが「タイツ」と呼ばれ、25デニール以下のものが「ストッキング」と呼ばれている。
また、冬に使用するタイツは85デニール以上のものが一般的となっている。
以上が、ストッキングとタイツの違いだ。これを踏まえた上で俺の見解を述べる。
タイツにはストッキングのような美脚効果はなく、見た目はただの黒い物体になってしまう。これは致命的でそこに美しさや魅力は皆無。また、ストッキング独特の艶感や触り心地も無くまさにいい所が一つも無いのだ。そんな物を好きになるはずがないではないか。また、イラストでタイツとストッキングを混同している絵をよく見かける。これは非常に由々しき事態で違いを理解していないが為に起きる問題であり、見た目は25デニールなのにタイツとタグが付けられていたりすると発狂ものである。我が黒スト協会としても広報活動を頑張っているのだが、問題は非常に根深い為なかなか成果が出せないでいる。会員一同忸怩たる思いだ。
そして、俺が通う学校でも生徒の多数がタイツに履き替えてしまっている。もう学校に通うのを止めようかな……、なんて思っていたがここで一筋の希望の光が降り注いだ。光の名は結衣・楓・有馬先輩・葵だ。
彼女たちは冬にも関わらず、ストッキングで居続けてくれたのだ!結衣はニーソからの変更だが無問題!こうして、あわや不登校になりかかっていた俺は救われました。(ここまでで、約千七百文字も使ってしまった……)
無駄に文字数を使ってしまったのでここからは真面目に書く。ニュースでも言っていたが、季節は冬、十二月に突入した。期末試験も無事乗り切り、あとは冬休みまで頑張るのみ。十二月は師走と言われるだけあって、バイトも忙しく日々あくせくと働いている。寒さも厳しくなってきて、暖を取る為にお店に来るお客様が増える為だ。そして、お店でも冬限定メニューが登場した。コーンスープだ。毎年冬になると販売するらしいが、大好評みたいでほとんどのお客様が注文する人気商品。俺も飲んでみたが、滅茶苦茶美味い!コーンの粒がゴロゴロ入っていて、食べ応えがありこれだけである程度お腹が膨れるほど。聞いた話ではアリスさんの提案で商品開発をして、発売にこぎつけたらしい。う~む、やりおるな。
余計な事を考えつつも仕事をしていると、ドアベルがカランカランと鳴り来店を告げた。いらっしゃいませと声を掛けつつ向かうと、そこには見知った人が。
「真白さん、いらっしゃいませ」
「こんばんは。少しお邪魔しますね」
「邪魔だなんてそんな、そんな。カウンター席とソファ席どちらにしますか?」
「カウンター席でお願いします」
「分かりました。では、お席にご案内します」
席に案内しつつ、そっと真白さんを見ると制服だった。あれは、某有名お嬢様学校の制服だったはず。確か私立高で、高い学力と家柄、その他厳しい審査を経て入学出来るという話を聞いた事がある。せっかくの機会だし聞いてみよう。
注文の品を持って行った際に聞いてみた。
「真白さんの制服ですけど、○○学校のですか?」
「はい。良くお分かりになりましたね」
「お嬢様学校として有名ですから。聞いた話では入学にかなり厳しい審査があるみたいですけど、本当ですか?」
「そうですね。一般の学校と同じように学力は必須として、家柄・親の仕事・兄弟姉妹の通っている学校・受験する当人の身辺調査等が行われます。それら全てをクリアして入学することが出来ます」
「うわ~……。やり過ぎなくらい厳しい……」
「伝統ある学校ですので仕方ない面もあるとは思いますが、私も同感です」
「そんな所に入学できる真白さんも凄いですよね」
「いえいえ。そんな事はありませんよ」
「またまた、ご謙遜を。話は変わりますが、今日は学校帰りですか?」
「はい。学校での用事を済ませていたら、こんな時間になってしまいました。普段はもっと早く家に帰るのですが」
「なるほど。その用事があったお蔭で俺は真白さんの制服姿を拝めたという訳か」
「そういえば、普段は着物姿で制服姿はお見せしたことはありませんでしたね。どうでしょうか?」
そういって、スッと立ち上がり見せてきた。制服はブレザータイプで下は定番のプリーツスカート。首元を飾るのはリボンでは無くネクタイだった。足元は黒のローファーを履いている。そして、黒のストッキング。スカート丈は短く、うちの学校の生徒とほぼ同じくらいだろうか。ちなみに腰の部分を折り曲げて丈を短くすると、そこだけ少し膨らんで不格好になるので調節しやすいというメリットはあるが、個人的にはお勧め出来ない。最初の採寸する段階で丈を決めて作るか、自分で裁縫して短くするかした方が綺麗に見えるので可能ならそちらの方法を取るべきだ。なぜそんな事を知っているかって?ふっ、それは秘密だ。実は伏線で後で回収するなんて事も無いのであしからず。さて、感想を伝えるか。
「とても似合っていますよ。和服姿も好きですが、洋服も可愛くて好きです」
「か、可愛い……。好き……」
「真白さん?大丈夫ですか?」
「あっ……、すみません。嬉しくて少しぼーっとしてました」
「ははは。でも、印象が和服の時とはガラッと変わりますね」
「そうですね。洋服の方が年相応に見えるとはよく言われます。和服の時は年上に見えるみたいで」
「あっ、それ俺も思いました。最初に見た時は年上だと思いましたもん。実は同い年だって知った時は驚きましたよ」
「そうでしたか。もう少し若作りした方が良いのでしょうか?」
「いやいや、若作りって……。俺は必要ないと思います。そういうギャップも魅力なので敢えて無くす事もないのではないかと」
「ギャップですか……。そういう見方も出来るのですね。有難うございます」
「いえ、お気になさらずに」
真白さんが来店した時間帯は、比較的空いているのでそのまま暫く話していると、なにやら言いづらそうにしながらも真白さんが口を開き聞いてきた。
「あの……、クリスマスはどう過ごすのでしょうか?」
「家族やクラスメイト、商店街のお世話になっている人たちでクリスマスパーティーをする予定です。なんと、会場はここなんですよ」
「へぇ~。という事は当日はCafe & Bar Meteorは休業ですか?」
「そうですね。終日貸し切りにするって店長が言ってました」
「羨ましいです。私はなにも予定が入っていなくて……」
「あの、聞いていいのか分からないんですけど、クリスマスってキリスト教の祭事ですよね。神道に属する真白さんが参加しても大丈夫なんですか?」
「日本においてクリスマスは、宗教的なものではなく一つのイベントとして浸透している為、特に問題はありません。それに神道は八百万の神という考えがありますので、仮に宗教的な祭事だとしても、ギリギリセーフなはずです」
「確かに欧米ならいざ知らず、日本では完全に年末のイベント扱いですもんね。キリスト教関係者からしたら発狂しそうな現状ですけど」
「そうですね。前述したように私がクリスマスを過ごすことは問題ないので、あの……、もしよろしければ私もクリスマスパーティーに参加してもいいですか?」
おずおずと伺うように聞いてきたが、答えは決まっている!
「もちろん、大歓迎です。是非参加して下さい」
「はい!ありがとうございます」
ぱっと花開くような笑顔で答える様子を見て、あっ……これヤバイ。可愛すぎてハートブローケンされてしまった。もう!ズルイ!
こうして真白さんのクリパ参加が決まった。




