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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
32/163

No31

山本邸だが滅茶苦茶でかい。入り口を通り抜けると、デカい庭があって色とりどりの木々や植物が植えられている。当然しっかりと手入れされていて、美しい。

そんな庭園を眺めつつ進むと、これまた美しい洋風の建物が見える。外観はタイル張りで構造は恐らくRCだろう。一般家庭では木造が多いが、RCでこの規模の建物となると総工費がいくらになるのやら……。ちなみにRCとはなんぞや?と言う方に説明すると鉄筋コンクリート造の事だ。木造と比べると工費はべらぼうに高くなる。一般的にはマンションや学校など大規模施設の構造として使われる。

さて、がわは分かったので次は内部だ。


豪華な玄関扉をくぐり中に入ると、広々としてエントランスホールがある。しかも天井にはシャンデリアが吊るされていて、ザ・金持ち!と言った感じだ。

そして、中央には階段がありそこから二階に繋がっているみたいで、案内されるまま二階に上がる事になった。広い通路を歩きながらキョロキョロと辺りを見回してみた。いかにもな調度品が飾られていたり、花が活けられていたりとまあ、想像通りと言った所か。しばらく歩くと扉の前でメイドさんの歩みが止まった。

「こちらが、真司様のお部屋になります」

「はい。ここまで案内して頂きありがとうございました」

「いえ。これも私の仕事ですので。では、これで失礼致します」

そう言いながら一礼してメイドさんは去って行った。


よし、さっさと部屋に入るかと思い、扉をノックしたらすぐに返事が返ってきた。

「どうぞ。中に入って下さい」

ゆっくりと扉を開けて中に入ると、真っ先に目に飛び込んできたのが全面ガラス張りの壁だ。(建築業界ではCW(カーテンウォール)と言われている)

窓から柔らかな日差しが部屋に入り込み、明るく照らしていた。

「おっ、来たか。久しぶりだな」

「おう、久しぶり。元気してたか?」

「まあまあだな。勉強して、ゲームしてって感じだな」

「そっか。変わりないようでなにより」

「ここに来るまでに道に迷ったりしなかったか?迎えの車を出すって言ったのに断ったから、ちょっと心配してたんだ」

「スマホで地図見ながら来たから無問題。それより、お前の家デカすぎだろ。マジでビビったわ」

「そうか?住んでると特にデカいとか感じないけどな」

「はぁ~。それ感覚が麻痺してんだよ。あまりに豪華だから、どこぞのお貴族様かと思ったぞ」

「親が金持ってるってだけだよ。俺はしがない学生だしな」

「親御さんって確かMond und Himmelの経営者だったっけ?」

「そう。製薬とか金融とか色々やっている会社ね」

「かぁ~、羨ましい。もう生まれた時点で勝ち組じゃん」

「んなことねぇよ。親からは成人するまでは面倒を見るけど、成人後は一切面倒見ないって言われてるんだぜ。勝ち組どころか、今必死になって将来の為に頑張っている最中だっての」

「なるほど。世の中そんなに甘くないって事か」

「んだな」

ふ~む。てっきり甘やかされて育てられてるんだろうな~なんて思っていたが、存外厳しい親御さんみたいだ。でも、考え方には共感できるな。きっと大切に思っているからこそ、厳しく接しているんだろう。

「んじゃあ、なにする?ゲームでもすっか?」

「いや、まずはお部屋拝見と行こうじゃないか」

「男の部屋なんてみても面白くないぞ」

「まあまあ、そう言わずに」

悪徳商人みたいに揉み手をしながら言ってみる。

「しょうがねぇなぁ~。じゃあ案内すっぞ」

こうして真司のお部屋拝見がスタートした。


部屋の構成はバスルーム・トイレ・寝室・リビング・シアタールーム・読書部屋・勉強部屋・衣裳部屋となっていた。一つ一つ説明したい所だが、長くなるので要所のみ語ろうと思う。

まず、シアタールームは文字通り映画を見る為の部屋だ。個人宅、しかも子供の部屋にあるとかおかしくない?と思ったがまあ……、ギリギリ許容範囲だろう。次は読書部屋だ。これも文字通り読書する為の部屋なのだが、蔵書量が半端ない。漫画から小説、学術書に洋書まで幅広いラインアップだ。

「なあ、これ全部読んでんのか?」

「う~ん、七割くらいかな。全部読もうと思ったらあと二年はかかると思う」

「残り三割っていっても膨大な量だぞ。それを二年で読破するとか凄すぎだろ」

「まあ、速読術を使ってるからな。じゃないと流石に無理だ」

「なるへそ。ていうか、お前学術書とかも読むのな」

「まあな。将来何が役に立つか分からないから、色んな種類の書籍を読むようにしてんだ。親からは雑食と多読は違うって言われているけど」

「いや、見直したわ。お前って凄い奴だったんだな」

「今までどんな風に思っていたんだよ……」

そんな会話をしつつ、次の部屋へ向かう事になった。


お次は寝室です。キングサイズのベッドに机とクローゼット、ソファがあるシンプルなお部屋。さて、男の部屋に来たらやる事は一つしかない。そう!エロ本探し!

という訳で意気揚々と探し始めたわけですよ。定番のベッドの下から、机の引き出し、クローゼットの中等見て回ったんだが無かった。そう!()()()()()()()()()()()んだ。これは明らかにおかしい。男ならエロ本は必須アイテムだし、なんなら生活必需品と言っても過言ではない。だのに、こいつは持っていないだと……。

まさか……、いやそんな事はないだろう。一瞬嫌な想像が頭を過ったがすぐに追い払った。して、探しても無いとなると、本人に聞くのが手っ取り早いだろう。

「なあ、エロ本が一冊もないんだけどどういうこと?」

「さっきから、色々と調べてたのはそういうことだったのか。俺、女に興味ないんだよね。だからエロ本も持ってないよ」

俺の下半身を見ながらそうのたまった。その視線に思わず両手でケツを隠したのは言うまでもない。まさか……、嫌な想像が当たってしまうとは……。俺は今後こいつとどう接していけばいいんだろう?

「俺が興味無いのは三次元であって、二次元の女の子は大好きだからな。決して男が好きとかではないんだからね。勘違いしないでよね」

「なんでツンデレ口調なんだよ。男がやってもキモイわ!」

「ノリだよ、ノリ。細かい事は気にすんな。あと、二次元エロ関係はPCに保管してるから探しても見つからないぜ」

「デジタルの波がこんな所にまで波及していたとは……。最早紙媒体は滅びる運命なのだろうか……」

「紙媒体とか邪魔だし、経年劣化するし、捨てる時困るしで良いとこ無しだろ」

「はぁ~~~。分かってない、何にも分かってない。いいか?ページを捲る時のドキドキワクワクや紙が擦れる音、そして印刷時の僅かなインクの滲みなど紙には素晴らしい点が沢山あるんだぞ」

「なんと言われようと俺はデジタル派から鞍替えする事はないよ」

「くっ……。悔しいが意思は変わらないみたいだな」

「ふっ。あたぼーよ!」

「はぁ……。話は変わるが、ぶっちゃけお前の周りの女子とか女性って可愛い・美人な人ばっかだろ。案内してくれたメイドさんも美人だったし。学校の女子も滅茶苦茶レベル高いだろ。なのに三次元に興味ないのか?」

「無いね~。二次元は云わば男の理想なわけよ。現実では有り得ないスタイル、顔、性格等々。上げればキリが無いけどそう言った理想の存在がいるのに、わざわざ現実の女に興味を持つわけなくないか?」

「いや、そこは折り合いを付けるというか、あくまで二次元は二次元。現実は現実で区別するべきじゃないのか?」

「ふ~む。言っている事は確かに一理ある。だが理解は出来るが納得は出来ない」

「そうか。まあ、結局は人それぞれという事になるのかな」

「そうだな。この手の話は往々にしてトラブルになりやすいしここで終わろう」

「だな。っと悪いけどトイレ借りてもいいか?」

「おう。自由に使ってくれ」

急に尿意をもたらした為トイレに駆け込んだ。


…………ふぃ~。スッキリした~。

トイレから出てリビングの方に歩いていると、なにやら話し声が聞こえてきた。どうやら真司が誰かと喋っているらしい。そちらに向かって行くと、お人形さんみたいに可愛い子がいた。比喩とかではなく、本当にお人形さんみたいなんだ。色白の肌、スラリとした手足、色素の薄い髪の毛。そんな女の子だがメイド服を着ていない所を見ると、真司の妹さんだろうか?いや、お姉さんという可能性もあるか。

どちらにしても、聞いてみない事には始まらない。

「なあ、真司。こちらの方は妹さんか?」

「あ~…………。まあ、その~、なんだ……。そのようなものかな」

「そうなんだ。じゃあ自己紹介しないとね。えっと初めまして。俺は真司のクラスメイトで甲野悠といいます。よろしくね」

「初めまして。僕は山本優(やまもとゆう)といいます。いつも兄がお世話になっております」

「いえいえ。こちらこそ、お兄さんにはいつもお世話になっています」

「優。用事は済んだんだから、さっさと部屋に戻れ」

「分かりました。では甲野さん僕はこれで失礼します」

そう言ってペコリと可愛らしくお辞儀をした後去って行った。

「なあ、真司。あまり兄妹の関係に口を出したくはないけど、さっきの言い方はないんじゃないか?」

「悪いな……。どうしてもあいつの事になると冷たい言い方になってしまうんだ」

「深くは聞かないけど、優ちゃん可愛らしい子だしもう少し優しくできないか?」

「あぁ。気を付けるよ」

「しっかし、お前にあんな可愛い妹がいたなんて驚きだよ」

少し重くなった空気を変える為話題を変えてみた。

「まあ……な。隠していたわけではないんだ。ただちょっと訳ありでな」

「そうか。俺に出来る事があれば何でも言ってくれよ。力になるから」

「おう。ありがとな。じゃあ、一つだけ質問させてくれ」

「なんでも答えてやるぜ」

ある意味で期待を裏切る予想外の展開になるとは思わず、この時はどうせ下らない事を聞かれるんだろうなと考えていた。

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